【財務省財政制度等審議会・財政制度分科会】リフィル処方、“打ち消し線”など精査/「患者の希望を阻害する動きがないかフォローアップ徹底」

【財務省財政制度等審議会・財政制度分科会】リフィル処方、“打ち消し線”など精査/「患者の希望を阻害する動きがないかフォローアップ徹底」

【2022.04.13配信】財務省は4月13日、財政制度等審議会・財政制度分科会財政制度分科会を開いた。資料の中で、リフィル処方箋に関して4枚のスライドを割き、「令和4年度診療報酬改定において見込まれた再診の効率化による医療費適正化効果を着実に達成すべきことは当然」とした上で、打ち消し線など、「患者の希望やニーズの充足を阻害する動きがないかといった運用面を含めたフォローアップを徹底する」とした。


リフィルは医薬分業の転機、「医師から薬剤師へのタスクシフトや医師と薬剤師の連携・役割分担の深化が見込まれる」

 リフィル処方箋に関しては資料の中で、次のようにまとめている。

〇我が国外来医療の実態として、世界有数の受診回数の一方で、長期にわたり処方内容に変更がない処方(「長期Do処方」)が多く行われており、薬をもらうためだけに医療機関に出向き受診する、いわゆる「お薬受診」ないしそれに近い実態の受診の存在が指摘されている。

〇 「長期Do処方」に代表される、診療密度が薄く頻繁な外来受診こそが、待合室の混雑、待ち時間の長さ、その割に短い診療時間といった国民が日頃体験する我が国外来医療の実態につながっており、頻回の受診による身体的・経済的負担と相俟って、患者の通院負担を重いものとし、利便性も損なわせてきた。

〇 これに対し、リフィル処方箋の導入により、患者は、医療機関に行かずとも、医師及び薬剤師の適切な連携のもと、一定期間内に処方箋を反復利用できるようになる。患者の通院負担が軽減され、利便性が向上する効果は明らかであり、もとより国民の導入への期待は高いものがあった。感染防止の観点から不要不急の通院を避けたい事情が患者側に生じている新型コロナ禍において、導入のニーズは高まっており、時宜を得た導入となった。

〇 リフィル処方箋の導入は、医師に時間的余裕が生まれることで医師の業務負担軽減・働き方改革に資するとともに、診療時間を相対的に長く確保できることで医療の質の向上も期待できる。このように患者がメリットを享受する一方で、処方箋料や再診料の効率化を通じて国民負担(患者負担、保険料負担、公費負担)も軽減されるのであれば、効率的で質の高い医療提供体制の整備の一環をなす取組として、大いに歓迎すべきことである。

〇 リフィル処方箋については、患者・国民目線からその積極的活用が図られるべきである。令和4年度診療報酬改定において見込まれた再診の効率化による医療費適正化効果を着実に達成すべきことは当然である。患者の希望やニーズの充足を阻害する動きがないかといった運用面を含めたフォローアップ(注)を徹底するとともに、制度の普及促進に向けて周知・広報を図るべきである。あわせて、積極的な取組を行う保険者を各種インセンティブ措置により評価していくべきである。
(注)患者の症状によってではなく医療機関としてリフィル処方に対応しない方針を掲げている事例や処方箋のリフィル可欄に患者への特段の説明や患者の同意がなく打消し線が入っている事例等について、精査する必要がある。

〇これまで医薬分業においては、医師が患者に処方箋を交付し、薬剤師がその処方箋に基づき調剤を行い、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して業務を分担・連携すること等によって、医療の質の向上を図ることが目指されてきた。

〇医薬分業の現状を見ると、処方箋受取率(外来患者に係る院外処方の割合を示すいわゆる医薬分業率)が7割を超える中、薬局数は増加の一途を辿っており、6万施設を超えている。人口当たりの薬剤師数はOECD諸国の中で突出しており、調剤技術料は1.9兆円に達し、その伸びは新型コロナ発生以前で年率2.4%(2010~2019年)と高い。

〇他方、薬局において応需した処方箋のうち疑義照会が行われている割合が約2.8%、処方変更につながっている割合が約1.0%にとどまっている。医療機関の近隣に立地し、当該医療機関からの処方箋を応需するいわゆる門前薬局が多く、医療機関の敷地内に開設される同一敷地内薬局まで登場している。大手調剤チェーンが医療機関の門前等に進出してシェアを拡大する中、20店舗以上を経営する薬局の割合が増加し、全薬局数の約4割に上っている。受付回数が最大となる医療機関からの集中率が90%を超えている薬局が全薬局の約1/3を占めている。

〇このように特定の医療機関に依存し、立地や規模の優位性を競いつつ、調剤における薬剤の調製などの対物中心の業務を行っている薬局の有り様は、分業が形式化していることを示しており、医薬分業の趣旨を損ねてきた。薬剤師や薬局が患者や住民と深く関わることなく、医師の処方内容へのチェックにおいても患者への薬学的管理・指導においても専門性を十分に発揮することがなければ、患者や国民が医薬分業のメリットを実感しようもない。調剤報酬による国民負担も含め、薬剤師・薬局に厳しい目が向けられることは、必然の流れと言える。

〇 このような状況のもと、厚生労働省は、2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定し、かかりつけ薬剤師・薬局を推進し、薬剤師の業務を薬剤の調製などの対物業務から患者・住民との関わり度合いの高い対人業務を中心とした業務へシフトさせ、薬剤師がその専門性を発揮することを目指してきた。
〇 令和4年度診療報酬改定によるリフィル処方箋の導入は、「患者のための薬局ビジョン」における「対物業務から対人業務へ」の考え方、更には併せて謳われていた「立地から機能へ」の考え方を強力に後押しするものであり、患者本位の医薬分業が実現する転機となることが期待される。
〇 すなわち、リフィル処方箋の導入により、症状が安定していて、必ずしも医師による診察が必要ない患者について薬剤師が服薬管理を行うことになり、医師から薬剤師へのタスクシフトや医師と薬剤師の連携・役割分担の深化が見込まれる。薬剤師が患者への薬学的管理・指導を強化することで、患者にとって不必要なDo処方を見直したり、多剤・重複投薬や残薬の解消につながったりする可能性がある。
〇 加えて、リフィル処方箋を交付された患者は、医療機関を受診する必要なく薬局で薬を受け取れるようになるため、受診のついでに医療機関の近隣の薬局で薬をもらうことが減るという行動変容が生ずる。薬局は医療機関の近隣という立地で患者から選択される存在から脱却し、患者の服薬状況などを確認し、必要に応じて受診勧奨を行ったりするなど、薬学的管理・指導を的確に行える薬剤師の専門性や様々な患者・住民のニーズに対応できる機能を発揮することを通じて患者に選択してもらう存在として飛躍を遂げる可能性がある。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20220413/01.pdf

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