【独自_3団体トップ鼎談③】「患者のためなのか」を問われた令和8年度調剤報酬改定/日本薬剤師会

【独自_3団体トップ鼎談③】「患者のためなのか」を問われた令和8年度調剤報酬改定/日本薬剤師会

【2026.09.27配信】日本薬剤師会(日薬)は、令和8年度調剤報酬改定について「患者のためなのかが問われた改定」との受け止めを明かした。都市部への新規出店に対して減点するとの措置についても、薬局集積について「患者が望んだことなのか」という考え方が成り立つとし、医療リソースの足りていない地域への対応を国として考えていくことの表れだとの見方も示した。日薬が取り組む「地域医薬品提供体制」によって、全国津々浦々に薬剤師のサービスを提供していく必要があると語った。


薬局集積地の薬局は「患者は望んだことなのか」

 ――令和8年度調剤報酬改定への受け止めをお願いします。

 岩月 NPhAの藤井会長と、JACDSの塚本会長、お二方がほぼお話しされたので、違う切り口で申し上げると、財源の減少傾向が挙げられると思います。医療保険においてはご存知のように薬価の引き下げが主な財源捻出にもなってきました。調剤報酬においては今回、いわゆる物価高騰や賃金上昇への対応という名目はありましたけれども、全体としては財源は縮小傾向であったというのが現実です。

 では、財源が縮小されると何が起こるかというと、今お二人からもお話があったように、合理化・効率化ですよね。効率化をすると、また点数下がる。これは今言ったように、国全体の医療費財源が減ってきている、全体の財源が減っているのかどうかわかりませんけれども、少なくとも調剤に回せる財源が減ってきていることが大きな背景にあると思います。

 こうした前提の中で、今回の改定は「患者のための薬局ビジョン」の実現ということが前面に打ち出されました。「患者のためというのは何なのか?」、こういうことを、この2年間でわれわれが示していくことが求められている、そういう点数化だったと思います。

 全体としてはシュリンクしていくけれど、患者さんにどういった医薬品提供で対応ができるのかということを細かく見ている改定だったのかなとも思うんですね。マスで見ると効率化なんだけれど、手の届かないところには少し、本当に少しだと思いますけど、目線を変えた点数があったのではないかと。そこはメリハリだったんだろうなと思っています。

 これから、薄利多売から高利薄売に変えていかなければいけないことを考えると、かかりつけ薬剤師というパーソナルなことだけではなくて、それを包括的に評価するということではないかと思います。

 「地域住民にとってどういう薬剤師がいいのか?」とかですね。こうなってくると、「この薬剤師さんにかかってよかった」という物語みたいなものを薬剤師側が、薬局側が提供できるかどうか。それが、国民、地域住民にとって物語になれば、おそらく放っておいても評価はついてくるだろうと思うんですね。そういう意味で、ある意味、きっかけの調剤報酬改定だったのではないかという認識を持っています。
 
 もっと大きな流れでいえば、「人口減少」です。今回の改定で示された薬局集積地域における新規出店に対して点数を下げるというのは、「患者のための薬局ビジョン」に照らすと、「患者が望んだのか?」ということなんですよね。
 
 「薬局が集積しているところにあると、調剤報酬で個店であってもいじめられている」と捉える方もいらっしゃるでしょうし、当会の会員の中にも「若い薬剤師が新規出店を抑制されるんじゃないか?」という意見もありますけれども、それよりも、医者もいない、薬剤師もいなかったら人が住めないでしょ、というところにこれからどうやって対応していかなければならないのかという切り口だったのではないかと思っています。

 一方で、熊本への視察の際に、これを機に辞めてしまおうかと考えている医療機関のお話も伺ったんですね。そういうところが出てくると、そこを国全体としてどう考えるのかということも念頭に置いているのではないかと思っているんです。設備投資の話もありましたけれど、地方で設備投資して回収できるかというと、ではその資金を誰が準備して、どこに回すのかということが、おそらくこれから顕在化していくと思うんですよね。それが先ほど申し上げた、「患者のため」というのは、それは地域ごとに「患者のため」が違う、ということだと認識しているんです。

評価が一律ではなくなる可能性、メリハリの先に関心

 ――政策提言としては、どのようなことを求めていきますか。
 
 岩月 どうやって展開していくのかというのは、これは答えがすぐに出る話ではないですけれども、そういったことをこれから、まさに「患者のため」に、「その地域の患者のために何ができるのか」という視点から、日本薬剤師会は「地域医薬品提供体制」の構築が不可欠と言って対応を進めています。どういう形になるかといえば、おそらく地方においては一定程度の集約化を迫られることが想定されます。逆に都市部においては分散化だと思います。都市部はもう医療機関の近くに集積しているわけですから。医療機関の近くにあることがいいことなのか。もう一度、地域住民の近くに寄るという方法はないのか。それは今言ったように、地方と都市部ではそれが一概に、ゼロかイチではなくて、徐々にグラデーションをつけながら、そういう方向に全体を誘導していくということでないと、たぶん薬局全体が生き残れないだろうと思うんですね。
 
 ですから、そういった意味で言うと、そういう政策をこれから期待しますし、評価というのがおそらくこれから一律ではなくなってくるだろうと思うんですね。その一律ではない評価をどのようにメリハリがつくのかということに関しては、重大な関心を持って見ているということだと思います。

地域によっては薬局を集約しないと生き残れない

 ――「地域医薬品提供体制」が日薬の取り組みであり、政策提言でもあると。

 岩月 そうですね。地域によっては薬局を集約して効率化を図らないと生き残れかもしれません。なくなってしまったら元に戻らないので、そうならないように、集約が選択肢になる。「集約」と言ったら「財務省と同じ言葉使うな」とお叱りも受けたんですが、でも、みんなで力を出し合って、地域の拠点として、例えば20人薬剤師を雇っている薬局であれば、1日600枚ぐらいの処方箋に対応できるんですよね。その代わり、都市部と違ってみんなが来れるわけではないので、配達だったりをしなければいけない。そのための人数も要りますし、そうすると大規模な設備投資も必要でしょう。そういうことをこれから考えてやっていく。そうなると、そういったところに報酬を回すためには傾斜配分という考え方も、報酬で見るかどうかは分かりませんけれども、薬局機能を維持するために何ができるのかということをトータルで考えることになってゆくのではないでしょうか。

 先ほど予防、未病という話もありましたけれども、そういうことまでひっくるめて施策をどうするのかという方向に舵を切っていくのかもしれません。そういう政策を実現してほしいなとも思っています。

 細かいことを言えば、調剤報酬改定による財源配分は何をどうやってもみんなが100点満点とはならない。でも限られた財源の中で、どう配分していくのかということだろうと思います。
 
 地域医薬品提供体制というのは、OTC薬や健康食品もひっくるめて、あるいは公衆衛生もそうですが、こういった薬剤師に相談することをひっくるめて提供することを表現した言葉です。

 例えば第2類医薬品や第3類医薬品は登録販売者でも販売できる。その時に薬剤師は「登録販売者さんが売っているんだから、私は知りませんよ」ということではいけないんですよね。全ての医薬品提供に薬剤師が関わって責任を持つとしないと。それがさっき申し上げた物語なんです。地域住民がそういう物語を「そうだね」と言って安心してくれて共感を持ってくれれば、この仕事ってたぶん残っていけると思うんですね。そういうことをこれからその地域の住民の方々と進めていく必要がある。法律をいくら作っても、結局、皆さんがそういう認識を持たないと変わらないじゃないですか。男女雇用均等法だって、法律ができましたよ、でもそれだけで世の中が変わるわけではなくて、男性も育休を取るとか、実態として認識が変わっていかないと世の中は変わらないですよね。
 
 だからわれわれが言っているのは、薬剤師サービスというものを全国津々浦々に住んでいる人たちが享受できるようにしましょう、ということ。そのためには今言ったように、安心して任せてくれる地域住民の方々がいないと、物語が成立しないので。それをわれわれはこれから努力してやっていかなきゃいかないと思っています。

チェーン薬局には薬剤師の評価軸でリードを期待

 ――他団体との連携で実現したいことなど、お考えをお願いします。

 岩月 私どもは職能団体、薬剤師会ですから、今申し上げた、物語を紡いで薬剤師の持っている能力を地域に根付かせたいと思っているんですね。そうは言いながら、そんな簡単な話ではないと思う。NPhAさんもJACDSさんも、薬剤師をたくさん雇用していらっしゃる。薬剤師の能力が十分に発揮できるような職場環境を提供していただきたい。もちろん大きな店舗をやっていらっしゃるので、お店の看板も大きいんですけども、でもそこにいる薬剤師が、「あの人よかったよね」と言ってもらえるような仕事をしたいし、させてほしい。

 薬剤師全体を底上げすることによって、さっきから同じことを言っていますけど、評価につながる。もっと言ってしまうと、それがないと評価というか処遇が上がらないと思うんですよね。6年制の大学を出て、国家資格取って、今の薬剤師の年収って果たして十分なのかとか、ですね。そういった人たちをどう評価していくのか。

 それは今言ったように、薬剤師会の会員がいる薬局はどちらかといえば小規模の薬局が多いですから、やっぱり大手がリードして俸給を上げていってくれるとか、そのための評価軸をどう作るかっていうのは、まさにわれわれが持ってない力や能力をお持ちだと思うので、そういった十分に持っていらっしゃるお力を発揮していただけると、全体の底上げにつながるんだろうと思っています。各団体が薬剤師の評価を上げる取り組みに注力することによって、この業界全体が地域住民から評価をしてもらえる、ということになるのではないかなと。

 もちろん登録販売者さんが要らないとか、事務の人が要らないとか言っているんではありません。薬剤師をどう評価するかということで切り取ると、そこはぜひ力を合わせてやっていくべきと思っているところです。

OTC薬の在庫情報共有も地域住民にメリット

 岩月 業態ごとの強みを活かす連携もできると思います。

 これは真面目に言っているんですけれども、それぞれ持っている機能とか能力とか違う。今でも地域住民はそれを上手に組み合わせて使っているんですよね。OTC薬がほしいときに、在庫があるかないか分からない薬局にはあまりいかないとすれば、それは情報がないからです。そうすると、その情報はチェーンであろうと個店であろうと、ドラッグストアであろうと、共有すればいい。特に過疎化が進んでいる地域では、すごく重要な情報です。時間をかけて買いに行ったのに売っていなかったということは避けたいじゃないですか。ですから、それぞれが持っている能力やノウハウを生かす連携、協力はたくさんできると思うんです。

 その結果、評価をされれば生き残れるのであって、われわれが生き残りたいと思っていても、地域住民が容認しなければそれは叶わないことになる。「残ってください」と言っていただけるようにみなで力を合わせないと。何が協力できて、何が協力できないということではなく、それぞれの得意な分野で力を合わせていかないと、会長のお二人がおっしゃったことが実現できないだろうと思うんですね。

 おそらく報酬改定でいうと、それは後付けなんです。そういった実態が出てくれば、それは財政面から見ても、貢献しているドラッグストアやチェーン調剤、薬局の点数を減らそうとは思わないでしょうと思うんです。

 ――わかりました。ありがとうございます。

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