【令和7年度薬価中間年改定】大臣折衝後の薬価改定骨子案全文/最低薬価引き上げの詳細は今後検討

【令和7年度薬価中間年改定】大臣折衝後の薬価改定骨子案全文/最低薬価引き上げの詳細は今後検討

【2025.12.25配信】厚生労働省は12月25日、中医協薬価専門部会を開き、同日12月25日に大臣折衝で決定した内容を踏まえた薬価改定骨子案を示した。


 12月25日の大臣折衝を踏まえた内容は以下の通り。

■令和7年度薬価改定の骨子(案)

第1 基本的考え方


「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(平成 28 年 12 月 20 日内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)を踏まえ、今般決定された「令和7年度薬価改定について」(令和6年 12 月 20 日内閣官房長官、財務大臣、厚生労働大臣合意)及び「大臣折衝事項」(令和6年 12 月 25日厚生労働省)に基づき、以下のとおり令和7年度薬価改定を行うこととする。

○薬価制度の抜本改革に向けた基本方針(平成 28 年 12 月 20 日内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)(抄)
「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立し、国民が恩恵を受ける「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から、薬価制度の抜本改革に向け、PDCA を重視しつつ、以下のとおり取り組むものとする。
(2)市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品を対象に、毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行う。
 そのため、現在2年に1回行われている薬価調査に加え、その間の年においても、大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う。

○令和7年度薬価改定について(令和6年 12 月 20 日内閣官房長官、財務大臣、厚生労
働大臣合意)
 令和7年度薬価改定については、令和6年薬価調査に基づいて、以下のとおり実施する。
 経済財政運営と改革の基本方針 2024(令和6年6月 21 日閣議決定)において、2025年度薬価改定の在り方について検討するとされたことに基づき、平均乖離率が縮小するなど、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(平成 28 年 12 月 20 日内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)当時から状況が大きく変化していることや、現役世代等の保険料負担が上昇していることを踏まえ、令和3年度、令和5年度の薬価改定の慣例に固執することなく、必要な対応を行う。
 改定の対象品目については、国民負担軽減の観点はもとより、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保の要請にきめ細かく対応する観点から、品目ごとの性格に応じて対象範囲を設定することとする。
 具体的には、平均乖離率 5.2%を基準として、新薬創出等加算対象品目、後発医薬品についてはその 1.0 倍、新薬創出等加算対象品目以外の新薬はその 0.75 倍、長期収載品はその 0.5 倍、その他医薬品はその 1.0 倍をそれぞれ超える医薬品を改定対象とする。
 薬価改定基準の適用についても、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった基本的な考え方を踏まえた対応を行う。
 具体的には、創薬イノベーションの推進の観点から、追加承認品目等に対する加算を臨時的に実施する。また、安定供給確保が特に求められる医薬品に対して、臨時的に不採算品再算定を実施するとともに、最低薬価を引き上げることとする。併せて、今回の改定に伴い新薬創出等加算の累積額については控除する。

○大臣折衝事項(令和6年 12 月 25 日厚生労働省)(抜粋)
2.医薬品関係
(1)薬価改定
 令和7年度薬価改定については、「令和7年度薬価改定について」(令和6年 12 月20 日内閣官房長官、財務大臣、厚生労働大臣合意)に基づいて、以下の通り実施する。
 改定の対象品目については、国民負担の軽減はもとより、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保の要請にきめ細かく対応する観点から、品目ごとの性格に応じて、対象範囲を設定することとする。具体的には、平均乖離率 5.2%を基準として、新薬創出・適応外薬解消等促進加算(以下「新薬創出等加算」という。)対象品目、後発医薬品については、その 1.0 倍、新薬創出等加算対象品目以外の新薬はその 0.75 倍、長期収載品はその 0.5 倍、その他医薬品はその 1.0 倍をそれぞれ超える医薬品を改定対象とする。
 薬価改定基準の適用についても、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった基本的な考え方を踏まえ、令和7年度薬価改定において次の通りとする。
・ 後発医薬品等の価格帯集約、基礎的医薬品、最低薬価、及び新薬創出等加算については適用する。
・ 追加承認品目等に対する加算を臨時的に実施する。
・ 安定供給確保が特に求められる医薬品に対して、臨時的に不採算品再算定を実施するとともに、最低薬価を引き上げる。
・ 既収載品の外国平均価格調整については適用する。
・ 新薬創出等加算の累積額については控除(なお、新薬創出等加算対象品目等を比較薬にして算定された品目の取扱いも含む)する。
・ その他の既収載品の算定ルール(長期収載品の薬価の改定、再算定※)については、適用しない。※ただし、薬価改定の際以外の再算定を除く。
 このうち特に、今後の診療報酬改定のない年の薬価改定についても、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった要請についてバランスよく対応する中で、その在り方について検討することとし、その際には、長期収載品に係る内容については、後発医薬品の置換えの状況等について検証しつつ、さらなる長期収載品の薬価上の措置について検討する。また、診療報酬改定のある年にのみ適用されてきた市場拡大再算定についても、国民負担の軽減と創薬イノベーションの推進とのバランスを踏まえ検討する。これらの検討の状況について、令和7年末に中間的なフォローアップを実施し、その結果を公表する。
 この結果、令和7年度において、薬剤費 2,466 億円(国費 648 億円)の削減とする。

第2 具体的内容

1.対象品目及び改定方式
 改定の対象範囲については、国民負担軽減の観点はもとより、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保の要請にきめ細かく対応する観点から、次のとおり、品目ごとの性格に応じて対象範囲を設定する。
① 新薬のうち、新薬創出等加算の対象品目
平均乖離率(5.2%)の 1.0 倍(乖離率 5.2%)を超える品目を対象とする。
② 新薬のうち、新薬創出等加算の対象外品目
平均乖離率(5.2%)の 0.75 倍(乖離率 3.9%)を超える品目を対象とする。
③ 長期収載品
平均乖離率(5.2%)の 0.5 倍(乖離率 2.6%)を超える品目を対象とする。
④ 後発品
平均乖離率(5.2%)の 1.0 倍(乖離率 5.2%)を超える品目を対象とする。
⑤ その他
平均乖離率(5.2%)の 1.0 倍(乖離率 5.2%)を超える品目を対象とする。
 改定方式は、市場実勢価格加重平均値調整幅方式とし、具体的には、以下の算出式で算定した値を改定後薬価とする。
<算出式>
新薬価 ={医療機関・薬局への販売価格の加重平均値(税抜の市場実勢価格)} × {1+消費税率(地方消費税分含む)}+ 調整幅
ただし、改定前薬価(税込み)を上限とする。
※ 調整幅は、改定前薬価の 2/100 に相当する額

2.適用する算定ルール
令和7年度薬価改定において適用する算定ルールについては、以下のとおりとする。

(1)基礎的医薬品
※ 令和6年度改定の際に基礎的医薬品とされたものと組成及び剤形区分が同一である品目について適用する。
※ 乖離率の要件(全ての既収載品の平均乖離率以下)を満たさない品目については、対象としない。

(2)最低薬価
最低薬価を引き上げた上で適用する。
※ 引き上げた最低薬価を下回る価格の基礎的医薬品については、引き上げ後の最低薬価と同水準までその薬価を引き上げることとする。

(3)不採算品再算定
急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、医療上の必要性が特に高い品目を対象として不採算品再算定を臨時・特例的に適用する。
具体的な対象品目は、次のいずれかを満たす品目を基本とする。ただし、組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬の市場実勢価格の薬価に対する乖離率の平均が全ての既収載品の平均乖離率を超える品目(厚生労働大臣が増産要請を行った品目を除く)は対象外とする。
・基礎的医薬品とされたものと組成及び剤形区分が同一である品目
・安定確保医薬品のカテゴリ A 及び B に位置付けられている品目
・厚生労働大臣が増産要請(注)を行った品目
(注)2023 年 10 月 18 日、同年 11 月 7 日 感染症対症療法薬等の安定供給に向けた大臣要請を指す
これらの品目のうち、厚生労働大臣が増産要請を行った品目については、通常の不採算品再算定の取扱いの「製造販売に要する原価等が著しく上昇したと認められるもの等」における要件のうち、「(当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬がある場合には、全ての類似薬について該当する場合に限る。)」又は「(当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬(新規後発品として薬価収載されたものに限る。)がある場合には、当該全ての類似薬について該当する場合に限る。)」の規定を適用しない。また、基礎的医薬品とされたものと組成及び剤形区分が同一である品目及び安定確保医薬品のカテゴリ A 及び B に位置付けられている品目については、これらの規定を「(当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬(令和5年度及び令和6年度の薬価改定において不採算品再算定の対象となったものを除く。)がある場合には、全ての当該類似薬について該当する場合に限る。)」及び「(当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬(新規後発品として薬価収載されたもの(令和5年度及び令和6年度の薬価改定において不採算品再算定の対象となった品目を除く。)に限る。)がある場合には、全ての当該類似薬につい
て該当する場合に限る。)」と読み替えて適用する。

(4)新薬創出・適応外薬解消等促進加算(加算及び累積額控除)
創薬イノベーションの推進及び国民負担の軽減といった基本的な考え方を踏まえ、加算及び累積額控除(新薬創出等加算対象品目等を比較薬にして算定された品目の取扱いも含む)の両方を適用する。

(5)後発品等の価格帯
※ 改定の対象品目について、令和6年度改定時の価格帯集約の考え方を踏襲して適用する。ただし、組成、剤形区分及び規格が同一である既収載品群の価格帯の特例の適用条件「全ての既収載後発品の中で最も高い価格帯となるものであること」の規定については、「全ての既収載後発品(改定の対象範囲外の品目を含む。)の中で最も高い価格帯となるものであること」と読み替えて適用する。

(6)既収載品の外国平均価格調整
※ 令和6年度薬価制度改革を踏まえた考え方に基づいて適用する。

(7)既収載品の薬価改定時の加算
※ 令和6年度薬価制度改革を踏まえた考え方に基づいて適用する。

(8)長期収載品の薬価の改定、市場拡大再算定その他の既収載品の算定ルー
ルについて、令和7年度改定においては適用しない。

3.その他の取扱い
上記のほか、改定に係る運用上の取扱いについて、次のとおり取り扱うこ
ととする。
(1)規格間の価格逆転防止
組成、剤形区分及び製造販売業者が同一の品目の規格間で価格逆転が生じる際には、可能な限り価格の逆転が生じないよう、財政中立の範囲内で、改定の対象とならない規格を含め、価格を調整する。
(2)今年度薬価調査において、取引が確認されなかった品目類似する品目の乖離率等に基づき、改定の対象か否かを判定する。ただし、本年 10 月以降に薬価収載された品目は改定対象としない。
(3)「薬価改定」を区切りとして品目を選定する規定の取扱い
「薬価改定」を区切りとして品目を選定する次の規定において、令和7年度薬価改定は、当該規定でいう「薬価改定」には含めない。
・ 長期収載品の薬価の改定
・ 再算定
(4)薬価改定時の加算等の取扱い
令和 7 年度薬価改定においては、令和 5 年 11 月から令和 6 年 10 月までの間に小児又は希少疾病に係る効能又は効果が追加された品目等に限り、薬価改定時の加算の適用対象であるもの又は新薬創出等加算の要件に該当するものとする。

第3 その他
創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった基本的な考え方を踏まえ、これまでの薬価制度改革の検証も行いつつ、令和8年度薬価制度改革に向けて検討を行う。
以上

 なお、委員からは最低薬価引き上げの内容を聞く質問が出たが、事務局は「現下の物価の情勢等を考えつつ引き上げ幅について今後検討していきたい」と回答した。

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