事務局資料、オンライン資格確認や電子処方箋を「どう考えるか」
事務局はオンライン資格確認について、「令和3年10月から本格運用が開始され、薬剤情報や特定健診等情報が閲覧でき、診療や服薬指導に活用できるようになったことを踏まえ、どのように考えるか」との論点を示した。
また、電子処方箋についても、「電子処方箋については、令和5年から電子処方箋の運用が開始される予定であることを踏まえ、どのように考えるか」と論点を提示した。
医療のICT活用を評価しようとの意向がにじむ。
加えて電子版お薬手帳に関して、次のように紹介。
「電子版お薬手帳の導入済の薬局が約66.6%であった。また、電子版お薬手帳について、『既に利用している』、『利用したい』と回答した患者は増加しており、令和3年度において、それぞれ13.2%、10.3%であった。薬剤服用歴管理指導料の算定要件では、要件に該当する電子版お薬手帳は紙のお薬手帳と同様に評価している」。
その上で、論点として、「電子版お薬手帳の導入状況等を踏まえ、今後の対応についてどのように考えるか」と提示した。電子版お薬手帳を評価しようとの意向がみえる。
医師会・城守氏、オンライン資格確認の導入は「診療報酬上の評価考えられる」
こうした論点に対し、日本医師会常任理事の城守国斗氏は、「オンライン資格確認は薬剤情報や特定健診情報が閲覧できるようになり、重複投薬を減らすことができるようになるなど利点がある。医療機関にとっては診療を行うに当たりそういった情報を活用することで患者さんに対して安心安全な医療が提供できるようになるとするのであれば、診療報酬上の評価を行うということは考えられる」と指摘した。
電子処方箋については、「一定の利便性があるということは理解している」としつつも、「今後利用を推進していくためには医療機関への導入に係る費用やランニングコストを手当てする必要がある。特に昨今は医療機関に対するサイバー攻撃によって医療情報システムに障害が発生したり個人情報の漏洩や医療提供体制に支障が生じると言うような事態が現実問題として発生している。医療機関としてはICT化に対応したサービスを提供するためセキュリティ体制構築に相当の費用がかかることが見込まれる。そういった費用を診療報酬として手当てするのであれば、最終的にはすべての患者さんにサービスを提供できる体制を確保する必要があるので、基本診療料に対して加算するなどして評価をするべきだと考える」と述べた。
電子版お薬手帳については事務局の資料に注文をつけた。「お薬手帳は医療機関でも患者さんから提示されている。その点は事務局も理解していると思う。しかし、今回の資料は薬局だけで情報共有を完結させるという印象を与えている。今後の資料提示には配慮して頂ければ」と述べた。
薬剤師会・有澤氏「オンライン資格確認はお薬手帳と組み合わせて活用」
日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏はオンライン資格確認について、「薬剤情報や特定の特定健診との情報が閲覧でき診療や服薬指導に活用できる重要な機能を有している。これらの機能をしっかりと活用していくためにはまず現場での運用が進み定着していくことが重要だ。オンライン資格確認のデータはレセプトデータを用いており、タイムラグが発生する。また自由診療や労災、OTC医薬品については反映されていないものもある。引き続きお薬手帳の活用と上手く組み合わせてより効果的な服薬指導を実施していくものと考える」と述べた。
電子処方箋については、「うまく活用していくことでより質の高い医療サービスの提供につながっていく。本格運用はこれからで、基本的には全ての医療機関・薬局が活用していることで本来機能を発揮するシステムだ。医療機関や薬局の体制整備の推進が重要。国民への周知や個人情報などのセキュリティ問題、リアルタイムの情報更新など、さまざまな課題がある。予定通り運用開始ができるようしっかり課題解決をした上で進めていただきたい。本格運用が延期になるなど現場が振り回されないよう、ある程度の余裕を持って進めていく視点も重要だ。そのためには国と関係団体等の連携をより密に進めていくことが重要と考えており、我々も体制整備や課題解決に向けて対応していく所存だ」とした。
電子版お薬手帳の論点については、「利用したい方が利用できる環境整備が重要。薬局での導入は引き続き進めていく。電子より紙のお薬手帳の方が利便性が高い場合もある。諸問題については引き続き検討が必要だ」とした。
健保連「オンライン資格確認の診療報酬上の評価には反対」
全国健康保険協会(協会けんぽ)理事長の安藤伸樹氏はオンライン資格確認や電子処方箋について、「現在の医療機関等における導入状況を見ると患者側がマイナンバーカードを保険証として利用しようとしても実際に医療機関等においては利用できないことが多い状況だ。このような状況では利用がなかなか進まないのではないか。医療保険部会の方でも申し上げているが、オンライン資格確認や電子処方箋については新たな機能であるとか情報が追加されるたびに費用負担のあり方を議論するのではなく、まず厚労省に総合的な今後の将来的な全体像を示してもらい活用の場面、ユースケースを整理し役割や受益等を踏まえて企業負担のあり方を議論すべきだ」とした。
電子版お薬手帳については、「診療報酬の話ではないが、データの標準化や総合活用といった取り組みを進めることにより、利用者や医療機関等において実効的に活用できるツールとしてしていくことが重要だ」とした。
健康保険組合連合会(健保連)理事の松本真人氏は、オンライン資格確認に関して早期の実装を要請するとともに、電子版お薬手帳に関しては「現場においてぜひ活用いただきたい」とした。一方、診療側からオンライン資格確認導入に際して診療報酬による対応を求める意見があったことに関しては、「オンライン資格確認、電子処方箋のいずれも保険者も基盤システムの構築に費用面も含めて協力している。お互いにそれぞれの立場で対応することであり、診療報酬で評価することには反対させていただく」と述べた。
日本労働組合総連合会(連合)・総合政策推進局長の佐保昌一氏は、「オンライン資格確認については運用開始施設が8.8%とまだまだ広まっていない。医療機関・患者双方の利便性、負担軽減が考えられるため早期に準備完了、運用開始できるよう厚生労働省としても取り組みをいただきたい。マイナポータルでの薬剤情報の一覧は本人同意が前提であるため、患者の心情への配慮も必要である。電子処方箋については運用開始後にシステムエラー等で影響が生じさせないように2023年の運用までにしっかりとした準備が必要。電子版お薬手帳は利用者の1人として利便性を感じている。普及することで電子処方箋の活用といった用途の広がりが期待できる」とした。