【中医協】分割調剤の見直しに医師会は改めて反対表明/支払い側は患者への周知拡大方針

【中医協】分割調剤の見直しに医師会は改めて反対表明/支払い側は患者への周知拡大方針

【2021.12.08配信】厚生労働省は12月8日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。その中で分割調剤の仕組みの見直しが取り上げられた。分割調剤を利用した患者の不満を聞いた調査では「不満はない」との回答が最も多い一方、薬局における分割調剤のデメリットとしては「手続きが煩雑」が最多であり、事務局は「分割指示に係る処方箋様式のあり方についてどのように考えるか」と論点を示した。こうしたテーマに関し、日本医師会は前回の議論同様、「長期処方を助長させるもの」として「改めて反対」と意見を述べた。


日本薬剤師会・有澤氏「3枚連記ではなく、1枚の処方箋様式に」

 日本医師会常任理事の城守国斗氏は、「夏の議論での主張の繰り返しになるが」と前置きした上で、「長期処方は、残薬リスクや体調の変化に気づきにくくなったり病状の変化を見逃すなど、患者さんの治療と保険財政に対する弊害が懸念される。それにもかかわらず長期処方を助長させる議論には日本医師会としては明確に反対をさせていただきたい」と述べた。
 その上で、「むしろ分割調剤の対象から除外すべきリスクの高い薬剤等についての議論を深めるべき。処方箋様式については、様式の見直しではなく30日を超える長期投与が可能であると判断した理由や病状が変化した場合の対応方法を処方箋に記載して、患者さんや薬局にお伝えをするということなども検討してはどうか」とした。

 日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は、「薬局における分割調剤のメリットとしては『患者の服薬管理を継続して行いやすい』、『患者の状態等を確認しやすい』など、重要な役割を果たしていることが示されている。患者における分割調剤の良いと思わなかった点としては『特に不満はない』という回答が最も多かった。しかし、薬局における分割調剤のデメリットとしては、『手続きが煩雑』ということが一番の理由となっており、現場の話を聞くと、処方箋様式が負担となっているところ。分割調剤が現場で運用しやすくなるよう、様式変更をすべき。例えばトレーシングレポートの利活用を前提に3枚連記ではなく、1枚の処方箋様式にし、一定期間内の処方箋の反復利用を可能にすることがよいと考える。最も大切なことは分割調剤を必要と考える患者に対して、医療機関と薬局、医師と薬剤師の適切かつ確実な連携の下で実施することが必要」とした。

 全国健康保険協会(協会けんぽ)理事長の安藤伸樹氏は、「長期処方の割合の増加により患者の残薬確認や服薬管理の必要性がある処方も増えているものと思う。しかし、分割調剤の算定回数はいまだ限定的だ。患者側からは分割調剤について特に不満はないという回答が多く、医療機関側で活用が進んでいないということだと思う。特に手続きが煩雑だから、やり方がわからないからという回答が一定数ある中、手続き的な課題や制度の周知についての取り組みを含め改善の検討をしてもよいのではないか」と述べた。

 日本労働組合総連合会総合政策推進局長の佐保昌一氏は、「分割調剤に関して、残薬確認や飲み忘れのチェックのほか、認知症状や精神症状の早期発見にもつながると考える。患者や被保険者への周知・啓発を進め、利用を広めることが必要だ」と述べた。

 日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理の眞田享氏は分割調剤について、「利用した患者の半数が特に不満はないとしている。薬局や患者においても分割調剤のメリットを感じており普及の余地があるのではないか。こうした点からも分割調剤については普及促進に向けてより使いやすくなる方向で見直しを検討していくことが 望ましい。また患者の認知が低く、医療機関でも分割指示を行っていない理由として3割近くがやり方がわからないと回答している状況も改善していくことが必要ではないか」と述べた。

編集部コメント/31日以上の長期処方増加の実態をどう考えるのか

 長期処方の助長になるとの反対意見が述べられた分割調剤の見直しだが、そもそも現状で31日以上の長期処方が増えているのが実態であり、その対策としても「30日以内の再診」や「他の医療機関の紹介」などの対応は打たれている。その対策の1つとして、分割調剤が位置付けられているに過ぎない。
 3枚連記から1枚形式に処方箋様式を改め、利用しやすい環境をつくるのは許容の範囲内ではないだろうか。

 骨太方針でも処方箋の反復利用の検討は明示されており、患者の負担軽減の観点からも施策の進展を期待したい。利用が促進されれば大病院には3ヶ月に一度しか行かなくとも、身近な薬局で体調の変化や服薬コンプライアンスの状況をみてもらえる環境になるはずだ。それは治療効果の向上にもつながるのではないだろうか。

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