【詳報】コロナワクチン接種をどのような人材に打たせるのか?厚労省の懇談会の議論の中身は

【詳報】コロナワクチン接種をどのような人材に打たせるのか?厚労省の懇談会の議論の中身は

【2021.04.24配信】厚生労働省は4月23日、「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に係る人材に関する懇談会」を開き、歯科医師によるコロナワクチンの注射行為について、必要な医師・看護師等の確保ができず患者の同意があることなどを条件に集団接種のための特設会場に限り認めるとの方針をまとめた(https://www.dgs-on-line.com/articles/891)。本稿では懇談会の模様を詳報する。議論の過程では日本医師会が歯科医師による特例について期間を設ける考えがあるのかなどを質問した。


 議論の中では日本医師会常任理事の松本吉郎氏が発言。

 「特設会場での集団接種に限り歯科医師の注射も認めるという理解をしたが、一方、患者の同意に関して、個別同意かどうか確認させてほしい」とした。
 事務局は「個別の同意が必要と考えている」とした。
 「具体的には歯科医師が打つことを掲示するほか、受ける方が歯科医師だと認識できるよう名札をつけることなどが考えられる」とした。

 松本氏は「歯科医師の方々によるワクチン注射を地域で考えていただくということに反対のことはない」との見解を表明。一方で、看護師・准看護師の確保について、「潜在的な看護師の活用等の実績はどうなっているのか。処遇の改善等の手当てもしっかりすべきだ」と話した。事務局はヒアリングレベルでは、短期的な雇用や派遣であっても標準的な賃金が支払われているとの認識を示した。松本氏は「現状ではなく、今後、さらなる手当て拡充をお願いしたい」と要請した。

 日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長の木戸道子氏は、事務局が示した違法性阻却の観点について「納得できる内容」との考えを示したうえで、「接種をうける国民と歯科医の双方にとって不安のない態勢が重要。歯科医師が教育の段階で筋肉注射やアナフィラキシー対応について学習されていることや必要な場合は研修を受けることなどを、国民に広く周知してほしい」と話した。

 聖隷福祉事業団顧問の清水貴子氏は、「歯科医師の方々からの協力には賛成」としたうえで、「歯科医師の方々で筋肉注射の経験があおりの方々はどのくらいいるのか。またPCR検査の特例でどれぐらいの歯科医師が手を挙げたのか教えてほしい。こういった企画をしても実際は手挙げになるとおもうので」と質問。
 東京医科歯科大学名誉教授の田上順次氏は、「大学病院など以外の一般臨床においては筋肉注射を行うことはほとんどないのではないか」と話した。
 東京歯科大学 副学長の一戸 達也氏も自身の経験について、「過去には筋肉注射を行うことはあったが、最近ではない」としたうえで、「過去に経験したことがある歯科医師はいると思う」とした。

 日本歯科医師会副会長の柳川 忠廣氏は、「地域の歯科医師会と医師会は信頼関係を取っている。病院の歯科医とも協力していくことを想定している」と述べた。昨年、PCR検査の増強に向けて地域医師会等が運営する PCR 検査センターに限定して歯科医師が検体採取を行えるとした特例の実績に関しては、事前研修に応じた歯科医師は1800人で、その中で要請を受けて実際に出動した歯科医師は5つの県で48名だとした。
 
 大阪歯科大学歯学部教授の中嶋 正博氏は、「口腔外科の専門医であればほとんど筋注の経験はあると思っていただいてよいと思う」との認識を示した。「患者からの同意があればお手伝いできると思う。ワクチン接種を受ける国民に対し、歯科医師が打つということを十分に理解いただく環境を整えていただきたい」とした。

  日本医師会常任理事の羽鳥 裕氏は、「集団接種会場には大学病院などにおられる方でなく一般の歯科医の方々に出てきていただくことになると思うので、筋肉注射には不慣れだと思う。きちんと学習していただく必要がある」と述べた。
 また、「医師がいない場合でも、例えば歯科診療所で打つことができるのかを確認したい」とした。
 事務局は「特設会場での接種に限って違法性の阻却ができると考えている。また、集団接種会場で予診ができる医師がいることを前提としている」と話した。

 羽鳥氏はかさねて、「歯科診療所内で歯科医院のスタッフの方に打つということもあり得ないと考えてよいか」と質問した。
 事務局は「そういった行為は医師法違反に当たると考えている」とした。

 国立国際医療研究センター 理事長の國土典宏氏は、「基本的に賛成」としたうえで、「予診を医師が行い、筋肉注射を看護師または歯科医師が行うということだが接種後の状態観察も歯科医師が協力できるとしているが、この業務はどのようなものか。その業務の違法性の阻却との関係を確認したい」と質問した。

 事務局は「歯科医師の方には接種した方の様子をみていただくという意味で、何かあった場合には医師の方に対応をいただくという意味のため、ここは医行為には該当しないと考えている」とした。

 清水氏は再度、確認したいと発言。「歯科医師は予診はしないということでよろしいか。あくまでワクチン接種の可否は医師が判断するという理解でよいか。つまり、医師の方が必ずいないとワクチン接種はできないという判断でよいか」と質問した。
 
 事務局は「予診については、対象者に打ってよいかどうかという診断を伴うもので、こちらは医業に該当するので医師が行うことになる。歯科医師はできないことになる」と回答した。
 
 羽鳥氏は、歯科医師の研修について質問し、「具体的に市町村で行うのか、あるいは医師が行うとしたらどのような形で行うのか」とした。
 事務局は「研修については講義と実習を考えている。講義のほうは筋注の経験の有無にかかわらず受講いただく、実技については経験のある方は必須とは考えてはいないが、地域の実情に応じて行う形になると思う」とした。

 徳島大学大学院医歯薬学研究部 教授の市川 哲雄氏は「コロナのこの状況の中でワクチン接種が迅速かつ円滑に実施されることが求められているので歯科医師の支援が求められるのであれば協力すべきだと思っている。そのための教育というのは受けているし、さらに必要な講習を受けて実施されるべきだと思う。ただし、最終的にはこれを認めるかどうかは国民の判断、受け入れるかどうかが重要。きちんと広報をお願いしたい」とした。また、歯科医師に協力依頼というのは行政から歯科医師に依頼がくると考えてよいかと質問。事務局は「ご指摘の通りだ」とした。

 東京歯科大学 副学長の一戸 達也氏は、「想定される歯科医師の数というのは、不足している医師・看護師の数に影響されると思うが、どのくらいを想定しているのか。国民の方々に安心して受けていただける環境を整えるとすると、協力に応じる歯科医師は筋肉注射の経験を有しているか、または研修を受けているかのどちらかではなく本来は両方であることが望ましいのではないか。実際の必要数が思い浮かばないので一概には言えないが、国民の方々はそのほうが安心しやすいのではないかと感じた」とした。
 事務局は「ご指摘の内容をふまえ検討させていただきたいが、違法性の阻却としての考え方は、どちらかで考えている」とした。

 北海道医療大学歯学部 教授の三浦 宏子氏は、「安心感をお示しする意味では、経験を有する者と、研修を受けた者の両方にしていくのがよいのではないかと感じた。ただ、足りないところにしっかりと接種を実施するために協力するという趣旨のため、地域の状況に応じるということは重要。望ましいのは両方だが、地域の状況によっては限りではないとしたらどうか。歯科麻酔の知識や筋注の実績のある歯科医師も多いので、ご協力するのは社会的意義が大きいと思っている」とした。

 事務局は「経験や研修の有無については、どうしても確保できない場合に限ってであることと、筋注の経験のある歯科医師の方は限られることを踏まえ、いずれかとさせていただきたい」とした。

 日本歯科医師会 副会長の柳川 忠廣 氏は「歯科医師の協力が必要だということになれば医師会の先生方のご協力をいただきながら取り組んでいきたい。研修についてもPCR特例と同様に協力していきたい。歯科麻酔や口腔外科、過去にそういった経験のある人が望ましいとは思う。しかし、どの程度の人が必要かということと、口腔外科や歯科麻酔も専門医認定レベルであると地域偏在もあるため、要望としてはどの地域でどのくらい足りないということが分かれば準備も進めやすいのでお願いしたい」とした。また「接種会場の医師や看護師はワクチン接種すみであることが前提になるのか」と質問した。

 事務局は「ワクチン接種をしているかどうかは前提条件ではない。接種会場で医療従事者の方が接種していただくことは差し支えない。ワクチンは重症化予防効果はあるが感染予防のエビデンスはないところ」とした。

 大阪歯科大学歯学部 教授の中嶋正博氏は「さきほど安心して受けていただくために国民の方々に十分な説明をいただきたいとお願いしたが、併せて会場にいる医師・看護師の方にも十分な説明をお願いしたい」とした。

 大阪大学大学院歯学研究科 教授の林 美加子氏は、「方向性に異存はない。今後について、来年・再来年などについてはどう考えているのか。どこまで範囲を広げるかの議論も必要と感じた」とした。

 日本医師会常任理事・羽鳥裕氏は「今回は緊急的に行うということは理解したが、例えば前回のPCRの特例の際には期限を設けた。コロナワクチン接種についていつまでも続くのか。コロナ以外の感染の時や歯科医師の業務拡大につながるようなことはないのか」と質問した。

 事務局は「PCR検査特例の際にも明確な期限を設けたものではなく、コロナ感染拡大下でとしていた。今回も同様に歯科医師に協力をお願いするしかないという状況下ということにしたい」とした。

  東海大学法学部法律学科教授の柑本美和氏は「事務局案に賛成だ。今回のことが許容されるのは安全性が確保されている状況で行われることが一番なので、安全性確保の点については確実に実行していただきたい。国民に周知される必要がある」と述べた。

 北海道医療大学歯学部 教授の三浦 宏子氏は「歯科医師がワクチン接種にかかわるスタートの時期はいつぐらいを想定しているか」と質問。
 事務局は「ワクチンの状況にもよるが、高齢者の接種は一部地域で始まっていて、限られている状況。連休が明けるとワクチンがそれなりの数が入ってくる見込みなので、それ以降になるかと思う」とした。

  岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授 教授の仲野 道代氏は「人口密集地やへき地での歯科医師の数が足りるかどうか分からない状況で、経験を有する人にするのか、研修を受けることによっても可能になるのか」と質問。
 事務局は「繰り返しになるが、経験を有する方、もしくは研修を受けた方と考えている」と回答した。

 九州歯科大学 理事長・学長の西原 達次氏は、「ワクチン接種に関してシミュレーションをして、歯科医師が出向かなければいけないかをできるだけ早めに割り出すことが国民が安心した形のワクチン接種につながると思う。歯科麻酔や口腔外科の範疇を超えるという発言も解釈すると、過疎地域などでは医師と歯科医師が一体となって地域のために貢献するということなくして、今回の会議が実効性のあるものになるかならないかの分かれ道になると思う。データを収集したうえやっていただきたい」と述べた。

 座長の中谷氏は、「国民のご理解を得られるように工夫をすること、研修を十分に実施することが重要などの意見をいただきました。また、実際にいつごろから歯科医師の方々にお願いするかは、これから状況をみながら自治体が動いていくということですが、早急にワクチンを接種することが最も有効なコロナ対策であることは間違いないので、さまざまな工夫をして進めたい」と話した。

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