報告書案の中で「ワクチン接種や検体採取の担い手の確保等のための方策」を以下のように記載した。
3. ワクチン接種や検体採取の担い手の確保等のための方策について
○ 感染症発生・まん延時には、ワクチン接種、検体採取のみならず、救急搬送、診療・リハビリテーションの提供等について、それぞれの職種が本来の業務を担うことが重要である。また、ワクチン接種全体を円滑に進める上では、ワクチン接種のための注射のみならず、予診、薬液の充填、副反応への対応などの接種事業全体の人材確保を進め、その上で、各医療関係職種がその専門性を十分に発揮することが重要である。
○ 検体採取については、発生当初と異なり、唾液等による自己採取による検査が可能となったことや、医師や看護師等だけでなく、臨床検査技師も業として実施できることから、新型コロナウイルス感染症対応においては、歯科医師による実施は限定的であった。
○ 今後の感染症発生・まん延時において、医師や看護師等が感染者の診療等を提供するために、ワクチン接種、検体採取について、十分に担い手を確保することが困難となった場合において、医師との連携のもと、これらの業務を担う者を確保するための取組を進めることが重要である。
○ 各医療関係職種へのヒアリング結果も踏まえ、①医師や看護師等以外の者が感染症発生時等におけるワクチン接種等を行うことの是非、②どのようなプロセスを経れば、医師や看護師等以外の者がこれらの業務の担い手となり得るかについて、以下のとおり整理する。
○ 医師や看護師等以外の者が感染症発生時等におけるワクチン接種等を行うことの是非については、医療安全の観点を踏まえると、これらの行為に関して、基本的な教育を受けており、かつ、実際にこの業務を行う上での技術的基盤を有していることが重要である。具体的には、ワクチン接種のための注射については、人体への注射・採血を行っていることが重要であるとともに、検体採取のための鼻腔・咽頭拭い液の採取については、口腔と連続する領域である鼻腔や咽頭周囲の治療に関わっている職種とすることが望ましい。このため、これらの行為に関する知識・技能を有している以下の者を感染症発生時等におけるワクチン接種等の担い手の対象とすることが適当である。
・ワクチン接種のための注射
【歯科医師】その養成課程において、注射に関する基本的な教育を受けており、また、口腔外科や歯科麻酔の領域では実際に注射を行っている。
【臨床検査技師】その養成課程において、静脈からの採血に関する基本的な教育を受けており、また、実際に当該業務を行っている。
【救急救命士】その養成課程において、救急救命処置として、乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保と輸液、エピネフリン等の薬剤の投与等に関する基本的な教育
を受けており、また、実際に当該業務を行っている。
【診療放射線技師】その養成課程において、人体に対する照射又は画像診断装置を用いた検査のための静脈路確保、造影剤等の投与や抜針・止血等に関する基本
的な教育を受けており、また、実際に当該業務を行っている(※)。
【臨床工学技士】その養成課程において、生命維持管理装置を用いて行う治療のための静脈路確保、薬剤の投与や抜針・止血等に関する基本的な教育を受けてお
り、また、実際に当該業務を行っている(※)。
※ 診療放射線技師と臨床工学技士については、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(令和3年法律第 49 号)附則第 13 条及び第15 条に規定する研修を行った場合又は、診療放射線技師については令和6年4月1日、臨床工学技士ついては令和7年4月1日後に免許を受けた者(同日前に国家試験に合格した者を除く。)を想定。
・PCR検査等のための鼻腔・咽頭拭い液の採取
【歯科医師】その養成課程において、感染症対策や口腔領域の構造、検体検査についての教育を受けており、また、口腔領域に加え、口腔と連続する領域である
鼻腔や咽頭周囲の治療を行っている。
○ また、どのようなプロセスを経れば、歯科医師、臨床検査技師、救急救命士、診療放射線技師及び臨床工学技士(以下「歯科医師等」という。)が感染症発生時等におけるワクチン接種等の担い手となり得るかについては、有事の際の特例的な対応であることを踏まえると、以下のとおりとすることが適当である。
・ まずは、感染症発生時等におけるワクチン接種等を行うことができる医師や看護師等が対応を行い、その上でもなお、これらの業務の担い手の確保が困難と見込まれる場合に、歯科医師等が対応すること。
・ 歯科医師等については、一定の研修を受けた上で、感染症発生時等におけるワクチン接種等を行うこと。
4. 今後の課題について
○ まずは、上記3の対応が求められる一方で、今後、新型コロナウイルス感染症よりも感染力が高い感染症等が発生し、他業務への対応との兼ね合いでワクチン接種等を行うことができない状況も想定され、その状況に応じた対応が求められることが考えられる。
○ このため、今般、感染症発生時等におけるワクチン接種等の担い手の確保のための枠組みを創設したことの効果等の評価を行った上で、感染症を取り巻く様々な状況も考慮しつつ、今般の対象とならなかった薬剤師等も含めて、こうした状況が生じた場合の対応を考えていくことが重要である。

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