【日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会】「薬価差のさらなる解消」など5つの提言公表

【日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会】「薬価差のさらなる解消」など5つの提言公表

【2023.04.11配信】日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会(代表理事・武藤正樹氏)は4月10日、制度部会が5つの提言を公表した。3月28日の理事会で承認されたもの。ジェネリック医薬品の使用促進の数量目標の廃止のほか、薬価差のさらなる解消、流通改善ガイドラインの順守、バイオシミラーのさらなる普及、都道府県別フォーミュラリーの導入ーーなどが柱。


「例えば後発医薬品調剤体制加算を廃止し、逆に 80%に使用割合が達しなかった場合の減算措置を別途導入」

 「1数量目標の廃止」については、昨今の不祥事について一義的には企業のGMP違反が原因としながらも、数量目標による普及策とジェネリック医薬品の薬価下落が影響したことは否めないと指摘。ジェネリック医薬品の数量シェア目標の設定と、医療機関・薬局への診療報酬上のインセンティブによる普及策はすでに限界とし、現在の「2023 年度末までに全ての都道府県で数量シェア 80%以上」の数量目標は継続するとしても、2024 年度以降は、新たな数量シェア目標を設定することは行わないことを提言している。

 その上で、数量シェア目標設定から新たなジェネリック医薬品の「品質管理・製造管理の確保」と「安定供給」の具体的な政策立案とそのフォローという新ステージに移行することが必要として以下を提言している。
①新たな数量シェア目標の廃止
 数量シェア目標に替えて、個別具体的なジェネリック医薬品の「品質管理・製造管理」「安定供給」の推進と実現を目標とする。また普及策としての診療報酬、調剤報酬上のインセンティブは役目を終えたので 2024 年改定以降は廃止する。たとえば後発医薬品調剤体制加算を廃止し、逆に 80%に使用割合が達しなかった場合の減算措置を別途導入する。

例えば「品質管理・製造管理」「安定供給」に取り組んでいる企業等を評価する「加算制度」を創設

②「品質管理・製造管理」「安定供給」の更なる強化策
 業界団体が現在作成中の「ジェネリック医薬品信頼回復行動計画」の確実な実施を望む。そして厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課が民間シンクタンクに委託して実施している「ジェネリック医薬品使用促進ロードマップ検証検討委員会」において上記のジェネリック医薬品信頼回復行動計画の実施状況のモニターを行うこととする。
 また、ジェネリック医薬品企業の「品質管理・製造管理」と「安定供給」への誘導策を推進するため、2024 年診療報酬改定において、たとえば以下のような「品質管理・製造管理」「安定供給」に取り組んでいる企業等を評価する「加算制度」を創設してはどうか。「品質管理・製造管理」「安定供給」に取り組んでいる加算は、ある意味「企業要件」としての加算である。

全国一斉試験の拡大

③品質情報検討会の活用
 2008 年以来、国立医薬品食品衛生研究所では、「ジェネリック医薬品品質情報検討会」において、ジェネリック医薬品に懸念有とされた論文、学会発表について再試験を実施し、評価している。検討会が発足当初はこうした懸念有の論文、学会発表が多数発表されてその再検証が行われていたが、最近はその数がとみに激減している。
 一方、全国一斉試験(年間 900 品目)により流通後発医薬品の品質再検査においては、なお一定頻度(0.3%)の不適合品の検出が続いている。また 2008 年から 2019 年の間に不適合品を出した 27 企業の一覧を見ると、今回の企業の品質不祥事が明らかになった 13 企業のうち 6 企業が含まれていることがわかる(図表3)。こうした全国一斉試験には企業不祥事が明らかになる前に、企業の品質不正のシグナル検出する可能性を秘めているのではないか? このため一斉試験の品目数をさらに拡大して、不適合品については企業の立ち入り検査等を積極的に行い品質不正の事前検出に努めてはどうか?

「先発品 1 品目に対して保険収載出来るジェネリック医薬品の品目を各社の製造能力・製造計画に応じて限定してはどうか」

④上市ハードルを上げる
 2005 年の薬事法改正により、「製造責任」から「製造販売責任」に大きく変化し、医薬品は「製造販売」の元で管理されることになった。委受託製造の完全分離が認められた。これにより製造工場を持たず「共同開発」を活用することで「市場」への参入を下げた経緯がある。当時は、先発系 GE 企業が積極的に「共同開発」を活用することで、ジェネリック医薬品の市場拡大に貢献した。しかし一方では同一成分に多数の企業が群がり、多数の銘柄が市場に出回る結果となっている。
そもそもジェネリック医薬品の市場は当該先発品の市場以上に拡大することはない。つまりジェネリック医薬品の市場規模は事前に把握することが出来るのである。このため上市時に各企業がジェネリック医薬品の供給量を事前に提示し、安定供給を確約することになっている。但し今後は、過当競争を軽減する観点からも、先発品 1 品目に対して保険収載出来るジェネリック医薬品の品目を各社の製造能力・製造計画に応じて限定してはどうか。
 また共同開発を起点とした製造委受託を活用する製造販売業についても、有事でも柔軟に増産対応が出来る「安定供給体制」を構築出来ている企業を評価するような制度を導入してはどうか?
 このようにしてジェネリック医薬品市場への参入ハードルをあげ、品目の絞り込みを行うことが必要だ。

先進諸国では「医療が包括払い」「参照価格制度」「完全分業」「公定マージン・クローバック制」などの4つの点から薬価差は生じていない

 「2薬価差のさらなる解消」については、薬価差の解消を推し進めることも、ジェネリック医薬品が安定して供給し続けられるような「薬価」を形成していく「薬価制度」と「流通の見直し」が必要として、以下を提言した。
 一般的に、4 月に新しい薬価が適用され、9 月末の「未妥結減算」の仕組みが導入されて以降、数多くの薬価の値段を決める為には、ジェネリック医薬品は品目が多いので「丸ごと」で決めるような「総価取引」がされやすくなっている。さらに「最低薬価品など薬価が戻る仕組みを利用する場合もある」ことや、価格帯のルールがある事から、一層「総価取引」になりやすく、医療機関へ「納入価で差別」する為にはジェネリック医薬品が「交渉の最終調整弁」として使われ、結果として、薬価の下落を大きくまねくことになっている。特に大規模チェーン薬局が「薬価差」を多く占めるという結果が、有識者検討会で報告されている。そして昨今の物価高騰、円安によりジェネリック医薬品に赤字品目が急増している。今の薬価制度と流通の仕組みでは、ジェネリック医薬品を安定供給する持続可能性は崩壊することが目に見えている。まずは薬価差の解消を推し進めることも、ジェネリック医薬品が安定して供給し続けられるような「薬価」を形成していく「薬価制度」と「流通の見直し」が必要だ。
 先進諸国では「医療が包括払い」「参照価格制度」「完全分業」「公定マージン・クローバック制」などの4つの点から薬価差は生じていない。

  その上で、以下の4つの検討を提言した。
①病院外来における包括払い制のさらなる拡大
②参照価格制度の導入
③医薬品分業のさらなる推進
④薬局における公定マージン制度の導入とクローバック制度の導入

 そのほか「3流通改善ガイドラインの順守」、「4バイオシミラーのさらなる普及」、「5都道府県別フォーミュラリーの導入」なども提言している。

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