【東京都薬剤師会】2回目となる薬学生向けイベント開催/「楽しかった」薬学生の笑顔キラリ

【東京都薬剤師会】2回目となる薬学生向けイベント開催/「楽しかった」薬学生の笑顔キラリ

【2022.11.04配信】東京都薬剤師会は10月29日(土)に、薬学生向けイベント「薬剤師のリアルを聴いてみよう!」を開催した。都内在住、もしくは都内薬学部に通う薬学生を対象にしたもので、当日は約30人の薬学生が集まった。7月2日の開催に続き、2回目となる開催となったが、より薬学生同士の会話を重視した構成となっていた。参加した薬学生からは「自分以外の意見が聞けてとても参考になった」と高い評価の声が聞かれた。「楽しかった」と感想を話す薬学生の笑顔からは、「薬学生のコミュニティづくりに貢献する」との1つの都薬の所期の目標が達成されたことをうかがわせた。


 東京都薬剤師会(都薬)は薬学生向けイベントを開催する意図として、大きく2つの柱があるとの考えを示していた。
 1つは地域の薬局を知ってもらうことだ。都薬会長の永田泰造氏は、地域医療に貢献している薬局に就職したいとの薬学生の関心が高まっている一方で、情報伝達の場が限られていることに課題があるとの考えを示していた。また、小規模の地域の薬局の就職に向けては、大規模薬局への就職に比較して「同期の友人ができない」との声があることも触れていた。
 こうしたことを踏まえ、まずは薬学生同士のコミュニティづくりに都薬も貢献していくことに意味があるとの考えから薬学生向けイベント実施に踏み切ったもの。

 こうしたコミュニティづくりを通して、自然と都薬の活動、薬剤師会とは何かについて知ってもらうことにつながり、その中で将来、薬剤師会を支える人材が育ってほしいとの思いもある。これが2つ目の目的である。

 7月2日の第1回開催も好評を博し、今回、2回目の実施に至ったもの。

 2回目となった今回は、前回に比べて、より薬学生同士の会話を重視したものとなっていた。

 前半は「ワールドカフェ」という手法を取り入れ、薬学生同士の会話となった。
 ワールドカフェは参加者全員が話すことを重視している手法で、5人ずつ、6テーブル設けられた会場では、時間を区切って、テーブルを移動する形で、集まった薬学生同士が参加者すべてと会話できるような機会を設ける形となった。

 後半は都薬の若手人材も含めた会員委員会などの薬剤師が入り、コミュニケーションを図った。

 それぞれのテーブルに1人は固定的な薬学生がおり、最後に報告会を行った。

 報告会では、今後、自分たちが目指すことについて、「薬局をつくりたい」「薬剤師を輝かせる仕事に就きたい」などの声があったことなどが紹介された。

 課題として、「処方箋がないと薬局に入りづらい」ことが挙げられた班もあり、調剤だけでなく、OTC薬のほか、アロマなど、薬剤師が選んだ商品を薬局に置くことなどにも注力していきたいという声も聴かれた。
 また、リフィルの処方箋によって薬局薬剤師の仕事が変化していくのではないかとの声も聞かれた。

 そのほか、“アマゾン薬局”の報道や「お薬手帳のアプリ」など、最近の話題について話し合われた班もあった。
 
 中には「かかりつけ薬剤師は実際に機能しているのか」と都薬メンバーに質問する薬学生もいた。
 都薬メンバーは、現場の課題を伝えつつ、「かかりつけは患者さんから、“あなたになってほしい”と依頼されるのが本来の姿ではないかと思っている。そのためには何が必要なのか考える必要があるのではないか」と率直な意見が交わされていた。

 報道の面からは後発医薬品の供給問題を見聞きする学生も多かったようで、「薬剤師として何ができるのか」との質問が出ていた。都薬メンバーからは、「ほかの薬局と協力すること」 「医師との連携が必要なこと」などが指摘されていた。一方、実習に行っている薬局で近隣の処方医と代替薬について相談する場に参画できた薬学生がいたほか、ピッキングや座学のようなことに終始していたとの薬学生の声があり、実習に行く薬局の実情の差が、薬学生に与える影響についても問題提起されていた。

 マイナンバーの保険証利用や電子処方箋など、医療DXによって「今後、薬剤師がどういう役割を果たしていけるのか」との投げかけもあった。

 一方、現実的な面では“就活”に関する情報交換も薬学生間で行われたようで、これも好評だった。

 閉会にあたっては都薬副会長の髙橋正夫氏が挨拶。
 自身が東日本大震災の支援に行った際に、津波でインフラが失われた場で改めて「薬の供給をどうするのかの時に、本当に薬剤師が必要なんだと実感した」との経験を紹介していた。
 その上で、薬剤師は国家資格であり、法律で「薬剤師は何をしなさい」と決められるものである一方、薬剤師が何をすべきかは現場から提案することが重要であるとの考えを表明。
 法律で現場が考えている薬剤師像が全否定される可能性さえあることに触れ、「本来はそうではなくて、若い薬剤師の方も含めて、本来はこうあるべきだと国に言い続けていかないといけない」と語っていた。そのために政治の力も必要であるとし、「自分たちの将来のために頑張ってほしい」と薬学生にメッセージを送っていた。

編集部コメント

 多くの薬局を取り巻く報道を見聞きしている薬学生。しかし、本当に現場で働いている薬剤師がそれらの報道をどのように感じ、これからどのような働きかけが必要だと考えているのか、薬学生が知る機会は必ずしも多くはないのではないか。そういう意味では都薬が踏み出した薬学生イベントは、極めて意味のあるものだと感じる。

 編集部では開催後に参加した薬学生に当日の感想を聞いて回ったが、「自分以外の意見が聞けてとても良かった」「楽しかった」など、高い評価の声が聞かれた。
 印象的なのは薬学生の満足した笑顔。主催した都薬委員会メンバーには若手が多いこともあり、会場はかしこまった雰囲気ではなく、笑い声の響く終始、和やかな雰囲気だった。
 「薬学生のコミュニティづくりにも貢献する」。薬学生のこの笑顔からは都薬の所期の目的が達成されたことがうかがえた。そして、それを契機に薬剤師会や社会に出てからの薬剤師職能について考えるきっかけになったのではないだろうか。

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