【病院薬剤師のプレアボイド事例公開】内服薬⇒注射剤切り替え時の用法用量チェックなど/日本調剤資料

【病院薬剤師のプレアボイド事例公開】内服薬⇒注射剤切り替え時の用法用量チェックなど/日本調剤資料

【2022.04.05配信】日本調剤は4月5日、病院向け派遣薬剤師が作成した「プレアボイド事例集」を公開した。公開を通して、薬剤師の職能を発揮し安全で質の高い薬物治療に貢献したいとしている。サイトで内服薬から注射剤切り替え時の用法用量チェックなどの有益な3例を掲載したほか、2021年の事例707件の中から特に有益な事例47件をまとめ、事例集として発行した全文をダウンロードできる。


 サイトに掲載した主な3事例は以下の通り。

■ケース01:内服薬⇒注射剤切り替え時の用法用量チェック
 もともとイーケプラ錠(一般名:レベチラセタム錠)1回750mg1日2回で内服されていた患者さま(70歳代男性)の処方について、薬剤師がカルテを確認した際、1回500mgの点滴に変更されていたことに気づきました。
 添付文書によると、通常、内服薬から注射剤に切り替える場合、同じ用量及び投与回数に変更と記載があるため、疑義照会を行いました。

<処方変更>
イーケプラ点滴静注500mg 1バイアル1日2回 朝夕

イーケプラ点滴静注500mg 1.5バイアル1日2回 朝夕 に増量

薬剤師より
 内服薬⇔注射剤の切り替えを行う際は、同じ成分であっても、投与した薬剤のうちどれだけの量が全身に循環するか(=バイオアベイラビリティ)の差を考慮する必要があります。イーケプラの場合は内服薬と注射剤のバイオアベイラビリティがほぼ同じであるため、同量投与が推奨されています。この事例では本来注射剤も1回750mgで投与すべきところが500mg投与となっていました。
 イーケプラは抗てんかん薬であり、誤って減量すると効果不十分で症状が発現するリスクがありましたが、発作の誘発を未然に防ぐことができました。


■ケース2:点眼薬による抗がん剤副作用の悪化リスクを回避
 抗がん剤治療中の患者さま(60歳代女性)に、ヒアレイン点眼液(一般名:精製ヒアルロン酸ナトリウム液)が処方されました。抗がん剤の副作用に対する処方である可能性を考え、担当医に確認。この場合ヒアレイン点眼ではさらに炎症が悪化する可能性があることを説明し、人工涙液でのウォッシュアウト(洗い流し)および眼科の早期受診を提案しました。

<処方変更>
ヒアレイン点眼液 1日数回

ヒアレイン点眼液 中止
人工涙液 追加

薬剤師より
 抗がん剤の副作用の一つに流涙(涙目)があります。ヒアレイン点眼液は粘性がありドライアイなどで角膜や結膜が傷ついているときによく用いられる薬ですが、涙に含まれた抗がん剤を滞留させてしまうためかえって逆効果になると考えられます。
 適切な薬剤変更により、副作用の悪化を未然に防ぐことができた事例です。


■ケース3:薬剤の中止および再開時期について検査値を元に提案
 心房細動の既往があり、血栓症の発生抑制を目的にイグザレルト錠(一般名:リバーロキサバン錠)が処方されていた患者さま(80歳代女性)。薬剤師が入院後の採血結果を確認したところ、腎機能が低下していたため、医師に中止を提案しました。後日の採血で腎機能が改善していることを確認し、改めて投与の再開について確認、元の用法用量で再開となりました。

<処方変更>
【中止中】イグザレルト錠10mg 1錠 朝食後

【再開】イグザレルト錠10mg1錠 朝食後

薬剤師より
 腎機能の指標となるクレアチニンクリアランスが15mL/minを下回った場合、イグザレルト錠は禁忌となります。この事例では採血結果の推移やカルテを確認したうえで、脱水による一時的な機能低下である可能性を薬剤師が考慮しており、適切な時期に有益な薬剤を再開することで血栓リスクを軽減することができました。
 このように病態によっては一時的に悪化した検査値が回復する場合もあります。薬剤師が継続的に介入することで、検査値等の臨床所見と投与薬剤を把握しながら、薬剤の中止および再開を適切なタイミングで提案できた事例です。

 これらは日本調剤が産休・育休代替薬剤師派遣サービスにより病院で勤務する当社薬剤師がとりまとめた「プレアボイド事例集」をコーポレートサイト上で公開したもの。
https://www.nicho.co.jp/corporate/business/hosp_pharmacist/preavoid/

 「プレアボイド」とはPrevent and avoid the adverse drug reaction(薬による有害事象を防止・回避する)という言葉を元にした造語で、薬剤師がその専門性を実践した結果、既知の副作用を回避した事例や、早期発見により影響を最小限に抑えた事例などのことを指す。

 同社では2018年7月から病院薬剤師の働き方における福利厚生の支援事業として「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」を開始しており、調剤薬局のみならずさまざまなフィールドにおいて、薬剤師が薬物療法におけるリスクマネジャーとしてその職能を発揮している。
■「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」
https://www.nicho.co.jp/corporate/business/hosp_pharmacist/
 同事業を運営する日本調剤 医療連携推進部では、病院で勤務する日本調剤の薬剤師が薬物療法の安全性および経済性に貢献したプレアボイド事例を集積し、社内研修等で活用していた。薬剤師の役割を広く知ってもらうことを目的に、2021年の事例707件の中から特に有益な事例47件をまとめ、事例集として発行したという。

 新設ページでは事例集の中から3例をピックアップして紹介。事例集全ページをPDFでダウンロードすることも可能。

 同社では、「薬剤師のあるべき姿や職能について追求を続け、業界でもトップクラスの教育制度を受けている薬剤師が活躍の場を広げるための取り組みによって医療界に貢献していきます」としている。

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