【2020.06.22配信】
鶴羽順新社長「セルフメディケーションの浸透背景にドラッグストアへの期待高まる」
ツルハホールディングスは6月22日、2020年5月期決算を公表し、6月2日付けで代表取締役社長に就任した鶴羽順氏が所信表明を行った。鶴羽順社長は、取り巻く環境は厳しいとしながらも、少子高齢化が進むわが国において、セルフメディケーションの浸透を背景に、「安心できる、相談できる身近なドラッグストアへの期待はより一層高まる」との見方を示した。
JR九州ドラッグイレブンのグループ入りで出店エリアは40都道府県に
また、JR九州ドラッグイレブンがグループ入りすることにより、同社グループの出店エリアは40都道府県に拡大。グループのスケールメリットを生かした共同仕入れや出店コスト低減など統合シナジーの最大化を図っていく方針。
今期以降の計画については、精肉・青果の取り扱い拡大を表明。委託販売による展開であるため店舗オペレーションに負担がかからないスキームとし、来店頻度の向上に加え、コロナの影響で増加する顧客のワンストップショッピングへのニーズに応えるとする。
さらに、PB開発を強化。「くらしリズム」および「エムズワン」のPB合算売上は今期、前期比107%の400億円を計画する。
なお、2021年5月期は売上高前期比102.3%の8600億円を計画。インバウンド需要ゼロの前提という。
中期経営計画に変更はなく、2024年5月期に店舗数3000店舗、売上高1兆円を目標とする。
終わった2020年5月期の業績に関しては、昨年10月の消費増税前の駆け込み需要と新型コロナウイルスの影響が如実に表れた。例えば、地域別ではインバウンドの影響が大きい大阪エリアの売上の伸びが小さく、事業会社別では精肉・青果を積極導入の ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本(TGN)の伸び大きかった。総合すると、プラス要因がマイナス要因を上回り、増収増益となった。
コロナの影響では、現在も96店舗で営業時間を短縮している。同社グループ3店舗で罹患者が出たが、現在は全員回復しているという。
以下、それぞれ詳細について説明する。
コロナと消費増税前の駆け込み需要の影響くっきり
同社の2020年5月期において、前期は台風19号・21号等による自然災害、また昨年10月1日の消費増税、そして年初から始まった新型コロナウイルスの世界的感染拡大と、外部環境が大きく変化した期だった。
特に新型コロナウイルスについては業績に影響を与える重要な要因となった。
まず、販売面では、マスク・消毒剤等、予防関連商材に加えて、巣ごもり需要によるプラスに加え、食品・日用雑貨についても売上を押し上げる要因となった。
一方、マイナス面では、訪日外国人の減少により大幅にインバウンド商材の販売が減ったため、特に影響の大きい9店舗については閉店。7店舗は一時休業をしている。
また、これ以外の店舗でも96店舗で営業短縮を行っている。
販売面で見ると、結果として、プラス要因がマイナス要因を上回った格好だ。
新店に関しては、影響は軽微で予定通り出店を進めた。
従業員の感染については、グループ3店舗で罹患者が出たが、現在は全員回復している。
また、非常に厳しい環境下、顧客の対応に当たった従業員の労に報いるため、特別感謝金約30億円を支給した。
通期の業績数値に関しては、売上高8410億3600万円、計画比102.6%前期比107.5%、営業利益450億1300万円、計画比103%、前年比107.6%だった。
売上高・粗利高に関しては、通常の施策に加えて、増税前の駆け込み需要が想定を上回ったこと、またコロナの影響による関連商材の売り上げの伸長等により計画を達成した。
販管費に関しては、計画比で103.1%となっているが、従業員への特別感謝金30億円を除くと、ほぼ計画通りに着地した。
その結果、前年対比で増収増益を維持、堅調な決算結果となった。
既存店売上の前年対比においては、通期では計画値プラス0.8%に対して、プラス4.2%で着地。昨年10月の伸び、また今年に入り2月・3月の伸びが非常に大きな数値となっている。
地域・事業会社別でみると、売上高前年対比では、地域別ではインバウンドの売上減少の影響が大きかった大阪エリアでの伸びが小さかった。事業会社別では精肉・青果を積極導入した ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本(TGN)の伸びが大きかったことがあげられる。
客数・客単価買上点数に関しては、増税前駆け込み需要とコロナ関連商材の影響が数値に表れている。商品群別の実績では、医薬品については調剤はコロナのマイナス影響があったものの、売上粗利額とも計画値を達成。一方、OTC医薬品については花粉症と季節商品の 売上が計画値に達せず、前年比で微増にとどまった。また化粧品については、インバウンド需要の減少、コロナの影響で前年割れの結果となった。日用雑貨・食品は巣ごもり需要、マスク等コロナ感染防止商材が大きく伸びた。
調剤の実績に関しては、昨年10月の薬価改定、今年4月の診療報酬改定、また足元ではコロナの影響等があったが、57薬局を開局、調剤報酬額については前期比11.6%増となった。調剤事業では調剤ロボットの導入、在庫自動転送システムの導入等による効率化、スマホによる処方箋応需サービス等、患者様の利便性向上を実施している。
特に注力してきたプライベートブランド商品の販売実績に関しては、2019年5月期にリニューアルした新プライベートブランド「くらしリズム」で、当初の予定だった期末500 SKUを達成し、503SKUとなった。PBトータルでは売上高が前期比8.4%の伸び、粗利率も前年対比で1.1ポイント増の46.4%となった。
出店状況に関しては、子会社化した2店舗を含む131店舗の実績となった。閉店については不採算店舗のスクラップ&ビルドによる閉店等により計画の51店舗を12店舗上回り、63店舗。この結果、期末店舗数は計画値の2160店舗に対して2150店舗の着地となった。
2021年5月期は売上高前期比102.3%の8600億円計画、インバウンド需要ゼロの前提
2021年5月期の計画については、売上高は前期比102.3%の8600億円、営業利益は前期比100.4%の452億円、期末店舗数は2233店舗の計画。
前期2020年5月期は新型コロナ関連事業で大きな数字の上乗せもあったが、2021年5月期の計画については新型コロナ関連の需要増は織り込まず、インバウンドの売り上げはゼロという前提で計画作成。
出店計画では、130店舗の開店、47店舗の閉店、純増は83店舗。
閉店の内訳は、インバウンド店舗が9店舗の閉店、スクラップアンドビルドが19店など。
これにより2021年5月期の期末店舗数は2233店舗となる。なお、ここにはドラッグイレブンの206店舗は含んでいない。
主に実施すべき計画項目は、①JR九州ドラッグイレブンの子会社化の価値最大化、②プライベートブランドの「くらしリズム」推進強化、③スマートフォンアプリの活用・デジタル推進、④システム導入による人員配置の適正化、⑤精肉・青果の委託販売取り扱い拡大ーーの5つとする。
①においては、ドラッグイレブンがグループ入りすることにより、同社グループの出店エリアは40都道府県に拡大。今後はグループのスケールメリットを生かした共同仕入れや出店コスト低減など統合シナジーの最大化を図っていく方針。
②のプライベートブランド戦略では、グループ共通のプライベートブランド商品「くらしリズム」について前期2020年5月期末で503SKUだったものを、今期は200SKU増を計画。5月末には700SKUとなる見込み。「くらしリズム」および「エムズワン」のPB合算売上は前期比107%の400億円を計画する。ヘルスケア&ビューティーケアのカテゴリーで差別化につながる付加価値商品を開発していきたいとしている。
③のデジタル推進については、スマートフォンアプリのダウンロードを促進する。足下のアプリダウンロード数は80万と多くはないが、今後、7月から始める花王マイレージクラブを筆頭に、数々のアプリダウンロード促進策を行っていく。また、データマネジメントプラットフォーム( DMP) を構築する。同社が主体となりながら、各メーカーから販促協力を得て、顧客一人一人の生活スタイルに合わせた最適な商品を提案する。
④に関しては、ツルハ単体でシフト作成支援システムを導入しているが、コロナによるイレギュラーな営業時間やシフト編成もあり、現状は効果検証が難しいという。基本的に、適正な人員配置により人件費をコントロールしていくのが目的であり、今後は残業等の削減などに効果を出していきたい考え。
⑤の精肉・青果の導入では、2020年5月末に360店舗だったが、21年5月期中に270店舗の追加を予定。委託販売による展開であるため、店舗オペレーションに負担がかからないスキームだという。目的については、来店頻度の向上に加え、コロナの影響で増加する顧客のワンストップショッピングへのニーズに応えるためとする。
中計は2024年5月期に店舗数3000店舗、売上高1兆円が目標
中期経営計画に関しては、すでに発表している通り、2024年5月期に店舗数3000店舗、売上高1兆円が目標。基本戦略は4つ。①専門性利便性の追求、②ドミナントエリア戦略の基づく店舗展開、③商品の展開拡大・商品力向上、④グループの組織力・収益力の拡大ーーだ。
①専門性利便性の追求については、カウンセリング販売が同社グループの大きな強みとして、教育体制をより充実させ、専門知識・接客技術の向上を図る。さらに、管理栄養士の活動を推進し、ヘルスケア分野における役割の幅を広げていきたいとする。
②の出店に関しては、引き続きドミナントエリア戦略に基づく地域集中出店を行う。自力出店を行いながら「縁があれば」、 M & A による出店地域の拡大も図る。
③のPBに関しては、「わざわざ買いに来ていただける商品」を目指す一方、大手NB商品では専売品など他社と差別化できる商品の育成を行っていく。
④のグループシナジーに関しては、事業会社各社の地域のブランドパワーを活かしつつ、スケールメリットを活かした商品調達やシステム構築などコスト面でも統合効果を創出していく。商品の開発以外でも、メーカーと協力して購買データを共有し、売り場単位でカテゴリー単位の強化を図るジョイントビジネスプランの取り組みなども、広い意味ではスケールメリットの一つとする。
鶴羽順社長の所信表明全文
「社長の鶴羽でございます。
はじめに、新型コロナウイルス感染症に罹患された皆様、影響を受けられている皆様に心よりお見舞い申し上げます。
6月2日付でツルハホールディングス代表取締役社長に就任させていただきましたので、一言ご挨拶申し上げます。
当社は、お客様の生活に豊かさと余裕を提供するという経営理念に基づき、地域の皆様に信頼される魅力のある店作りに努めて成長して参りました。
我々を取り巻く経営環境におきましては、厳しい状態が続くものと思われます。
しかし、今後もお客様は健康や美容などの関心が高まり、少子高齢化が進む現在ではセルフメディケーションの浸透を背景としまして、安心できる、相談できる身近なドラッグストアへの期待はより一層高まるものと思っております。
当社グループも2024年5月期に3000店舗・売上高1兆円の中期計画に向けて、地域の皆様に健康で豊かな生活をご提供できるよう目指してまいります。
今後も従業員やお客様、お取引先様、株主様、そして地域社会などのステークホルダーにとって最良の企業になるべく、地域を支え、地域と共に成長してまいります。
今後もどうぞよろしくお願いいたします 。」