【オンライン診療検討会】初診からに「適さない症状・医薬品」を検討/活用基本方針を策定へ

【オンライン診療検討会】初診からに「適さない症状・医薬品」を検討/活用基本方針を策定へ

【2021.07.01配信】厚生労働省は6月30日、「第16回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開いた。規制改革実施計画で初診からの解禁が記載されたことを受け、初診時の手順詳細を詰める方針。日本医学会連合からは外傷や急性期症状などの「オンライン診療の初診に適さない症状」をまとめた提言が公表されており、これらを参考に今後、「初診からのオンライン診療に適さない症状・医薬品等」の検討を進める考え。「オンライン診療の更なる活用に向けた基本方針の策定」を進める。


検討会委員に日本薬剤師会は含まれていない

 規制改革実施計画では、オンライン診療の初診解禁については、かかりつけ医を原則とするとしつつも、かかりつけ医以外であっても過去の診療録の確認など、患者の状態が把握できる場合にも認める方針を示していた。

 さらには、過去に診療記録がない健康な人の場合、現在の状況等が「やりとり」の中で確認できる場合にも認めるとしていた。
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000799588.pdf

 こうした実施計画を受けて、同検討会では初診での条件をさらに詰める方針。例えば、過去の診療情報等を確認できる「医学的情報」とは何を指すのか。さらには、「やりとり」には、どのような項目が必要かを議論する必要がある。

 また、同検討会の開催に先駆けて、日本医学会連合から「オンライン診療の初診に関する提⾔」が公表されており、この中で、例えば外傷や急性期症状などの「オンライン診療の初診に適さない症状」が診療科ごとに挙げられている。
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000799589.pdf
 検討会では、この提言を取り上げるべきとの意見も出されており、こうした専門家からの意見を参考に議論が進められる方向。
 「初診からのオンライン診療に適さない症状・医薬品等」を検討するとした。

 実施計画に記載の「オンライン診療の更なる活用に向けた基本方針の策定」を進める。

 検討会ではルールが守られていないケースへの対応を求める声も強く、自費診療での不適切事例、研修未修了医師による実施、美容医療での不適切な広告等への行政の対応についても検討される予定。


 これら不適切事例の対応の一環としても「処方できる医薬品に一定の制限を加える必要はあるのではないか」との意見があり、「初診に適さない医薬品」の整理も進みそうだ。

 前出の日本医学会連合の提言の中では、「オンライン診療の初診での投与について⼗分な検討が必要な薬剤」もまとめられており、以下を列記している。

<病原微⽣物に対する薬剤>
・ 抗菌薬
・ 抗真菌薬
・ 抗ウイルス薬と抗ウイルス療法薬
・ 抗寄⽣⾍薬
・ 予防接種⽤薬
<抗悪性腫瘍薬>
全て
<炎症・免疫・アレルギーに対する薬>
・ 副腎ステロイド薬
・ 鎮痛薬(プレガバリン:リリカ、ミロガバリンベシル酸塩:タリージェは処⽅しない。他は可とする)
・ 抗アレルギー薬(薬局にて販売されている抗アレルギー剤は可とする)
・ 免疫調節薬
・ 免疫抑制薬
・ 抗リウマチ薬
・ ⽣物学的製剤
・ JAK 阻害薬
・ 標準化スギ花粉エキス
・ 標準化スギ花粉エキス
・ ダニエキス
<代謝系に作⽤する薬>
・ 糖尿病治療薬
・ 脂質異常症(⾼脂⾎症)治療薬(トコフェロールニコチン酸エステル:ユベラ N は可とする)
・ 痛⾵・⾼尿酸⾎症治療薬
<内分泌系薬剤>
・ 全てのホルモン製剤(緊急避妊薬(レボノルゲストレル:ノルレボ)は性交後72時間以内に服⽤しなければならないため、状況に応じてオンラインでの初診診療の適応となりうる)
<ビタミン製剤、輸液・栄養製剤>
・ 輸液・栄養製剤
<⾎液製剤、⾎液系に作⽤する薬剤>
・ ⾎液製剤
・ 造⾎剤
・ ⽌⾎剤(トラネキサム酸:トランサミンは可とする)
・ 抗⾎栓薬
<循環器系に作⽤する薬剤>
・ 抗不整脈薬
・ ジギタリス製剤
・ アゾセミド
<呼吸器系に作⽤する薬剤>
・ 気管⽀喘息治療薬・COPD 治療薬
・ 気管⽀喘息治療薬・COPD 治療薬を含む吸⼊薬
・ (但し、ホクナリンテープ(ツロブテロール貼付剤)は可能:⼩児科との協議も必要)
・ 呼吸障害改善薬:呼吸抑制拮抗薬:⿇薬拮抗薬・呼吸中枢刺激薬
・ ⿇薬系の鎮咳薬
・ 抗線維化薬
<消化器系に作⽤する薬剤>
・ 肝疾患治療薬
・ 胆道疾患治療薬
・ 膵疾患治療薬
<神経系に作⽤する薬剤>
・ ⿇薬類
・ パーキンソン病治療薬
・ 脳卒中治療薬(脳梗塞治療薬)
・ 神経難病治療薬(⾃律神経作⽤薬)
・ ⽚頭痛薬
・ 筋弛緩薬(アロフトやミオナールのような中枢性筋弛緩薬は可とする)
<腎・泌尿器系薬剤>
・ 頻尿・過活動膀胱治療薬のうち抗コリン薬
<眼科系薬剤>
・ 副腎⽪質ステロイド(点眼)
・ 散瞳薬(アトロピン点眼液、トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩点眼液
など)
・ 抗緑内障薬
・ 抗微⽣物薬(点眼)
<⽿⿐咽喉科系薬剤>
・ 副腎⽪質ステロイド(点⿐)
・ 抗微⽣物薬(⽿科⽤)
・ ⾆下免疫初回(シダキュア・ミティキュア・アシテア初回量)
<⽪膚科系薬剤>
・ ステロイド外⽤薬(very strong 以上)
・ アトピー性⽪膚炎治療薬
・ ⽩斑治療薬
・ ⾓化症・乾癬治療薬(単なる「⾓化症治療薬」は含まない)
・ ハンセン病治療薬
・ その他(フェノトリン、イミキモド、プロプラノロール塩酸塩、ソフピロ
ニウム臭化物)
<精神系薬剤>
・ 向精神薬(厚⽣労働省が定めた本件に関する講義を受講した医師及び精
神保健指定医もしくは精神科専⾨医は処⽅可)
・ クロザリル
・ コンサータ
・ ビバンセ
・ モディオダール
・ リタリン
・ ⿇薬及び向精神薬取締法に関するベンゾジアゼピンを含めた薬剤


 日本医学会連合では、これらのリストに関して、「⼀律に初診処⽅不可とすることを⽬的とするものではなく、担当医は個々の患者さんの状態によって柔軟に対応する必要がある」としている。

 なお、同検討会の委員に日本薬剤師会は含まれていない。

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