賃上げ、管理薬剤師の対象化を
日本保険薬局協会が公表した見解は以下の通り。
■「骨太方針 2026 等を踏まえた薬局・薬剤師政策に関する当協会の考え方」
令和 8 年 7 月 21 日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針 2026」は、医療・介護等の物価・賃金への対応、「攻めの予防医療」の推進、薬局機能・薬剤師の役割強化を掲げています。同月 7 日に自由民主党・日本維新の会が取りまとめた「社会保障改革項目に関する具体的な骨子」は、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」)の機能・委員構成の見直しを示しています。
全国の薬局は、医薬品の提供、在宅医療、健康相談、疾病の早期発見、受診勧奨等を通じて、地域住民の健康と生活を支える地域医療インフラの一翼を担います。その機能を支える社会保障財源を安定的に確保し、消費税減税等を行う場合も、社会保障関係費の削減や医療提供体制の縮小につながらないよう、代替財源を確保すべきです。
また、薬局の配置・機能の検討では、集約化を一律の前提とせず、所在地、医療機関との位置関係、規模、処方箋集中率等の外形的指標だけで判断せず、地域で担う機能・実績、患者・地域住民への貢献を踏まえるべきです。安全性と調剤責任を確保し、薬局機能の充実と薬剤師業務の質・生産性の向上につながる制度改革を進める必要があります。
秋の臨時国会での議論を見据え、当協会の考え方を以下のとおり示します。
記
1 薬局経営の安定化に向けた賃上げ・物価高騰対応及び薬局機能の適正評価
薬局では、人件費、物件費(調剤資材費、光熱費、システム関連費等)の上昇が続いています。経営実態を速やかに把握し、令和 9 年 6 月に予定される調剤ベースアップ評価料(4 点から 8 点)と調剤物価対応料(1 点から 2 点)の引上げを着実に実施すべきです。さらに、経済・物価の動向が令和 8 年度改定時の見通しから大きく変動し、薬局経営に支障が生じる場合は、骨太方針 2026 に示された追加調整の方針を踏まえ、令和 9 年度予算編成過程で調剤報酬上の必要な上乗せ措置を求めます。在宅医療、服薬フォローアップ、健康相談、受診勧奨等の実績と、これらを支える人的・物的コストを、調剤報酬で適正に評価すべきです。
また、現行の調剤ベースアップ評価料は、管理薬剤師を一律に対象外としています。しかし、薬機法上の薬局の管理者であることだけで、労働基準法上の管理監督者に該当するものではありません。薬局開設者に雇用され、調剤や患者対応に従事する管理薬剤師を対象に含め、必要な財源を確保すべきと考えます。
予防接種、薬局・薬剤師が接種の実施者として参画することを見据え、接種後のフォローアップで積極的に活用を
2 「攻めの予防医療」における薬局・薬剤師の位置付け
骨太方針 2026 が薬局・薬剤師の役割強化を掲げる一方、厚生労働省の U.E.N.O.Plan には、その役割が明示されていません。
当協会は、熱中症予防、血圧測定の啓発、健康相談会等に取り組んできました。全国の薬局ネットワークを生かし、薬局を地域住民の身近な健康支援拠点、薬剤師を健康に関する啓発、測定、受診勧奨、フォローアップを担う専門職として、今後の施策に明確に位置付ける必要があります。
あわせて、予防接種では、薬局・薬剤師による接種勧奨、情報提供、接種後のフォローアップを積極的に活用すべきです。将来、薬剤師が接種の実施者として参画することを見据え、研修体制、医師との連携、安全性の確保、法制度上の課題を具体的に検討する必要があります。
3 社会保障審議会の関係部会及び中医協への保険薬局事業者を代表する委員の参画
日本の薬物治療を担う一員として、海外で承認された新薬が国内で開発されない「ドラッグロス」により、患者の治療の選択肢が限られる現状と、将来の薬物治療への影響を強く懸念しています。GCP 省令(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)の改正は、分散型治験を支える「治験支援薬局」を位置付けています。保険薬局事業者は、薬局ネットワークと人員・設備を生かし、個人情報を保護しながら、治験実施計画書に沿った治験薬の管理・交付と医療機関等との情報連携により、患者の安全な治験参加・継続を支え、創薬機能の強化に貢献したいと考えています。また、厚生労働省の「ヘルスケア AX・DX 推進本部」の方針を踏まえ、AI・デジタル技術への投資・導入・運用で生産性を高め、患者支援や予防・健康相談、治験支援に充てる時間を生み出したいと考えています。
保険薬局は、創薬の成果を患者に届け、適正使用につなげる医薬品サプライチェーンの最終段階を担う地域の医薬品提供拠点です。薬剤師の薬学的管理・患者支援に加え、人員・設備・DX 等への投資と薬局運営を担い、薬局機能を維持・強化する事業者の視点も、制度設計に反映することが重要です。
両党の骨子は、令和 8 年度末までに社会保険医療協議会法の改正を含め、産業界の法令上の位置付けを明確にする結論を得るとしています。その検討では、「製薬、医療機器及び卸等」の「等」に保険薬局事業者を明確に位置付けることを希望します。あわせて、診療報酬改定の基本方針を策定する社会保障審議会の医療保険部会・医療部会と、点数・算定要件を審議する中医協に、チェーン薬局を含む保険薬局事業者の代表が参画し、制度設計に薬局の機能・運営実態を反映できる体制が必要と考えます。
当協会は、患者・地域住民の利益に資する薬局機能と医薬品提供体制の維持・強化に向け、関係者との対話を重ね、政策の検討・実施に積極的に関わってまいります。
以上