近年、医療機関や企業などを狙ったサイバー攻撃が発生している。日本薬剤師会(日薬)は、サイバー攻撃は大きな病院や企業だけでなく、小規模な薬局も被害に遭うおそれがあるとし、会員の薬剤師に対し対策強化を促している。
このほど、ホームページ上で「「サイバー攻撃への備え」のサイトを公開。実際に「サイバー攻撃を受けたかもしれないと思った」場合の対応策を列挙。「普段からできるサイバー攻撃対策」も掲載している。
サイト上では、攻撃を受けるとレセコンや電子薬歴が使用できなくなったり、患者の情報が流出したりする可能性があると対策の重要性を指摘。対策が必要なのはレセコンや電子薬歴だけではなく、薬局のホームページ、Web問診・予約システム、業務用パソコン、外部委託先のサービス、患者向けフリーWi-Fiなども含めて確認する必要があるとしている。
同サイトでは、薬局の現場で取り組む日ごろの対策と、被害が疑われるときの初動対応・相談先を紹介。ガイドラインや運用管理規程・BCPの雛形等は、既存の「医療情報システムの安全管理について」のページを活用するよう促している。
「サイバー攻撃を受けたかもしれないと思ったら」の項では、次のような異常が起きていないか確認の必要性があるとする。
・パソコンに突然、身代金を要求する画面が表示された。
・見覚えのない操作やログインの記録がある。
・レセコンや電子薬歴などが突然使用できなくなった。
・不審なメールの添付ファイルを開いたり、偽のサイトにパスワードを入力したりした。
・薬局のホームページが改ざんされている、または不審なサイトへ転送される。
これらの異常があった場合、サイバー攻撃を受けている可能性があり、システムの故障や偽の警告画面など、別の原因である場合もあるものの、自己判断で放置しないことが重要とする。
その場合、「まず行っていただきたい3つのこと」として以下を挙げる。
① 異常があるパソコンの使用を中止する
ウイルス感染などが疑われる場合は、そのパソコンの操作を中止してください。可能であればLANケーブルを抜く、Wi-Fi接続を切るなどして、ネットワークから切り離してください。
原因が分かるまでは、むやみに再起動したり、初期化したりしないでください。サーバーや複数の機器につながるシステムの場合は、保守業者に対応方法を確認してください。
② 薬局の管理者とシステムの保守業者に連絡する
薬局の管理者に報告するとともに、レセコン・電子薬歴などの保守業者に電話で相談してください。ホームページやWeb問診・予約システムなどに異常がある場合は、その管理業者にも連絡してください。
パソコンに表示された不審な警告文の電話番号には決して連絡しないでください。あらかじめ確認している正規の連絡先を使用してください。
③ 発生した状況を記録する
いつ、どのパソコンで、どのような異常が起きたのか、分かる範囲で記録してください。
専門知識は必要ありません。後から状況を確認できるようにしておくことが大切です。
画面表示や発生時刻などを安全に記録できる場合は保存し、記録やログを消去しないでください。
※サイバー攻撃が疑われる場合は、保守業者への相談だけでなく、厚生労働省への速やかな連絡も必要です。詳しくは下記の「相談・報告先」をご確認ください。
その上で、「サイバー攻撃を受けた場合の相談・報告先」と報告すべき内容をまとめている。
「普段からできるサイバー攻撃対策」では、「サイバーセキュリティ対策チェックリスト」の確認が効果的と指摘。同リストは、厚生労働省が薬局が取り組むべき事項をまとめ公表しているもの。
■厚生労働省の公式資料
令和8年度版 医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716185.pdf
チェックリストマニュアル(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716186.pdf
万一の被害に備えるサイバー保険も紹介。日薬では、会員向け福利厚生制度としてサイバー保険を案内している。技術的な対策やBCPの整備と併せて、経済的な負担への備えとして検討を促す。
■日本薬剤師会「薬剤師賠償責任保険・サイバー保険等のご案内」
https://www.nichiyaku.or.jp/yakuzaishi/about/welfare/boshu
そのほか、「日ごろから取り組みたい7つの対策」を紹介している。
1. パソコンや機器を最新の状態に保つ
2. パスワードを適切に管理する
3. 薬局内システムのバックアップを確認する
4. 不審なメールやメッセージ、偽サイトに注意する
5. 不要なアカウントや機器をそのままにしない
6. システムが使えない場合の対応を決めておく
7. いざというときの連絡先を確認する
なお、同ページは2026年10月時点の公的資料を基に作成した案内。実際の対応は、被害の状況、利用しているシステム、関係法令等に応じて判断が必要になる。
10月28日の日本薬剤師会の定例会見では、常務理事の堀越博一氏が会員向けの周知資料を説明。資料周知だけでなく、何らか会員の対策強化に向けてできることを検討したいと話していた。ホームページで情報をまとめたサイトを公開したことで会員は対策の確認がしやすくなったといえるだろう。
■日本薬剤師会「サイバー攻撃への備え~日ごろの対策と、被害に遭ったときの対応について~」
https://www.nichiyaku.or.jp/yakuzaishi/pharmacy-info/preparing-for-cyberattacks