経済財政諮問会議に民間有識者議員が提出した資料「今後の経済情勢を見据えたマクロ経済運営について」は以下の通り。
■今後の経済情勢を見据えたマクロ経済運営について
2022 年 3 月 23 日
十倉 雅和
中空 麻奈
新浪 剛史
柳川 範之
ウクライナ・ロシア情勢等の地政学的な情勢変化は、世界のマクロ経済指標に大きな変動をもたらす可能性がある。また、エネルギーをはじめとする輸入原材料価格の上昇は、日本経済に大きなインパクトを与える可能性がある等、マクロ経済環境に関する潜在的な変動要因が増えてきている。
このような中では、リスクが顕在化した場合に迅速かつ適切なマクロ経済運営が求められるとともに、日本経済をしっかりとした成長軌道に乗せることにより、変動要因に対してより頑健性のある経済にしていく必要がある。
1.マクロショックに対する適切な対処
本来、価格の変化は需給環境の変化を表すシグナルであり、それに対する政策介入は需要側あるいは供給側の行動変容を阻害する恐れがある。ただし、大きなマクロ経済ショックが生じた場合には、更なる悪循環を生じさせないように、日本銀行とも適切な連携を行い、マクロ経済環境の安定化に資する政策を実行していく必要がある。
しかし、より本質的には、総供給力を高め、より高い成長を実現し、ショックに対して頑健性がある経済をつくることが不可欠である。
2.マクロ経済運営の基本的考え方
そのためにも、今後のマクロ経済運営においては、総需要コントロールだけでなく経済のキャパシティ(総供給力)を高める政策を重視すべきである。
3.で掲げた可処分所得と国内投資の拡大を同時に追求することにより、脱炭素や健康寿命延伸など我が国の社会課題を解決し、新たなフロンティアを開拓すること。また、それに合った柔軟な労働移動や更なる正規化の推進を目指すことが必要である。官はビジョンを示し、重点的で効果的な財政政策を行いながら、官民連携して我が国の物的・人的投資を拡大し、新しい成長モデルを創造していくべきである。
3.可処分所得と国内投資の拡大
(1)可処分所得の持続的な拡大
・兼業・副業を含む労働移動の促進による賃金・所得の拡大
・柔軟な働き方による賃金体系の見直し、人的資本の強化による恒常所得の拡大
・不本意な非正規労働者の正規化支援
・全世代型社会保障による分配構造の見直し、社会保障給付の効率化と負担の増加抑制
・健康寿命延伸による高齢者の厚生(well-being)向上と就労促進
(2)社会課題の解決に向けた官民連携・国内投資拡大
・世界にコミットした日本の脱炭素目標達成へのロードマップ作成と国民的共有
・社会課題解決に向けた官民投資マーケットの拡大
(GX、DX、イノベーション投資、健康・予防など)
・スタートアップ促進等による先端技術の事業化
・「人への投資」の拡大、マーケットによる非財務指標評価の促進
■内閣府HP資料掲示URL
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2022/0323/agenda.html

【経済財政諮問会議】「健康寿命延伸」等で“新たなフロンティア”開拓を/有識者議員提出資料
【2022.03.24配信】内閣府は3月23日、「令和4年第3回経済財政諮問会議」を開き、会議資料を公開した。民間有識者は提出資料の中でウクライナ情勢等でリスクが顕在化した場合の迅速なマクロ経済運営の必要性を指摘したほか、医療・健康領域に関わる部分については、「社会保障給付の効率化と負担の増加抑制」や「健康寿命延伸による高齢者の厚生(well-being)向上と就労促進」などを提唱した。健康寿命延伸に関連しては、「可処分所得と国内投資の拡大を同時に追求することにより、脱炭素や健康寿命延伸など我が国の社会課題を解決し、新たなフロンティアを開拓すること」としている。
関連する投稿
【2022.12.02配信】12月1日に開かれた経済財政諮問会議で、民間議員は社会保障における「経済・財政一体改革における重点課題」を提起した。その中で、医療・介護分野におけるDX推進に加え、「ヘルスケア・医薬産業の成長力強化」を“HX”として記載し、その推進を提唱した。
【経済財政諮問会議】「令和5年度予算編成の基本方針」を答申/DX等への投資や全世代型社会保障の構築明記
【2022.12.02配信】政府は12月1日、第15回経済財政諮問会議を開催し、「令和5年度予算編成の基本方針」を決定した。令和5年度予算編成に当たっては、“令和4年度第2次補正予算と一体として”とし、「経済財政運営と改革の基本方針 2022」に沿って、足元の物価高を克服しつつ、経済再生を実現するとし、DX等への投資や全世代型社会保障の構築を明記した。
【経済財政諮問会議】鈴木財務大臣「建議の方向」に「リフィル処方箋の積極的活用」明記
【2022.05.16配信】政府は5月16日に経済財政諮問会議を開き、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針)の骨子案を公表した。同日の会議では鈴木俊一財務大臣が資料「財政制度等審議会の建議の方向」を提出。この中で「リフィル処方箋の積極的活用」を明記した。
【2022.05.16配信】政府は5月16日、経済財政諮問会議を開き、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針)の骨子案を提示した。
最新の投稿
【2023.03.31配信】トモズは、2023年4月1日付で德廣英之氏の後任として、代表取締役社長に角谷真司氏が就任することを内定したと公表した。
【日本薬剤師会】公明党厚労部会に要望/医薬品の安定供給で/「薬価差のみに焦点でなく広く提供体制への影響を踏まえた議論を」
【2023.03.30配信】日本薬剤師会は3月30日に定例会見を開き、3月28日に公明党厚労部会に医薬品の安定供給に係る現状と課題について要望を行ったことを説明した。同テーマに関するヒアリングを公明党から受けた格好。
【2023.03.30配信】スギ薬局グループは3月30日、さくら薬局グループとの業務提携することで合意したことを公表した。
【電子処方箋】院内処方への対応を検討へ/電子カルテ情報共有との整理も課題に
【2023.03.30配信】厚生労働省は3月29日、「第12回健康・医療・介護情報利活用検討会」を開催し、この中で電子処方箋の今後の予定も報告された。主に「リフィル処方箋への対応」「患者からの口頭同意による薬剤情報を取得」「院内処方への対応」という3つの機能改修の予定について報告されたもの。院内処方への対応については電子カルテ交換サービス(仮称)の整備が進む中、電子カルテ情報共有との整理も課題とされた。
【電子処方箋】患者からの口頭同意で過去の薬剤情報を取得できるよう機能改修へ/重複チェックアラートの実効性高める
【2023.03.30配信】厚生労働省は3月29日、「第12回健康・医療・介護情報利活用検討会」を開催し、この中で電子処方箋の今後の予定も報告された。主に「リフィル処方箋への対応」「患者からの口頭同意による薬剤情報を取得」「院内処方への対応」という3つの機能改修の予定について報告されたもの。患者からの口頭同意によって薬剤情報取得を可能とする機能改修を行い、重複チェックアラートの実効性を高める考え。