緊急避妊薬の問題に関しては、薬経連会長の山村真一氏が「何か薬局から行動を起こさなくては」との危機感を抱いており、当メディアに対しても、「具体的なアクションプランを薬局側から示していきたい」との考えを示すとともに、「市単位での取り組みが有効ではないか」とのアイデアを示していた。
https://www.dgs-on-line.com/articles/981
山村会長は地域薬剤師会で会長などの要職を務める理事などのメンバーに、自らの考えを提示し、オンライン等で意見交換を重ねてきた。
こうした呼びかけに応え、行動を起こし始めたのが八戸薬剤師会だった。
八戸薬剤師会会長の山田文義氏(薬経連理事)は、八戸薬剤師会のホームページで緊急避妊薬を在庫している薬局リストを開示し、地域に情報発信していくことに関して、役員会でおおむね了承されたとする。
今後、どのような情報をホームページに開示していくか検討を重ねるという。
緊急避妊薬の調剤に対応可能な薬局のリストに関しては、厚労省も研修修了者の情報収集とともに、ホームページで対応薬局のリストを掲載しているほか、民間サービス事業者やNPO法人、あるいはチェーン薬局企業などが対応可能薬局に関して情報発信している。
それぞれが労力をかけて何とか情報を発信していこうとしている最中ではあるが、課題もある。
厚労省のホームページでは研修修了薬剤師が9000人を超える中、更新作業に多大な労力がかかることが挙げられる。民間サービス事業者のホームページでは、営業色が強くなってしまう可能性も否定できない。NPO法人ではあくまで活動に参加・賛同している薬局の情報しか集まらない。薬局チェーン企業のサイトでは、その企業の店舗の情報しか分からない。
こうした課題もある中で、地域薬剤師会からの情報発信は、地域での取り組みの一環の中で地域住民が情報に触れられる機会を増やすことにつながると考えられる。そのほかにも情報を介した地域の人へのエンパワーメントにもつながるほか、地域のネットワークにつなげられる利点も生かせそうだ。
また、こうした取り組みの検討の前に、八戸薬剤師会では、会員の意識調査を行った。
会員の意識の収集に関わった八戸薬剤師会専務理事の阿達昌亮氏は、「会員の中には慎重論もあるが、いろいろな意見があることも仕方がないと思っている。一方で、すべてではないにしても、全体としては“薬剤師が取り組んでいかないといけない”という意識を持っている会員が多かった」と話す。「中には、『社会インフラである薬局は取り扱うべきだ』という明確な意見を示す会員もおり、私自身、取り組みの背中を押された」と話す。
意見交換会には浜松市薬剤師会会長の品川彰彦氏や薬経連理事で神奈川県で薬局を経営する矢野良太郎氏なども参加しており、八戸薬剤師会の取り組みが薬経連を介して、他の地域でも広がっていく可能性もある。
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<編集部コメント>
女性の健康支援を含め、薬局が取り組むべき領域は広がっている。これらを過度な負担で実践するのではなく、地域というネットワークで展開することにより負担の分散にもつながる可能性があるのではないかと感じた。
そういった意味でも薬局業務の領域が広がれば広がるほど、地域での取り組みの価値は高まるのではないか。
さらには地域単位での健康づくりの底上げにもつながることは、自治体との取り組みの成果向上にもつながると考えられる。
コロナを機に市薬や地域薬剤師会の存在が大きくなったことは象徴的だ。
地域で薬局同士が連携し、それによって自治体と協働していくことは、古くて新しい、コロナ禍で重要度の増しているテーマであるように思う。
緊急避妊薬の問題も、地域連携のメリットが表れる1つの事例でもあるのではないだろうか。

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