処方箋1枚当たりの調剤医療費は−0.5%/抗ウイルス薬がプラス影響
令和5年度の医療費動向に関しては、対前年伸び率が2.9%となった。内訳としては入院が3.1%、入院外が1.0%、歯科が1.9%、調剤が5.4%となった。診療種類別では、ほかに比べ、調剤の伸びが高かった結果。
日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、事務局からの説明と日薬の受け止めは同様であるとの考えを示した。具体的には医療費全体では増加しているものの、処方箋単価では減少しており、特に新型コロナウイルス感染症薬等のプラス影響を除くと中でも薬剤料の減少が大きいとした。
事務局は処方箋枚数が増加しているものの、処方箋1枚あたりの調剤医療費が減少しているとの資料を示していた。処方箋枚数は対前年比6.0%と伸びているものの、処方箋1枚当たりの調剤医療費は−0.5%となっている。
そのうち、処方箋1枚当たりでは技術料が−0.4%、薬剤料が−0.6%で、技術料、薬剤料ともに減少した。
また、薬効中分類「抗ウイルス剤」の薬剤料がプラスの寄与となっている。処方箋1枚当たり医療費伸び率での寄与度は1.9%、処方箋1枚当たり薬剤料の伸び率への寄与度では2.6%となっている。「抗ウイルス剤」には新型コロナウイルス感染症やインフルエンザに係る抗ウイルス剤が含まれる。
日薬森氏「薬剤料に関しては、抗ウイルス薬の寄与がなければもっと低かったはず」
森氏は、患者動向は徐々には回復してきているものの、新型コロナウイルス感染症が流行した3年間の影響がとても大きく、令和元年から5年度の平均伸び率は1.8%にとどまっていることも指摘した。
森氏は「令和5年度の全体では確かに(調剤医療費は)プラスにはなっているが、処方箋1枚当たりでは調剤医療費、技術料、薬剤料ともに下がっている」と指摘。
「特に薬剤料に関しては、抗ウイルス薬の寄与がなければもっと低かったはずだ。これはやはり(薬価の)中間年改定が原因であるというふうに考えられる。さらに近年の物価高騰、それから人件費の高騰は価格転嫁できない公定価格で経営している薬局・保険医療機関にとって、影響は大変大きなものとなっている。中間年改定については今後議論することになるが、物価高騰や人件費高騰を含む大臣合意後の環境の変化、それから7年連続の薬価改定の影響を踏まえて、中間年改定の実施については慎重に検討する必要があるというふうに考える」(森副会長)と述べた。