【日本薬剤師会総会】会長演述全文「本会が長年提案してきた“リフィル処方箋”が導入」

【日本薬剤師会総会】会長演述全文「本会が長年提案してきた“リフィル処方箋”が導入」

【2022.06.27配信】日本薬剤師会は6月25・26日の両日に第100回定時総会を開いた。初日の25日には会長演述があり、山本信夫会長は「本会が長年提案してきた“リフィル処方箋” 」が導入されたと述べた。


 会長演述の全文は以下の通り。

■第100回定時総会 会長演述
日本薬剤師会会長 山本 信夫

 日本薬剤師会第100回定時総会の開催にあたり、一言申し述べさせて頂きます。

 各地で頻発する地震等の自然災害により被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。 また、 本年2月末、 突然にロシアの侵攻を受けた、ウクライナ国民の方々へのお見舞いとともに、 戦渦の中で医薬品供給にあたっている彼の国の薬剤師の方々に精一杯のエールを送り、速やかな戦禍の終息を願って止みません。

さて、2年ぶりに代議員の皆様と直接お目にかかり、会務の運営等に係る議論が出来る総会となりましたこと、とても嬉しく思っております。 2020年に我が国で初めて新型コロナウイルス感染症患者が確認されて以来、 既に2年半近くの時間が経過しましたが、明確な終息点が見えない毎日が続いてい
ます。 この間、各地域においては、 都道府県薬剤師会、地域薬剤師会の皆様が、 医師会 歯科医師会看護協会や行政当局と密接な連携のもと、新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場において、 接種前の問診やワクチンの希釈、シリンジへの充填作業、そして接種後の経過観察など、円滑な接種体
制の確保に尽力されました。 また、自宅等で療養を余儀なくされている地域の方々への医薬品提供体制を確保・維持いただきましたこと、さらに医療用抗原定性検査キットの提供に積極的に取り組んでいただきましたことに、 あらためて感謝申し上げます。 そして、 皆様の「有事にあっても医薬品の供給体制は薬剤師が守る」 という心意気に、医薬品を扱う職能団体に身を置く者として誇らしく思っています。

 我が国のコロナ禍における医療提供体制は、薬剤師のみならず医師・歯科医師・看護師をはじめ、多くの医療関連職種の昼夜を分かたぬ努力によって維持されてきました。 しかし、その間に薬局が受けたダメージは甚大なもので、その回復を目指すとともに、 有事にあっても安定した医療提供体制が維持できるよう、官民挙げて不断の準備を進めることが喫緊の課題と思います。

 また、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に対応するため、我が国はもとより諸外国も挙って、ワクチンや治療薬の開発に取り組んできました。残念ながら我が国の医薬品産業はその開発力等の面で、欧米の製薬企業の後塵を拝することとなったことはとても残念であり、製薬産業を我が国のリーディングカンパニーとする施策の不十分さを期せずして露呈することとなりました。有事にあっても迅速な開発力を持てる製薬産業育成のために、 産官学が一体となっての長期的視野に立った政策が求められるものと思います。

 加えて、 2019年末に発覚した後発医薬品メーカーの不祥事に端を発した後発医薬品を中心とする医薬品の供給不足は、2020年春には燎原の火のごとく次々と他の後発医薬品メーカーの製造手順の違反やそれに伴う回収事案として拡大しました。 それにより、著しい後発医薬品の供給不足を惹起し、瞬く間にその影響は先発医薬品の供給不足まで引き起こす結果となりました。 こうした医薬品全般にわたる供給不足は、 コロナ禍で感染防御や感染者の治療に忙殺される医療機関・薬局に 「必要な医薬品の入手確保に難渋する」 という新たな負担を強いるばかりか、 患者に対する適切な治療の維持を脅かす「深刻な事態と受け止めています。 現在もなお、 後発医薬品を中心に相当数の供給不足が続いており、 製造・流通・販売の全ての分野で、こうした事態を再び起こさないよう早急な対策を講ずることが喫緊の課題と思います。

 一方、こうした中で実施された 2022年診療報酬改定では、新型コロナウイルス感染防止対策で財政上も厳しさを増している国の状況を反映して、当初から技術料・薬価ともに引き下げ基調での議論が進んでいました。 しかし、2020 年改定の規模に比べれば少ないものの、医科・歯科・調剤の技術料比率が守られた、 診療報酬本体で 0.23% の引き上げ改定とすることが出来ました。加えて、 本会が長年提案してきた 「リフィル処方箋」 の導入が盛り込まれる一方、これも幾度となく改善の指摘を受けていた調剤料について 2015年に公表された 「患者のための薬局ビジョン」並びに2019年の薬機法等改正の趣旨を踏まえて、薬剤師が実施する対物中心の業務と対人中心の業務が、 薬剤調製料と調剤管理料による評価に整理され、長年使い慣れた調剤報酬も半世紀を過ぎて新たな概念に基づく体系へと変革したものと捉えています。

 さらに、これまで適切な対処が出来ずにいた「いわゆる敷地内薬局」 に対しても、さらなる抑制措置が診療報酬・調剤報酬の両面から講じられました。

 また、今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックを教訓に、有事における薬局・薬剤師の地域貢献についても、限定的な加算ではありますが調剤報酬上の評価が導入されました。超高齢社会のスタートとなる2025年を目前に、 従来型の調剤対応からより患者を個別化した薬物治療の確保と、地域医療提供体制の維持等に関わる業務について評価するという、地域包括ケアシステムの構築に向けて大きく業務の転換を求める改定と言っても良いと思います。

 一方、 様々な分野で進められる規制改革の圧力は、薬剤師・薬局の分野でもその強さを一層増しており、我々の存在そのものに関わるような無理難題を主張しています。 曰く、「調剤を当該薬局の薬剤師以外の者に任せることが出来るよう規制を緩和すべき」 あるいは 「販売許可のない店舗でも医薬品の貯蔵・陳列・販売授与をできるよう規制を緩和せよ」 といった、 薬剤師の業務を根底から否定するような要求が繰り返し行われています。 こうした、 薬剤師の根幹や存在意義に関わる課題について、 その職につく専門家の意見は一顧だにせず、 「既得権を主張する守旧派」と一刀両断にする姿勢からは、単なる経済合理性しか見えてきません。 こうした暴論とも言える議論に対抗するためにも、我が国の国民の方々の医薬品安全は 「薬剤師が全身全霊をもって守り抜く」 気概と覚悟が求められていると思います。

 また、グローバルな視野に立って、 我が国が諸外国に遅れることなく社会生活にICT技術を適用することを目指し、国はあらゆる分野での DX を推進しています。 薬剤師・薬局業務も例外ではなく、 電子お薬手帳の更なる活用や、 令和5年初頭からスタート予定の電子処方箋の運用に対応できるシス
テムの開発や薬局への実装が開始されました。 電子的手段によるデータ交換は、その量やスピードの面でアナログでの業務に比べて優れているとの評価もありますが、その反面、医療の品質を考えると 「DX が全て」 とすることには些かの躊躇を禁じえません。 効果的でかつ患者・住民に寄り添った地域保健医療情報ネットワークを構築する上で、 新たな技術の導入に対して徒に拒否する立場ではありませんが、その導入が患者・住民にとってより良い効果をもたらすことができる仕組みとなるよう、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 そのほか、昨年に引き続き、本年5月には 「日本薬剤師会政策提言 2022」を公表しました。 この政策提言は、これまで述べてきた短期的な課題や中長期的課題に対して、 本会として取り組むべき姿勢を示したものであります。

 With コロナから After コロナ、 そして Beyond the コロナの時代を見据えて、令和の薬剤師・薬局の在り様について模索しつつ、この国の医薬品安全と医療提供体制の確保に向けて会務を進めて参る所存であることを申し上げ、会長演述といたします。

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