在庫金額の上昇による薬局経営への圧迫も深刻化/薬価中間年改定の廃止要望
岩月会長の会長演述は以下の通り。
“
日本薬剤師会第108回定時総会の開会にあたり、一言申し述べさせていただきます。
今回の総会は、令和7年度の会務及び事業報告を申し上げるとともに、令和7年度の決算案の審議をいただく総会になります。また、次期に向けた理事と監事の選任、加えて、選挙管理委員会委員の委嘱の件、さらには公益社団法人日本薬剤師会役員報酬等規程一部改正の件についてもご審議いただく総会となります。
総会は本会の最高議決機関であります。代議員の皆様におかれましては、日本薬剤師会が薬剤師免許を有する者の統括団体として、国民や患者のために内外に向けて令和7年度に実施した事業と決算を確認いただくとともに、次期執行部を決定する重要な総会であることをご認識の上、実りある議論と慎重かつ厳正な審議をお願いする次第です。
令和8年度の診療報酬改定は、4月1日に薬価基準が、6月1日に診療報酬が施行されました。報酬改定全体としては、医科・歯科・調剤を合わせた診療報酬本体分として+3.09%となり、その上で、医科・歯科・調剤の各科技術料の割合に応じた公平な配分比率(1:1.1:0.3)が堅持されました。三師会で共に主張してきた医療関係者の賃上げ対応も、決して満足のいくものではありませんが、一定程度理解されたものと承知しています。しかしながら、昨今の物価高騰や中東情勢に伴う物品の不足に加えて、政府は大型減税や給付付き税額控除等に向けた新たな議論を始めており、その財源を社会保障費から充てるかのような憶測も流れています。このような状況に鑑み、本会は政府に対し、賃上げ・物価高騰に対応した適切な財源確保を引き続き要望しているところです。また、9年連続で実施された薬価改定による影響も受け、医薬品の安定供給に支障が生じ、薬物治療の維持・確保が困難になっている現状を踏まえ、本会は薬価基準の中間年改定の「廃止」を要望するとともに、長期化する医薬品の供給不足について関係する審議会等で改善に向けた意見を述べています。頻繁な薬価の引下げにより、薬局の備蓄医薬品の資産価値が減少する一方、高額医薬品の処方が増加し、在庫金額の上昇による薬局経営への圧迫も深刻化が増しており、このような状況の改善に向け、本会は必要な主張を継続してまいります。
規制緩和へ、「薬剤師はただ反対を唱えるのではなく薬剤師職能を前面に」
さて、令和7年5月、第217回国会において「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の一部を改正する法案が成立しました。このうち、本年5月1日より、「指定濫用防止医薬品」が新設され、従来の「濫用等のおそれのある医薬品(風邪薬、鎮咳去痰薬など 6成分)」が「指定濫用防止医薬品(8成分)」に格上げされ、販売手続が厳格化されました。また、原則対面だった「要指導医薬品」の販売が、薬剤師のビデオ通話指導を条件に特定販売が可能となりました。さらに、令和9年5月までに、薬剤師や登録販売者がいない店舗でも受渡店舗としての届出を行うことで一般用医薬品の受渡しが可能になるほか、薬局での調剤業務の一部外部委託も可能となります。そして、薬機法関連ではありませんが、令和9年3月からは、OTC 類似薬の保険給付の見直しを含む健康保険法の一部改正が施行される予定です。
テクノロジーの進化により、各種の規制緩和や効率化は今後もさらに進展することが予測されます。倫理的によほどの問題が見つからない限り、この流れは変わらないでしょう。この流れに対して、薬剤師はただ反対を唱えるのではなく、国民や患者に対して継続的に医薬品の適正使用と安全確保が担保されるよう、薬剤師職能を前面に打ち出して主張していかなくてはなりません。そして、このような課題の解決や対応の主役が、地域住民に最も近いところにいる地域の薬剤師及び薬剤師会であるのは間違いないでしょう。千差万別の地域の状況を間近に見て、その課題や解決策を提案し実行に移すのは、紛れもなく地域薬剤師会に所属する薬剤師一人ひとりです。そして、都道府県薬剤師会や日本薬剤師会は、三層構造の枠組みの下で地域の薬剤師をバックアップしていかなければなりません。
「未来はどんな世の中になっていくのでしょうか?」という問いに対して、本年10月の日薬学術大会(新潟大会)で特別講演をされます国立科学博物館の篠田謙一前館長は「それは、今の人たちが何をなしたかによって未来は作られる。ゆえに今の人が何を意識し、何に取り組むかによって、未来はいかようにも変わってゆく。つまり、未来は今の結果である」と回答されました。
未来を創造し、次世代の薬剤師たちに薬剤師職能を大きくして手渡せるチャンスでもある今を見つめて、将来の希望に向かって対応いただくことをお願いいたします。
とは言え、毎年9千人弱の新たな薬剤師が生まれているにもかかわらず、会員数の減少が続いています。薬剤師会が薬剤師の職能団体として永続的な活動を進めていくためには、薬学生を含む若年層を対象とした加入促進と、地域薬剤師会の範囲を超えた勤務薬剤師への働き掛けが非常に重要です。いわゆる大手チェーン薬局に勤務する薬剤師の方々に研修会への参加を呼び掛けるなど、積極的な取組みをお願いします。これについても、今の取組みが未来を変えることの一つです。薬剤師会の組織改革も必要ではないかと思います。
「今後、耳の痛いことを申し上げる機会もあるかもしれないが、薬剤師会として対応すべき事柄は待ったなし」
一昨年の会長就任から2年が経過しました。先輩諸氏や同僚、学生を含めた後輩の方々、薬剤師会関係者、行政官や国会議員をはじめ、多くのご指導やご示唆をいただきながら務めてまいりました。厳しい舵取りが続きます。
今後、耳の痛いことを申し上げる機会もあるかもしれません。しかし、薬剤師・薬局を取り巻く環境の変化は早く、薬剤師会として対応すべき事柄は待ったなしです。代議員の皆様、会員諸氏のご協力とご理解をいただきながら、執行部一同、一丸となって会務を進めてまいります。