「この上位加算は薬剤師雇用の原資として十分に計算されている」「中小病院に追い風」
日本病院薬剤師会「令和8年度地方連絡協議会」における武田泰生会長の会長演述は以下の通り。
【はじめに】
皆さま、こんにちは。日本病院薬剤師会会長の武田でございます。本日は、令和 8 年度地方連絡協議会にご参集いただき、心より御礼申し上げます。日頃より、各地域で病院薬剤師会を力強く牽引してくださっている会長の皆さまに、まず深い敬意をお伝えしたいと思います。
また、本日はご多用のなか、神谷参議院議員、前会長の木平先生にもご臨席いただいております。重ねて感謝申し上げます。
【70 周年記念会への御礼と新たなミッション・ビジョン・バリュー】
昨年の地方連絡協議会に続き開催いたしました「日本病院薬剤師会創立 70 周年記念会」には、全国から多くの会長の皆さまにご参加いただきました。70 年の歩みを皆さまと共有し、次の 10 年に向けた新たな一歩を踏み出すことができたのは、まさに地域病薬の皆さまのお力添えがあってこそです。改めて心より御礼申し上げます。
記念会でお示しした新たなミッション・ビジョン・バリューについても、各地域の会長の皆さまから温かい賛同のお言葉をいただきました。
「薬物治療の質を高め、地域医療を支える専門職として薬剤師の役割を再定義し、次世代に向けた新たな職能を示す」。
この方向性に、多くの会員の皆さまが共感してくださったことは、日病薬にとって大きな励みであり、次の 10 年を切り拓く確かな力となっています。
【これからの日病薬が向かう方向】
日病薬は、次の 10 年に向けて、「資質の向上」「職能の拡大」「薬剤師の充足」、この三本柱を中心に据え、国の政策とも連動しながら、病院薬剤師の職能をさらに発展させてまいります。
創薬モダリティの多様化、医療 DX の進展、地域包括ケアの深化、医療環境はこれまで以上に大きく変化します。しかし、どれほど時代が変わっても、患者一人ひとりに最適な薬物治療を届けるという薬剤師の本質は変わりません。この本質を守り抜くために、地域全体で薬剤師のキャリア形成を支える仕組みづくりを進めます。
「病院機能や規模に関わらず、地域で協力しながら、新任薬剤師の卒後研修、生涯研修、専門性の深化までを一気通貫で支える」。これが資質向上プロジェクトの核となります。
【職能拡大:300 点加算の本質】
今年の診療報酬改定で新設された「病棟薬剤業務実施加算・300 点」。これは、単なる 120点の延長線上の評価ではありません。入院中の容態変化に伴う薬物治療の微細な変化を捉え、その情報を入退院前後でつなぐ。「病院内完結型から、地域連携を見据えたシームレスな薬物治療管理へ」と診療報酬の思想そのものを転換した加算です。
この加算は、日病薬が掲げる三本柱すべてを後押しする、極めて大きな政策的メッセージだと受け止めています。
【地域中小病院にとっての“追い風”】
特に強調したいのは、この 300 点が「地域の中小病院にとって大きな追い風になる」という点です。これまで病棟配置が難しく加算算定を見送っていた施設でも、「薬剤総合評価調整+退院時薬剤情報管理」この組み合わせで一気に 300 点を算定できるようになりました。そして、この上位加算は、薬剤師を雇用し病棟に配置するための原資として十分に計算されています。
都道府県病薬会長の皆さまには、ぜひ地域の病院に対して、経営側と協議する際の材料として、この「300 点のインパクト」を積極的に活用するようにお伝えいただきたいと思います。
「行政の追い風が吹いている今こそ、日病薬は三本柱の実現に向けて覚悟を示すべき時」
【行政の後押し:文科省・厚労省の概算要求】
先日、文部科学省と厚生労働省から来年度の概算要求について説明をいただきました。その内容は、日病薬のこれからの活動を力強く支援するものでした。
• 文科省:薬学部地域枠の設置を高く評価 → 病院薬剤師不足地域・薬学部のない県への支援が明確化
• 厚労省:卒後臨床研修の実装に向けた取組に 10 億円 を要求 → 日病薬が進める「地域グループ研修モデル事業」を社会実装するための予算化を狙った内容
まだ概算要求段階ではありますが、「病院薬剤師の不足と地域偏在の是正」、この課題に対し、文科省・厚労省の両省が本格的に後押しする姿勢を示したことは、極めて大きな意味を持ちます。
【都道府県病院薬剤師会との協働】
行政の追い風が吹いている今こそ、日病薬は三本柱の実現に向けて覚悟を示すべき時です。地域全体で薬剤師を採用し、育てていく。その覚悟がなければ、新人薬剤師は地域に来ません。特に、病棟業務が展開できていない、教育体制が整っていない中小病院には、なかなか就職してくれません。
だからこそ、地域として、例えば「二次医療圏単位で、規模や機能の異なる施設が協力・連携し、臨床研修プログラムを構築し、地域全体で薬剤師を採用する」、この仕組みを本気で考えなければなりません。日病薬は、次の 10 年に向けてこの三本柱を着実に進めてまいります。
【むすびに】
本日の地方連絡協議会では、報告事項に加え、都道府県病薬からいただいたご質問・ご要望にお答えし、現在の活動状況について忌憚のない意見交換をさせていただきます。
今年は、診療報酬改定、薬剤師確保策、臨床研修の実装、概算要求など、病院薬剤師にとって強い追い風が吹く一年となりました。この追い風を確かな成果につなげるために、日病薬と都道府県病薬が一体となって取り組んでいきたいと強く願っております。
都道府県病院薬剤師会の皆さまのご協力なくして、これらの取組は成しえません。どうか引き続きのご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
最後に、都道府県病院薬剤師会のますますのご発展を祈念し、会長演述とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。