I&H 取締役 インキュベーション事業本部長の岩崎 英毅氏は、「大手調剤薬局に求められること」と題して講演。
岩崎氏は、第一三共勤務後、I&Hに入社した。
岩崎氏は、「私は門前薬局や大手調剤薬局は必要だと思っている。その役割を少しでも理解していただけたら」と講演の趣旨を話した。
調剤市場の現状については、調剤専業大手企業5社で1.5兆円の規模があり、それにドラッグストア大手の調剤事業5000億円を合わせると7.5兆円市場中、大手企業が20%以上のシェアがあるとした。「このままの推移でM&Aなどが進むと大手企業のシェアは5年後には40%になる」と予測した。
これまで利便性の追求に偏重したため、薬局の価値が理解されなかったのではないかとして、薬局薬剤師は信頼を得られるための取り組みを展開すべきとした。電子処方箋によってデジタル化に取り組むことは必須としつつ、利便性の面もあり、「デジタル化だけでは利便性追求という同じ轍を踏んでしまう可能性もある」と指摘した。
大手企業の特徴としては「従業員数と規模(資本力)」を挙げた。
具体的には医療的ケア児の処方箋7枚、41剤、45日分の処方を挙げた。
「こうした処方には多数の薬剤師、多くの時間、コストが相当かかり、結果的には赤字。では、やらないかというと、資本のある大手が引き受けるべき。実際に多くの薬局から断られて門前の薬局に処方箋が持ち込まれたこともある」(岩崎氏)。
「予防も含めて、地域の薬局が時間をかけられるように門前薬局や敷地内の薬局が橋渡ししていく。地域の薬局で受けられる体制になったら渡していくこともできる」とした。
「門前薬局は“支援薬局”という位置で意味がある」と指摘した。
大手としての取り組みとして、地域との災害時の協定や健康にかかわる包括提携のほか、へき地への出店事例などを挙げた。
コロナワクチン接種会場への協力では、神戸市などからの要請で同社でこれまで32万人の接種に協力してきたとした。
「実際は相当大変だった」(岩崎氏)。
また、将来に向けての取り組みとして「夜間受け渡しシステム」の構想を紹介。
カメラで遠隔に薬剤師とつなぎ、QRコードで決済を可能にする。
そのほか、岩崎氏は緊急避妊薬のスイッチOTC化の動きを挙げ、「これは一例にすぎないが、こういう事例は増えてくると思う。72時間以内の服用に貢献するようなあり方も大手企業が率先して取り組みたい。医師にとっても、それ以外の業務に費やせる時間創出になる」と話した。
「緊急避妊薬のような薬剤も、遠隔で医師や薬剤師が対応するようにし、その後にも責任をもって対応できるような体制が必要ではないか。画面越しだが対面で対応するような仕組みを検討していきたい」と将来的な構想を語った。
最後に、岩崎氏は「地域の薬局が不要とか、薬剤師会が不要とかいう話では全くない。薬剤師会という大きなお皿に乗っている玉の中で、大きいのが大手薬局であって、一つの薬局であるということは同じ。一緒にスクラムを組んで、どう患者に貢献するか努力していけば、必ず必要とされる薬局は実現できると思っている」と語った。

【I&H岩崎英毅取締役】「5年後調剤市場の大手シェアは40%にも」「大手は地域の薬局の“支援薬局”になれる」「不採算事業やへき地出店に大手の役割」
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