薬局に勤務する管理栄養士の居宅療養管理指導の実施については、令和3年度地方分権で要望され、令和5年度中に結論を得ることとされてきた。論点としては、薬局の管理栄養士が実際に栄養管理を主軸として従事しているのかという勤務実態や、資格取得の有無など、質の担保をどう考えるかが示されてきた。
このほど厚労省老健局が行った調査の結果では、薬局に勤務する管理栄養士の1カ月の業務時間に占める各業務の割合は、接客・品出し等の店舗業務が37.0%と最も多くを占めていた。また、栄養食事指導に関する研修の受講頻度について、定期的に研修を受けていると回答した割合は4割未満だった。
さらに、薬局に勤務する管理栄養士が保有する資格について、多いものでも在宅栄養専門管理栄養士が8.1%、糖尿病療養指導士が7.4%など、栄養食事指導に関する資格を保有する者は少ないという実態も示された。なお、病院の管理栄養士では「がん病態栄養専門管理栄養士」41.5%、糖尿病療養指導士32.1%、在宅栄養専門管理栄養士13.1%などとなっている。
事務局はこうした結果を踏まえ、対応案として、「薬局に勤務する管理栄養士の居宅療養管理指導の実施に関して、今回の介護報酬改定においては、現行の基準を維持してはどうか」とし、評価を見送る方針を示した。
これに対し、 日本薬剤師会常務理事の荻野構一氏は、「現在、一部の薬局では管理栄養士を雇用したり連携したりするなどにより栄養相談などに応じた対応を行っているところが増えてきている」と説明し、「自立支援、重度化防止の観点からも薬と栄養の関係はきわめて重要であり、管理栄養士が関わることにより栄養状態の改善、減薬、副作用軽減等が期待される」とその役割の重要性を指摘した。ただし、実態調査の結果からは今回の評価は難しいとの考えも示した。「薬局に勤務する管理栄養士についてはデータもお示しいただいている通り、業務を通じた経験の蓄積や研修を通じた知識の習得、そして専門性の習得等が十分でないとの調査結果もあることから、現状では薬局に勤務する管理栄養士が居宅に訪問し必要でかつ十分な指導ができるかといった課題があるのも事実かと思われます」と指摘。「そのようなことを考え、今回は事務局提案でやむを得ないものと理解をいたしますが、今後の状況を踏まえつつ、将来的な課題の一つとして引き続き検討していただきたいと考えております」(荻野氏)と述べた。
【図】薬局に勤務する管理栄養士の1ヶ月の業務時間に占める各業務の割合は、接客・品出し等の店舗業務が最も多くを占めていた
【出典】令和4年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業「管理栄養士による居宅療養管理指導に関する調査研究事」をもとに老人保健課にて作成