【日薬】ロキソニンのリスク区分変更「妥当とは考えらない」/パブコメに意見提出

【日薬】ロキソニンのリスク区分変更「妥当とは考えらない」/パブコメに意見提出

【2026.10.01配信】日本薬剤師会はロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)のリスク区分を指定第二類医薬品へ変更する省令案に対して「妥当とは考えられない」との意見を提出した。1日の定例会見で明かにした。


ロキソニンのリスク「得られた情報を総合して判断する薬学的な専門性が必要」

 提出した意見書では、ロキソプロフェンを第一類医薬品から指定第二類医薬品へ変更することについて、以下の点から「現在の指定第二類医薬品販売体制において妥当とは考えられない」とした。

 セルフケア・セルフメディケーションを適切に推進し、国民の医薬品への適切なアクセスを確保することは重要であるが、それは医薬品によるリスクが適切に管理され、国民の安全が確保されることを前提とすべきである。
 ロキソプロフェンは広く使用されている解熱鎮痛薬である一方、その安全な使用に当たっては、単に用法・用量や禁忌事項を確認するだけではなく、患者の年齢、症状、基礎疾患、脱水の有無、併用薬、他の NSAIDSとの重複使用、使用期間・頻度等を総合的に評価する必要がある医薬品である。
 NSAIDSでは、消化管障害等に加え、急性腎障害、アナフィラキシー、Stevens-Johnson 症候群(SJS)、中毒性表皮壊死融解症(TEN)等の重篤な副作用が生じ得る。特に急性腎障害については、脱水、腎機能低下、高齢等の患者背景に加え、ACE 阻害薬又はARB、利尿薬等との併用によってリスクが高まる場合があり、いわゆる「Triple Whammy」に該当するような併用についても注意が必要である。
 これらのリスクは、購入者自身が必ずしも認識できるものではなく、また、あらかじめ定められた確認項目に形式的に該当するか否かだけでは、購入者自身が安全に使用できるかを適切に判断することが難しい場合がある。したがって、患者背景、併用薬、症状等を踏まえ、得られた情報を総合して判断する薬学的な専門性が必要となる。
 また、SJS、TEN 等の重篤な副作用は発生頻度が低いとしても、一旦発症すれば生命又は予後に重大な影響を及ぼし得る。医薬品のリスクについては、副作用の発生頻度のみではなく、健康被害の重篤性、患者ごとのリスク因子、早期発見・受診勧奨の必要性及び万一健康被害が生じた場合まで含めた安全管理体制の観点から、総合的に評価すべきである。

 また、過去のNSAIDS のリスク区分検討時と現在とでは、高齢化・多疾患併存に加え、多剤併用、販売形態の多様化等、一般用医薬品を取り巻く環境が変化しており、2024年の心血管リスク等に関する使用上の注意の改訂など、安全性に関する知見も蓄積されている。したがって、他の指定第二類医薬品と比較して安全性上の大きな差が認められないことのみをもって判断するのではなく、これらの変化を十分に踏まえ、ロキソプロフェンのリスク区分を判断する必要がある。

 指定第二類医薬品は、第二類医薬品のうち「特別の注意を要するもの」として位置付けられている。ロキンプロフェンを指定第二類医薬品とするのであれば、この「特別の注意」が販売現場において実質的に機能するよう、その内容と運用を明確化・厳格化する必要がある。

 ロキソプロフェンについて、その担保が十分でないままには、第一類医薬品から指定第二類医薬品へ変更することは、妥当とは言えない。

薬剤師が勤務していることを原則とすることを求める

 ◎ 仮に指定第二類医薬品へ変更する場合の安全確保について
 安全対策調査会で取りまとめられた対応については、当然実施すべきである。しかし、適切な確認や情報提供等の安全確保策を講じたとしても、OTC医薬品のロキソプロフェンに対する健康被害対策は十分とは言えない。安全対策調査会で取りまとめられた対応に加えて国民の安全を確保するためには、注意を要する医薬品の販売には薬剤師が専門的判断が行える販売体制を販売業者が確保するべきと考える。

 医薬品販売は単なる物品販売ではなく、高度な薬学的評価と責任を伴う行為が含まれるため薬剤師という国家資格が付託されている。第二類医薬品を登録販売者が販売を担う場合でも、専門的判断を要する局面では薬剤師の関与と責任体制が不可である。

 国民の安全を最優先に考えれば、少なくともロキソプロフェンについては、薬剤師が勤務し、必要時にその専門的判断及び責任の下で対応できる店舗において販売することが必要であると考える。

 具体的には、登録販売者が、購入者の症状、年齢、基礎疾患、脱水の有無、併用薬、他のNSAIDS との重複使用、使用期間・頻度等について一的な確認を行い、あらかじめ定められた基準に該当する場合その他専門的判断を要すると考えられる場合には、その場で薬剤師へ確実に引き継ぐ仕組みとすべきである。
 
 薬剤師は、引き継がれた情報を踏まえて薬学的評価を行い、販売の可否、他剤の選択、使用中止、受診勧奨等について判断する。また、その専門的判断及びそれに基づく対応について専門職として責任を担うとともに、確認した情報、判断内容及び対応について必要な範囲で記録し、判断の過程を後から確認できる体制を確保することが必要である。

 また、一次確認の結果、専門的判断を要する場合に、薬剤師による対応を確保できない場合には、そのまま販売に進むことなく、販売を見合わせ、必要に応じて医療機関への受診勧奨その他の適切な対応を行うものとすべきである。

 以上のように、「購入者からの情報提供一登録販売者による一次確認一薬剤師による専門的判断と責任ある対応」という段階的な安全な販売体制を構築するとともに、その前提として、ロキソプロフェンを販売する店舗には薬剤師が勤務していることを原則とすることを求める。

⚪︎販売従事者に対する研修について
 ロキソプロフェンを指定第二類医薬品へ変更する場合には、前項に示した安全な販売体制を実効あるものとするため、販売に従事する者が、ロキンプロフェンを含むNSAIDSのリスクを十分に理解し、購入者から必要な情報を適切に把握するとともに、薬剤師による専門的判断を要する場合を確実に識別できるよう、研修体制を充実・強化することが不可である。

 特に登録販売者に対する研修については、NSAIDSの薬理作用及び副作用、患者背景、基礎疾患、脱水、併用薬、他のNSAIDSとの重複使用、使用期間・頻度、受診勧奨を要する症候等に加え、どのような場合に薬剤師による専門的判断が必要となるのかを理解し、適切に一次確認を行うことができる内容とすべきである。

 また、登録販売者に対する研修の質の担保及び全国的な一貫性を確保するためには、研修を個々の実施主体の取組のみに委ねるのではなく、標準的な研修内容、教材、確認事項等の整備が必須であり、薬剤師の関与のもとで策定・実施されるべきである。

⚪︎製造販売業者による適正使用・安全性情報の提供及び安全確保策の実効性について

 製造販売業者に対しては、区分変更後も購入者への文書による情報提供を確実に継続するとともに、購入者及び販売従事者が適正使用に必要な判断を行えるよう、適正使用情報及び安全性情報に加え、薬剤師への相談が必要となる場合や医療機関への受診が必要となる目安等について、分かりやすく情報提供することを求めるべきである。また、指定第二類医薬品については、禁忌の確認及び使用について薬剤師又は登録販売者に相談することを勧める旨を購入者が確実に認識できるようにするとともに、適正使用や医療機関への受診の必要性を判断できるよう、外箱、添付文書その他の資材等を通じて分かりやすく情報提供することが重要である。

 また、製造販売業者による文書や資材の提供のみをもって安全確保策が完結するものではない。販売従事者が購入者から確認すべき事項や、薬剤師による専門的判断が必要となる場合を適切に把握できるよう、販売現場で活用できる情報を提供する必要がある。

 さらに、これらの安全確保策については、単なる周知、協力依頼又は自主的取組のみに依存することなく、実際の販売現場において確実に機能するよう、国及び製造販売業者がそれぞれの責任において、その実効性を継続的に確保することを求める。なお、この安全確保体制は、対面販売、インターネット販売等の販売形態にかかわらず、その実効性が確保されるものとすべきである。

⚪︎購入者・使用者への適切な情報提供、支援及びOTC医薬品提供に係る環境整備について

 安全なセルフメディケーションを実現するためには、購入者自身が、症状、既往歴、併用薬、使用状況等について、可能な限り正確な情報を販売者に伝えることが重要である。そのため、購入者の自己責任のみに帰することなく、国、自治体、製造販売業者、販売者及び関係職能団体等が、それぞれの役割に応じて、購入者が必要な情報を適切に提供できる環境を整えるとともに、適正使用に必要な情報提供、相談環境、薬剤師による専門的判断及び必要な医療機関への接続を一体として支援する環境を整備すべきである。

 同時に、セルフケア・セルフメディケーションを適切に推進するためには、生活者が必要な OTC医薬品に適切にアクセスできる環境を確保することも重要である。すべての薬局がNSAIDsを含む OTC医薬品を取り扱い、薬師による専門的な相談・判断を通じて、地域住民が安全かつ適切にOTC医薬品を選択・使用できる環境の整備を推進していく必要がある。

⚪︎区分変更後の検証及び見直しについて
 仮にリスク区分を変更する場合には、区分変更をもって安全性の評価を終了するのではなく、変更後の安全性及び安全確保策の実効性を雑織的に検証し、その結果をリスク区分の見直しにつなげる仕組みをあらかじめ確保すべきである。

 具体的には、区分変更後の副作用・健康被害の発生状況、不適切使用・頻回使用、重複使用、販売実態、前述の安全確保体制の実施状況、薬剤師による専門的判所や受診勧奨につながった事例等について、厚生労働省の責任において一定期間重点的に把握・検証し、その結果を公表するとともに、リスク区分の妥当性を改めて評価すべきである。

 特に、区分変更後に新たな安全性上の懸念が認められた場合、重大な健康被害が認められた場合、又は講じた安全確保策が販売現場において十分に機能していないことが確認された場合には、指定第二類医薬品であることを前提として追加的な安全確保策を講ずることにとどまらず、第一類医薬品への再引き上げを含め、速やかにリスク区分そのものを見直しすることを強く求める。

⚪︎今後検討すべき課題

 現行の医薬品の販売制度では、第一類医薬品と第二類医薬品との間で、販売時の情報提供のあり方や販売に対応する専門家の位置付け等に大きな違いがある。

 一方、医薬品のリスクは一律ではなく、指定第二類医薬品の中にも、その特性、患者背景、併用薬等によっては、薬剤師による専門的判断を必要とするものが存在し得る。

 今回のロキソプロフェンのリスク区分変更に係る検討とは別に、今後の制度的な課題として、医薬品のリスクの程度及び特性に応じて、誰が、どのような情報を確認し、どのような専門的判断と責任の下で販売するのかという観点から、リスク区分と販売方法のあり方について検討する必要がある。

 国民の安全なセルフメディケーションを確保する観点から、今後、現行制度の運用による対応にとどまらず、次期薬機法改正も視野に入れ、医薬品のリスクに応じた販売制度のあり方について検討を進めるべきであると考える。

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