【薬学部偏差値問題】いくつかの思い違い/既設校偏差値は近年あまり変わっていない/河合塾・近藤治氏

【薬学部偏差値問題】いくつかの思い違い/既設校偏差値は近年あまり変わっていない/河合塾・近藤治氏

【2023.03.29配信】受験シーズンを迎えた時期に、薬剤師の中で話題となったのが、「薬学部偏差値問題」だ。そこで、偏差値と薬学部の現状について、河合塾の教育研究開発本部主席研究員・近藤治氏に聞いた。1つ、薬剤師界隈を賑わせたテーマの1つに「薬学部の偏差値が下がってきている」というものがある。これに関して近藤氏は、歴史のある“既設校”に関しては「6年制化以降の偏差値はあまり変わっていない」との見方を示す。


 河合塾では実施した模試試験実績の点数などから、その学部に合格した人の合格者数と不合格者数が一致するラインをボーダーラインと呼んでおり、それが世間でいう偏差値とされている。したがって、偏差値50の薬学部でも、実際に合格した人の中には偏差値70の人もいれば50の人もいる。すなわち、あくまで合否の目安として出しているのが本来の偏差値であり、大学の“格付け”というよりも受験者の“志望大学合格への目安”といえる。また、少子化が進み、競争率が下がると前述の計算式自体が成り立たず、ボーダーラインが存在しない学部も登場する。

 1つ、薬剤師界隈を賑わせたテーマの1つに「薬学部の偏差値が下がってきている」というものがある。これに関して近藤氏は、歴史のある“既設校”に関しては「6年制化以降の偏差値はあまり変わっていない」との見方を示す。少なくとも、近藤氏が示した2014年(6年制化以降で最も高倍率の年)と2022年の偏差値の差は“既設校”では、あっても数ポイントの違いしかない。

以前は8倍まであった競争倍率は6年制導入から一気に低迷し、2006年以降、4.5倍〜2.4倍で推移。偏差値は競争倍率に大きな影響を受けるもので、影響を受けたのは主に新設校であり、既設校には大きな影響はなかったと分析する。競争倍率が急速に下がる中で、既設校の偏差値が影響を受けるのであれば、ここ数年でも既設校の偏差値は下がっているはずだが、実際は目立って下がっていないわけだ。

その理由に関して、イメージを描いたのが下のグラフだ。山が高いのがひと昔前の薬学部の状況。人数も多いし、倍率も高い。それが少子化で志願者が少数になってくると、山が小さくなってくる。しかし、偏差値は“位置付け”であるため、特に偏差値の高い層の状況に大きな変化は起きない。

 最後に近藤氏は、自身の立ち位置として、生徒が自分の希望する進路を見誤らないようにすること、加えてトレンドをデータで示し進路に関する視野が広がることで、より的確な進路を見つける手助けをすることだとしている。

河合塾の教育研究開発本部主席研究員・近藤治氏

この記事のライター

関連するキーワード


薬学部偏差値問題 河合塾

最新の投稿


【中医協】診療側意見、「かかりつけ薬剤師・薬局に対する評価」要望

【中医協】診療側意見、「かかりつけ薬剤師・薬局に対する評価」要望

【2025.12.26配信】厚生労働省は12月26日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。令和8年度診療報酬改定への各号意見が表明された。


【中医協】支払側意見、調剤基本料1除外を要望/600 回超かつ集中率 85%超、特に都市部薬局で

【中医協】支払側意見、調剤基本料1除外を要望/600 回超かつ集中率 85%超、特に都市部薬局で

【2025.12.26配信】厚生労働省は12月26日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。令和8年度診療報酬改定への各号意見が表明された。


【令和8年度診療報酬改定】本体+3.09%、令和8年度及び令和9年度の2年度平均として

【令和8年度診療報酬改定】本体+3.09%、令和8年度及び令和9年度の2年度平均として

【2025.12.24配信】12月24日の予算大臣折衝を踏まえて、令和8年度の診療報酬改定が決定した。令和8年度及び令和9年度の2年度平均として、本体を+3.09%とする。令和8年度+2.41%、令和9年度 +3.77%とする。


【中医協】オンライン受診施設、保険薬局内の開設に懸念

【中医協】オンライン受診施設、保険薬局内の開設に懸念

【2025.12.24配信】厚生労働省は12月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、オンライン受診施設に関して保険薬局内の開設に関する課題を提示した。委員からは、いわゆる療担規則に規定のある「経済上の利益の提供による誘引の禁止」などに照らすと懸念があるとして反対意見が相次いだ。


【日本薬剤師会】会員1671人減少、10万人切る/組織強化委員の報告書は年明け完成見込み

【日本薬剤師会】会員1671人減少、10万人切る/組織強化委員の報告書は年明け完成見込み

【2025.12.23配信】日本薬剤師会は12月23日に定例会見を開き、日本薬剤師会の全国会員数調査報告について報告した。


ランキング


>>総合人気ランキング