【日薬連】予測困難な感染症薬にインセンティブの政策求める/薬剤耐性問題から抗菌薬の現状にも危機感

【日薬連】予測困難な感染症薬にインセンティブの政策求める/薬剤耐性問題から抗菌薬の現状にも危機感

【2023.02.08配信】厚労省は2月8日、中央社会保険医療協議会 薬価専門部会を開催した。感染症動向に影響を受け年間1500億円以上の市場になる可能性のあるゾコーバ錠の薬価算定の在り方に関してが主たるテーマだったが、意見陳述の中で日本製薬団体連合会(日薬連)は感染症治療薬に対して必要な対応も含めた意見を示した。抗菌薬に関しても政策を求めた。


 日薬連は、「高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応」に係る意見を示した。

 感染症対策は国家の安全保障に密接に関わる重要課題であるとして、研究開発の継続、安定的な生産・供給を可能とするインセンティブの政策を求めた。有事と平時を、柔軟に切り替えて対応できる法整備、代替評価指標の整備も必要だとした。
  
 警戒すべき感染症はコロナだけではないとして、3大感染症(HIV/エイズ、マラリア、結核)や「顧みられない熱帯病」、「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)」などを列挙。

 中でも薬剤耐性については、「サイレントパンデミックとも呼ばれ、今後、有効な対策がとられなかった場合、2050年までに年間1000万人以上が死亡、経済的インパクトは100兆ドルにおよぶと報告されている。地球規模で取り組むべき課題として、今年のG7、広島サミットでも重要アジェンダの1つになるものと思われる」と問題意識を表明した。
 抗生物質の市場については、医療用医薬品生産額における構成比が下落しているとのデータを提示。1980年代前半に25%以上であった構成比は、現在は5%以下に低下しているとした。

 感染症治療薬によるビジネス成立の困難さについては、社会からのニーズが大きく、膨大な研究開発費が求められる一方、生産設備の維持費などにかかる投資を回収できず、研究開発を促進できない問題があるとして、事業の継続性が難しいと訴えた。実際に、抗菌薬市場から相次ぐ撤退や抗菌薬を扱うベンチャー企業の破産・買収などがおきているとした。

 感染症治療薬の課題として、本来的にはワクチンを含めた国の感染症対策の中で検討されるべきと提言した。

 日薬連として、将来のパンデミックに備えた提言書もまとめていることを紹介。
 「内閣感染症危機管理統括庁」等の国の感染症対策の司令塔の下、一貫性のある政策遂行や感染症治療薬・ワクチン開発への支援方針、医薬品・原材料調達の国際連携等を推進すべきとしている。

 

 こうした業界のプレゼンに対しては、支払側委員からは「中医協の議論を越えている」との意見が出た。
 
 健康保険組合連合会理事の松本真人氏は「今回、特定の医薬品を対象としているとこともあって各団体としては一般論になるはやむを得ないと受け止めた。日薬連の今後のパンデミック対策についてご提言は、中医協の範囲を少し越えている部分も多いかなと思っている」と述べた。

 そのほか、抗菌薬の市場構成比が下がっているのは、疾病構造の変化なども要因ではないかとの指摘が出た。

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