【厚労省_医薬品有識者検討会】“基礎的医薬品と不採算再算定の組み合わせ”ジャンル創設で薬価下支えの意見

【厚労省_医薬品有識者検討会】“基礎的医薬品と不採算再算定の組み合わせ”ジャンル創設で薬価下支えの意見

【2023.03.20配信】厚労省は3月17日に「第10回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を開催した。同日の検討会で一定程度、明らかになった方向性は、安定供給確保のために特に保険医療上の必要性の高い「基礎的医薬品」に関して、薬価の下支えをする方向だ。加えて、その効果最大化のためには大きな薬価差益が生じない仕組みとする必要があることなどが提起された。いうまでもなく、医療保険制度の持続性を担保しつつ、「イノベーション促進」と「安定供給」の2つの柱をどう確保するかが焦点となっているわけだが、今回は後者の「安定供給」の観点で整理がされた格好。


基礎的医薬品については公定マージン導入の意見

 基礎的医薬品などに対して薬価を下支えする際に、2つの観点がある。1つは「要件などの薬価制度」、もう1つは「薬価差が生じる問題への対応など流通問題」だ。薬価を下支えしても、大きな薬価差が生じて再び薬価が下がれば、下支え効果は限定的となるため、この2つの観点の両方を考慮する必要がある。

 「要件などの薬価制度」の観点では、例えば、基礎的医薬品を保険医療上に必要性の高いものとするのであれば、現在設けられている「薬価収載後25年が経過したものとの要件は意味をなさないのではないか。医療で評価が固まっているもの、といった要件でもいいのではないか」との意見が示された(青山学院大学名誉教授・三村優美子氏)。三村氏は加えて、「基礎的医薬品の薬価が下がり過ぎているのであれば、そこに不採算再算定という仕組みが使われる」と指摘。「基礎的医薬品と不採算再算定を組み合わせたものを1つのジャンルとして制度化し、2年に一度に限らず機動的に見直しされるべき」とした。仕組みとして用いられる不採算再算定については、「平均乖離率以下という要件も実態に合わないのではないか」(厚労省・安藤公一課長)との意見も示された。実際は総価取引の調整弁となり乖離率が大きくなるものがあるからだ。さらに基礎的医薬品と安定確保品のすり合わせの必要性の意見も出て、「下支えすべき医薬品とはどのようなものかという検討もしたい」(安藤課長)とされた。

 「薬価差が生じる問題への対応など流通問題」としては、三村氏は、「基礎的医薬品のような重要な医薬品に対して、通常の価格交渉の中に入れてはいけない」とした上で、「購入価償還という方法もあれば、実費という考え方、実流通コスト、実物流コストという考え方を入れていく。そのことで安定供給につながるのではないか」と述べた。加えて「情報システム基盤をプラットフォームとしてつくっていくことで流通のあり方が変わっていく」と指摘した。

編集部コメント1/チェーン薬局の“過大な薬価差問題”への具体的政策は見えづらい

 同日の検討会では、チェーン薬局における薬価差についても議論になったが、その問題に対する具体的な制度や仕組みについては霧がかかっている印象を拭えない。

 その対応が「流通取引の是正」なのか、薬価制度のような「制度としての対応」なのかにもよるが、仮にシンクタンクからの意見のように薬価制度の一環として、“過大な薬価差”を“国に還元”するとなると、診療報酬との関連の議論を避けては通れないと感じるからだ。過去の検討会でも指摘されている通り、医療経済実態調査においては薬価差も前提とした経営状況を把握した上で診療報酬で評価している。だからこそ、規模別の設定が調剤報酬にあるのであるし、すでに“還元”する仕組みが一定程度導入されていると指摘できるからだ。これを一部であれ、切り離すことになると、大なり小なり診療報酬に影響を与えることになる。日本医師会や日本薬剤師会などはこれまで、「診療報酬と薬価は不可分」という基本的なスタンスをとっており、そこまで踏み込むのであれば簡単な議論ではないはずだ。

 薬価差の問題に関しては、基礎的医薬品といった必要度の高いジャンルに対して大きな薬価差が生じるような仕組みは望ましくない、との取り扱われ方が大きかったように感じる。優先順位としては「薬価下支えのあり方」、その中のカテゴリーを限定した公定マージンなどの仕組み導入などがあるのではないかと感じる。そこに合理性のある「地域指数」の導入もあり得るだろう。三村氏は薬局などの薬価差の問題については、「薬局に対してどのような償還方法がよいのかの議論はされずにきた。特定の薬局において非常に大きな薬価差が生じている。これは何らかの形で対応していく必要がある」と指摘しつつも、「まずその前に新創品、基礎的薬などについてしっかりとした制度体系をつくった上で、取引のあり方を議論すると、もっと(どうすべきかが)決まってくる」と指摘していた。

 三村氏の発言ばかりを本稿で取り上げていることに違和感を感じる読者もいるかもしれないが、三村氏は流通に関する専門家であり、今回のテーマにおいては、流通問題からどう捉えられるかが、実際の制度の実現性には不可欠な要素となる。

編集部コメント2/大きな観点「薬剤費にマクロ経済スライドを導入するのか否か」

 また、本検討会で大きな観点として、「薬剤費にマクロ経済スライドの考えを導入するのか否か」があると考えられるが、今回の議論ではあまり取り上げられなかった。唯一、最後に芦田耕一氏(株式会社INCJ執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)が「マクロな視点から薬剤費をどう考えるかのコンセンサスが必要」と発言していた。薬剤費と診療報酬を切り離す考えを、たとえ部分的であっても導入するかどうかにも関わる問題といえる。

 財務省の中には年金制度と同様に薬価にもマクロ経済スライドを導入した方が財政の不確実性がなくなるとの考えがあるが、「年金」と「薬剤費と診療報酬」に違いがあるのは、単なる支出ではなく、その中に社会情勢を加味した政策を投入する必要性の余地があるかないかではないだろうか。そう考えると、政策投入によって、支出だけではない中身のコントロールはむしろ変動の余地があった方が行いやすいとも指摘できるのではないか。

編集部コメント3/「薬局・薬剤師向けメディア」からの視点

 議論の全体像を俯瞰すると、事実上の“毎年薬価改定”が製薬産業に甚大な影響を与える中で、繰り返しになるが、「イノベーション推進」と「安定供給」を守ることは最低限、必要となる中で、制度としてその“守り方”の議論が進められている。一方、そのどちらでもないカテゴリーに関して、実勢価主義が否定されているものでもない。その実勢価主義の中で位置付けられてきた、これまでの薬局の取引に関して、過度な否定には違和感も感じる。

 「医療機関から薬局に薬価差が移ってきた」との意見もあるが、その長い過程の間に、薬価乖離率が確実に圧縮されてきた事実も見逃してほしくはない。平成5年に20%程度あった薬価差は平成23年には8%程度まで圧縮されてきた。また、平成23年から令和4年まで薬価差は9.1%から7.0%の間で推移しており、大きな拡大がなかったとも表現できるものだ。むしろここ2年では圧縮傾向にある。
 「医療機関よりも薬局の方が薬価差が大きい」との指摘においては、収入における薬剤費の占める比率が7割程度という薬局の、医療機関との違いも指摘されるべきではないかと感じる。
 さまざまな背景から薬局だけを取り出してクローバック方式などを導入すべきという意見もあるが、そういった欧州の取り組みを導入するのであれば、導入されている地域では医療機関は包括払いであるなどの前提となっている制度との整合性も議論されるべきではないだろうか。

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