「個々の薬局」ではなく「地域」で集積評価を
太田氏は薬剤師は患者や他職種から情報を収集し、分析し患者や他職種にフィードバックしている役割を挙げた上で、「薬剤師の知見集積が新たな医薬品情報を生み出すこともある。今後はこの部分でも尽力をいただけけると有り難いと思っている」と話した。
特に「フォローアップは新たな知見の宝庫」との考えを示した。
例えば緊急承認制度では安全性は担保されているが有効性は推定の状態で市場に医薬品が出てくるため、市販後の調査が重要になるとした。さらにコロナ経口薬である「ラゲブリオ」や「パキロビッド」の服薬後の事象、コロナ自宅療養患者の経緯などの情報について、「薬剤師が持っているのではないか」とし、「わが国で本当に必要な情報になり得ると思っている」と話した。
こういった情報を「個々の薬局」ではなく「地域」で集積評価することによってより効果的な薬物療法に貢献できるのではないかとした。
編集部コメント/医療DXで薬剤師からの情報インプットのシステム化を期待
太田氏が指摘したように、医療DXの恩恵を享受する対象として常に語られるものには、「患者・国民」「保険者」「医療現場」のほかに「研究者・産業界」がある。データを研究開発につなげる分野はわが国は遅れているとも言われ、今後期待が大きい領域といえる。
薬剤師による育薬への協力については、現状でも市販後の安全性データの集積のためにMRが薬局に訪問することもあるし、病院でも薬剤部への訪問がある。ただ一般的に、新薬は病院から浸透するため、市販直後調査などはどうしても病院の医師や薬剤部からの情報収集が主体となりがちだ。その一方で、抗がん剤治療においても外来医療が主流となってきている中、MRが薬局を回るケースも増えてきていると考えられる。
それに加えて、薬を手交した後のフォロー業務が薬局薬剤師で確立されていけば、その結果を医師に伝えたり、企業に伝えたり、あるいはPMDAに報告するという形式で薬剤師の育薬への役割は高まっていくことが期待される。電子処方箋開始では、医師へのフィードバックも増えることが予想される。
国の進める医療DXで、薬剤師や薬歴の持っている情報が育薬に貢献できるような情報としてインプットできるシステム化も期待したい。ただそれに先んじては、薬局薬剤師の育薬貢献への意識向上も必要だろう。