【日本薬剤師会】薬学教育モデル・コア・カリキュラム改定案へパブコメ提出/ 薬歴に係る学修の充実求める

【日本薬剤師会】薬学教育モデル・コア・カリキュラム改定案へパブコメ提出/ 薬歴に係る学修の充実求める

【2023.01.11配信】日本薬剤師会は1月11日に都道府県会長協議会を開き、その中で「薬学教育モデル・コア・カリキュラム (令和4年度改訂版)(案)」に関するパブリックコメント募集に対して意見提出を行ったことを報告した。評価できる点が多くあると評価する一方で、薬歴に係る学修の充実のほか、薬剤師が医薬品供給の担い手であることの理解などへの記載拡充求めた。


 提出した意見は以下の通り。

■薬学教育モデル・コア・カリキュラム (令和4年度改訂版)(案)への意見
公益社団法人 日本薬剤師会
会長 山本 信夫

 時代の要請に応じて、薬剤師養成教育の在り方に関する議論を精力的に進められ、新たな薬学教育モデル・コア・カリキュラムを取り纏められた薬学系人材養成の在り方に関する検討会の委員各位のご尽力に、心より敬意を表します。 社会の様々な領域で活躍する薬剤師、とりわけ医療現場に勤務する薬剤師の多くを代表する組織として、令和4年度改訂版薬学教育モデルコア・カリキュラム(案) に対する意見を申し述べたく存じます。
 
 全体としては、 最近の医療現場での薬剤師の役割や責任の増加に対応した工夫がなされており、大学初年次から、疾病の予防や個々の患者の状況に適した責任ある薬物療法が実践できる薬剤師の養成を目指すことが明記されたこと等、評価できる点が多くあります。一方で、記載が十分ではない点、 カリキュラム運用上の懸念等がありますので、以下に記載します。

1. 薬剤師が医薬品供給の担い手であることの理解
 薬剤師には、地域への過不足ない医薬品の提供体制・供給体制の担い手としての役割が課せられており、これは世界共通の「薬剤師が社会から求められる基本的な役割、根源的な機能」と考えられています。 この役割を担えずして、薬剤師が医療の多様性に対応することは不可能です。 「B-4-3 医薬品等の供給」 「F-3-1 医薬品の供給と管理」 の学修については、「薬剤師が過不足ない医薬品供給の担い手であること」を大学が十分認識してカリキュラムを構築することが求められます。 従って、 改訂版全体に共通するコンセプトとして、個別項目での具体的な記述に加えて、 前文への、上記の薬剤師の「役割」に関する記載が必要と考えます。

2.調剤録薬剤服用歴管理指導簿 (薬歴) 等に係る学修の充実
 改訂版全体を通して、調剤薬歴等の患者記録に係る学修が不十分と思われます。 現行のコア・カリキュラムにおいても、調剤録・薬歴等の記述は十分ではなく、これらが単なる記録ではなく、患者への最適な薬物療法を提供するために必須のものであることが大学教育において身に付いていません。 OSCE においても薬歴を取り扱う課題がほとんどないことにも違和感を覚えます。 調剤録・薬歴等の記録は、単なる患者情報や調剤した薬剤の記録ではなく、個々の患者生活者に対する薬剤師の介入・指導の根拠となる記録であり、医師のカルテと同様に薬剤師業務に欠かせないものです。 大学においてもその概念や必要性は教育できるはずであり、薬剤師業務の実践の基本情報となる調剤録、薬歴の考え方、必要性・重要性を学ばせるという視点を是非明記いただきたいと考えます。

3.薬剤師業務の根幹となる役割を修得させるカリキュラム
 今般の改訂では、医学・歯学との同時改訂であることから一部共有化を図ったとされていますが、医師・歯科医師等他の職種が学修すべき事項を、自らの基本を学ぶことなく模倣することは、時代の要請に応えた教育とは言えません。大学のカリキュラムにおいて、薬剤師の基本的な役割について修得する時間を十分確保すべきと考えます。 「美に怒りて膾を吹く」的に、 例えば、 基礎化学は不要であり医療薬学を学べば良いといった誤解を大学が持たないように注意が必要です。 薬物治療に責任を持つマインドと思考を醸成し、薬剤師業務の根幹となる役割を修得しうるカリキュラムの実現を願っています。

4. 薬剤師マインドを持った研究者と研究マインドを持った薬剤師との連携
 薬剤師業務には薬学の知識は欠かせないものですが、一方で、 研究者であっても薬剤師マインドを持つことは必要と考えます。 研究マインドを持った薬剤師と薬剤師マインドを持った薬学研究者、この両輪があってこそ、 六年制の薬学教育が成立・発展するものと考えます。 医師や看護師の養成と共通する教育のみでは薬剤師という固有の専門職の養成はできません。 薬剤師マインドを持った研究者と研究マインドを持った薬剤師との連携が進むようなカリキュラム上の配慮が必要と考えます。


 そのほかの事項を、別紙にも記載している。

以上、薬学教育モデル・コア・カリキュラム (令和4年度改訂版)(案)について意見を申し上げましたが、本改訂に伴う新たなカリキュラムの適用に際しては、各大学が責任をもって実効性のある教育体制を構築したうえでの運用となりますよう、併せてお願い申し上げます。

 なお、「薬学教育モデル・コア・カリキュラム (令和4年度改訂版)」 は、令和6年度入学生からの適用が予定されている。

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