スイッチOTCの審査の改善方策については、令和6年3月の規制改革推進会議(健康・医療・介護 WG)において、厚生労働省 ・PMDA 及び日本 OTC 医薬品協会からなる検討会議(スイッチ OTC WG)を新設し、スイッチ OTC の審査に必要となる申請資料の内容の見直し等に着手するとともに、整ったものから実施段階へ移行することが報告されていた。
それを受け、厚労省ではこれまでのスイッチ OTC の審査の実例等を分析。現時点で行いうるスイッチ OTC の審査の改善方策等を整理した。
現在のスイッチOTC医薬品審査では、承認申請に際して、その臨床試験結果の添付を要求している。しかし、スイッチ成分は、医療用医薬品として実臨床で長年使用され、適切に使用すれば、その有効性及び安全性は十分に確保されることが既に確認されているものであり、実際、要指導医薬品の区分が設定された平成 26 年6月以降に承認した新規スイッチ OTC 医薬品 18 品目の審査報告書を確認したところ、約半数(18品目中10品目)では、医療用医薬品の臨床試験結果は当該医療用医薬品の承認申請資料が提出されているものであったが、その審査において、スイッチOTC として使用される場合に想定される新たな知見は認められなかった。
こうした分析結果を考慮し、生物学的同等性などが確認されているなど一定の条件を満たす場合については、申請時の臨床試験結果の提出は必須ではないとした。医療用医薬品の臨床試験結果の再解析やスイッチ OTC としての新たな臨床試験を行うことなく、また医療用医薬品の臨床試験結果に関する承認申請資料を提出することなく、スイッチ OTC の申請を行えることとする。
条件は以下の通り。
①元となる医療用医薬品と生物学的同等性が確認されている場合であり、また、②元となる医療用医薬品と同一成分及び分量並びに剤形で、かつ、③効能又は効果が元となる医療用医薬品の承認事項の範囲内であり、各々の効能又は効果について用法及び用量が元となる医療用医薬品の承認事項と同一であるスイッチOTC
なお、スイッチ OTC は、薬剤師等の確認・サポートの下、需要者の選択に基づき使用される点が医療用医薬品とは異なることから、そのような状況でも、安全かつ適切に使用できる確認事項・指導内容の充実性や、適正使用を確保するための方策の適切性の観点を含めた審査は引き続き、維持する方針。
そのほか、「規制改革実施計画(令和6年6月 21 日)」(閣議決定)において、スイッチ OTC化の承認申請から承認の可否判断までの総期間を1年以内に設定すると定められたことを確実に達成するため、当局側及び申請企業側双方がそれに向けて努力を行う必要があるとし、照会・回答に際して期限を設定する等、今後、詳細な標準的プロセスの検討を開始する。さらに、業界側では、各企業が適切な申請を行えるようにするための申請ガイダンスを今後作成する。ガイダンスに則した申請を実施するとともに、当局側では、PMDA においてスイッチ OTC に関してその妥当性等を申請前から申請企業が判断しやすくするように、新たな対面助言の枠組みを設置し、申請企業がその枠組みを十分活用することとする。なお、この取組は、定期的にフォローアップし、改善方策を両者で協議する。
製造販売後調査の実施は継続する。
従来からスイッチ OTC の承認後には、製造販売後調査を実施し、調査結果に基づき副作用の発現状況に加えて、OTC の販売環境下における適正使用の状況についても評価を行い、情報提供資材の改良等、必要な措置を行ってきた。
引き続き、製造販売後の安全確保方策を実施するにあたり、製造販売後調査は重要であることには変わりないものの、今後の調査に際しては、従来、製造販売後安全性調査における副作用頻度調査の調査予定症例数について、原則として内服薬は3000 例、外用薬は1000例の収集を指導してきたところであるが、品目の特性に応じた、より適切な調査予定症例数の設定等や、調査方法について、従来のモニター店舗を介した方法に加え、例えば QR コードを利用した購入者からの直接回答等、電子化を含むより効率的・効果的な方法の追加について、検討を行い、所要の措置を講じることとする。
編集部コメント/現実的なスイッチ促進力になる可能性
スイッチOTCに臨床試験や医療用薬の資料添付を求めてきた従来の承認申請は、申請する企業にとって経済的なハードルになっているとの指摘がこれまでもあった。
こうした承認審査の改善はより多くの企業にスイッチOTCの申請行動をもたらす可能性があり、スイッチOTCの促進力になると考えられます。