【新設の電子的保健医療情報活用加算を考える】オンライン資格確認の実際/積極展開の日本調剤の事例

【新設の電子的保健医療情報活用加算を考える】オンライン資格確認の実際/積極展開の日本調剤の事例

【2022.04.08配信】今春の調剤報酬改定ではオンライン資格確認により、患者に係る薬剤情報等を取得した上で調剤を行った患者に対して「電子的保健医療情報活用加算」3点が算定できるようになる。オンライン資格確認の活用事例がまだ少数とみられる中で、これまで積極的に展開してきた日本調剤の事例から今後を展望したい。


保険証としてのマイナンバーカード利用は少数/従前の健康保険証でのオン資活用は全件実施/件数・金額ともに返戻が減少

◆日本調剤 薬剤本部 薬剤企画部 課長 山田博樹氏、薬剤本部 薬剤管理部保険課 係長 幸原文男氏が回答

 ――貴社のこれまでのお取り組みを改めてお聞きできますか。
 幸原 オンライン資格確認については、当初の2021年3月スタート予定から10月に後ろ倒しされたことはご承知の通りですが、当社はもともと3月に全店スタートさせられるように進めていました。そのために2020年の夏には機器の申し込みを600店舗以上で済ませ同時並行で設置工事を進めていました。2021年の10月の本格運用開始時では、当社の2021年3月開局時点の全店舗である663の店舗で運用ができている状態です。
 現在ですが、なかなかマイナンバーカードを持ってこられる患者様は少ないのが実情です。マイナンバーカード交付率自体は現在40%ですが、その中で13%程度の人しか健康保険証利用登録をしていないという現状であり、さらにマイナンバーカードを実際に保険証として利用する人はそれよりも少ないのかと思います。

 ――貴社で実際に利用は1件でもあったのでしょうか。
 幸原 複数店舗で利用実績が見て取れる状況です。一方で、健康保険証での資格確認は多くの処方箋受け付けにおいて行っています。当然、それによって返戻を未然に防ぐことができているのはメリットの一つです。実際10月から本格運用が始まり、12月分について2カ月後の返戻の状況をみると、返戻自体は件数・金額ともに減少しています。この効果は長期でみる必要もありますが、こうした効果が確認できています。受け付けた処方箋については、すべてオンライン資格確認を活用しています。

 ――仕組みへの理解が十分ではないのですが、貴社が行っている従来の保険証でのオンライン資格確認というのは、新規の、いわゆるカードリーダーなどの設置がないとできないものなのですか。それとも、それだけはWEB上でできたりするのでしょうか。
 幸原 オンライン資格確認環境を構築するには、顔認証カードリーダーも必ずセットで必要になります。ですので、オンライン資格確認を実施したければ顔リーダーも導入することになります。

継続利用を促す必要/24時間で同意は消える

 ――マイナンバーカードの保険証登録については、カードリーダーを設置している薬局で作業が可能なので、先ほどおっしゃった保有率40%と保険証としての利用率13%の乖離を埋めることも薬局でできますね。
 幸原 2021年1月ごろには当社の店舗で保険証登録が可能です、というリリースを発信させていただいています。リリース当時はまだカードリーダーが登場もしていなかったので、専用の端末を設置して対応していました。現在はカードリーダーから利用登録作業が可能です。

 ――保険証の利用登録の啓発は店頭ではどのようにしていますか。
 幸原 患者様すべてにはお声掛けはできないのですが、店舗内で厚労省提供の動画を流しています。また、健康保険証利用登録キャンペーンの時にはパンフレットを患者様に手渡しする対応をしていました。本格運用開始後、パンフレットは店頭に掲示しております。現在もマイナポイントキャンペーンと連動する形での啓発活動強化を社内で検討しています。

 ――マイナンバーカードの継続利用についてはいかがですか。
 幸原 現在は継続してやられている方もいますし、当然、薬局の方でも案内します。継続して利用いただかないと同意取得後24時間を超えると情報確認出来なくなるので。

 ――24時間で同意は消えてしまうんですね。
 幸原 薬剤状況と特定健診情報は同意取得から24時間が情報取得の有効期間ですので毎回来局時にご利用が必要です。

システムで視覚的にもオン資利用患者を表示/健診情報等の確認を店頭で促す

 ――まだ活用事例は少数ということでお聞きしづらいのですが、オンライン資格確認を使って服薬指導上のメリットなどについて、何かありますか。
 山田 薬局での薬剤情報の確認が12月の1カ月間で1000件程度にとどまっているというデータが出ています。日本全国で1000件程度なので、当社としての実施数もご想像いただけるかと思います。さきほどお伝えした「オンライン資格確認はリーダーがないとできない」というのは、マイナンバーカードでのオンライン資格確認という意味で、従来の保険証でも資格確認自体はできます。より一層、マイナンバーカードの保険証利用で意味を持つのが、薬剤情報や特定健診情報の確認ができることです。これはマイナンバーカードでなければできません。それを確認することによって、相互作用や重複服用を防止できる点が大きいわけです。今後は、もっと閲覧できる関連情報は増えていってほしいと思います。

 ――比較的御社は業務フローを社内統一しているイメージがあります。マイナンバーカードで受付した方に対して、薬剤情報を必ず見るようにというフローなのか、それとも店頭の薬剤師の判断で必要に応じて確認するようになのか、どういったフローを現場に求めていますか。
 山田 すべての方で確認はするようにしています。システム上でも視覚的に「この人はマイナンバーカードで受付しました。同意をされています」と分かるようにしています。薬剤情報や特定健診の情報の閲覧を業務フローに内包する整備に努めていく方針です。基本的には、薬剤情報等については必ずしなければいけないものと思っています。薬剤情報というのは、今回処方箋の情報だけで判断するのではなく、患者様から今飲んでいる薬や健康状態をヒアリングした上で、処方内容が適切かどうかを判断することが薬剤師の務めです。その中で薬剤情報や特定健診の情報はシステム的に間違いがなければ必ず正確な情報を閲覧できます。その正確な情報を基に患者様に確認したうえで指導するところが必ず必要です。口頭やおくすり手帳で確認していた情報がオンライン資格確認を通じて薬剤情報として正しい情報か比較的に目で見えるといった点があるので基本的には必ず確認します。

 ――逆にオンライン資格確認によって、これまでアラートがでやすかったものが出にくくなるなどの弊害というのは想定されるものはありますか。
 山田 おっしゃるように、通常であればアラートが出しにくくなると思います。調剤システム上に自分の薬局で調剤した薬剤はもちろん情報入力されていますが、オンライン資格確認で入手した薬剤情報は手入力しないと併用薬として認知できないことがあると思います。ただ、弊社が利用している調剤システムは自社開発なので、調剤システム上でオンライン資格確認から取得できた薬剤情報についても閲覧可能、なおかつ併用薬として調剤システム側が認知するようにしています。その結果、併用禁忌や重複といったところのチェックも自動で行う状況になっています。

健診情報はPHRとともにシステムでストック

 ――健診の情報ですが、一般的なデータですと状態が改善していっているのか、薬剤と関連づけてどこの数値をみるかというのはかなり専門的な知識の部分になるかと思います。今後システムや業務フロー上で統一的な判断の基準策定などに取り組もうということはありますか。
 山田 特定健診の情報につきましても、同様に調剤システムに取り込んでおります。取り込む場所としては、以前から弊社の調剤システムには検査値を登録する場所がありました。特定健診についても同様の検査を行っているところもありますし、普段の検査と違うものやアンケートベースの質問であったり、そういった情報も特定健診の情報の場所にストックできます。参考情報という位置づけとなりますが、病院にかかって薬局側に提示して頂いた検査値を入力する場所に同様に特定健診の情報も自動的に入るようにしています。時系列にそって改善しているのか、この数値はどう変化しているかなど、特定健診と比較することで1年前と比べてこれくらいの数値がこうなってますねとか。そういったところで活用できます。

【編集部より】有料版「ドラビズ for Pharmacy」で詳報
■「ドラビズ for Pharmacy」概要
https://www.dgs-on-line.com/boards/5

取材はオンラインで行われた。右:日本調剤 薬剤本部 薬剤企画部 課長 山田博樹氏、左:薬剤本部 薬剤管理部保険課 係長 幸原文男氏が回答(取材は2月末に実施)

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