なぜ鮏川氏は地域薬剤師会で活動するようになったのか。
2012年から勤務した日本医科大学千葉北総病院(千葉県)の門前店舗での経験が大きく影響した、と鮏川氏は振り返る。
「千葉県では薬薬連携がとても進んでいると感じていました。病院薬剤師の先生方や地域の薬局の先生方と、例えば吸入薬指導の研修を共同で行うことなどをしていました。ここでの経験が、地域での連携を推進していくことも薬剤師の使命だと感じた経験になりました。個々の薬局で吸入薬指導のスキルがついても、地域の患者さん全体に良い指導を提供することにはならないからです」(鮏川氏)
その後、千葉県習志野市の店舗やエリアマネージャーを経て、再び2019年に地元・茨城県牛久市にあるアイングループの薬局「つかもと調剤薬局 下根店」で勤務することになった。そこで鮏川氏は、積極的に地域の居宅療養支援事業所や地域包括支援センター、そして地域薬剤師会を回る。「連携させていただきたいとご相談する機会を多く持つようにしていました。地域包括支援システムの推進には、薬剤師会も含めた他職種の方々と協調して動く必要性を感じていたからです」(鮏川氏)
そんな活動が地域薬剤師会からも目にとまったようで、牛久薬剤師会の学術委員(地域包括支援センターケアシステム運営協議員)となった。そして、のちに2021年6月、茨城県薬剤師会の理事に就任。牛久薬剤師会からの推薦だった。
県薬では地域医療委員会の副委員長を務める。当初の使命感通り、地域医療への貢献に汗をかいている。
大手チェーンに所属する薬剤師が薬剤師会で活動することについてはどのように考えているのだろうか。
鮏川氏は、“行動量”の増加への貢献を挙げる。
「個人の薬局、大手の薬局の区分けに関係なく、薬局薬剤師が協力して行動量を増やしていくことが重要ではないかと思っています」(鮏川氏)。
また、「国民や他職種の方々に向けて薬剤師の職能をアピールしていかなければいけないと思っています」と話す。
今後の薬剤師会の活動の中では、「経営者ではない勤務薬剤師への発信」「薬局薬剤師として地域に貢献するために何ができるかの提案」などを自身の課題に感じているという。
最近でいえば、抗原検査キットの取り扱いなど、コロナ対応でも行政・自治体と薬剤師会が連携しなければ進めていけない事項も増えていると感じているというが、スピード感に関しては「薬剤師の良いところでもあるのかもしれないのですが、慎重に考えすぎてしまって動き出すのに時間を要してしまうところや、より多くの関係者を巻き込むような視点が少ないことは課題に感じています」(鮏川氏)とする。
常に改善すべき課題はどこの組織にもある。しかし、鮏川氏は冒頭の「地域薬剤師会は薬局間連携を担えるか?」の問いに対しては「できます」と回答する。
薬剤師ワーキンググループのとりまとめでは、地域薬剤師会の活動に関して「地域の取組のあり方を検討する際には、会員、非会員に関わらず地域の薬局が協力して議論していくべき」としている。
鮏川氏が所属するアインファーマシーズでは、薬剤師会への活動に対して、特段の制約はしていないという。
取材を通して痛感したことは、所属は関係なく薬剤師という専門職に流れる職業倫理が鮏川氏の行動の源泉であるということだ。こうした人材をうまく地域薬剤師会で生かしていくことができたら、地域への薬剤師の価値が向上することにもつながるのではないだろうか。

オンラインで取材に応えた鮏川氏
●鮏川安祐氏 アインファーマシーズ北関東支店第4フィールド 係長・フィールドマネジャー。現在、牛久薬剤師会と茨城県薬剤師会の理事