【日本総研レポート】「社会保険料負担軽減の焦点は医療保険制度改革」/成瀬道紀氏

【日本総研レポート】「社会保険料負担軽減の焦点は医療保険制度改革」/成瀬道紀氏

【2026.08.18配信】日本総研は8月12日、経済・政策レポート「社会保険料負担軽減の焦点は医療保険制度改革」を公表した。執筆は成瀬道紀氏。レポートでは骨太の方針に現役世代の社会保険料率引き下げが明記されたこと触れ、医療保険料率をどこまで引き下げられるかが焦点となると指摘。医療費への税投入増加を展望しにくい財政環境だとし、OTC類似薬など患者自己負担の増加の政策がとられているものの大きな財政効果は見込みにくいとし、医療の必要性に応じた給付のメリハリや供給側における効率的な医療サービス提供を促す改革が求められるとしている。


骨太の方針に現役世代の社会保険料率引き下げが明記

 レポートでは骨太の方針に現役世代の社会保険料率引き下げが明記されたことを紹介。
 本年7月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針)に、現役世代の社会保険料率を引き下げていく方針が明記された。社会保険料は大きく分けて、年金・医療・介護があり、今後、現役世代の人口が急減し、団塊の世代が要介護状態になりやすい80歳代に差し掛かっていくことを踏まえると、年金と介護の保険料率引き下げは難しい状況であるとしている。そのため、レポートでは社会保険料率の引き下げに向けては、医療保険料率をどこまで引き下げられるかが焦点となると指摘。
 医療費は、医療保険料、税、患者自己負担の三つの財源で賄われるため、医療保険料率を抑制する手段は、①医療費への税投入の増加、②患者自己負担の増加、③医療費そのものの抑制、の3つに整理できるとした。

医療費への税投入増加を展望しにくい財政環境

 その上で、レポートではそれぞれの状況について考察。
 まず、医療費への税投入の増加は、現在のところ政府が医療保険料抑制策の主軸に据えようとする姿勢はうかがえないとした。むしろ、8月に入り、社会保障の重要な財源である消費税に関して、食料品の税率を2027年4月から2年間暫定的に8%から1%に引き下げる方針を閣議決定するなど、医療費への税投入増加を展望しにくい財政環境となっていると分析。もっとも、本来、再分配は賃金への依存が大きい保険料ではなく、個人の負担能力をより反映しやすい税が担うべき役割であるとし、そもそも、政府が国民受けの悪い増税を避け、財政的に苦しい高齢者医療への支援などの再分配に現役世代の医療保険料を用いてきたことが、保険料負担の重さの大きな要因であると指摘。中長期的には、リスクへの備えは保険料、再分配は税という基本的な役割分担のもとに、増税に正面から向き合い、制度の再構築が求められると訴えた。

「OTC類似薬」など患者負担増加

 次に、患者自己負担の増加については、政府はすでに大きく2つの施策を決定していると紹介。1つは、成分や効能が市販薬(OTC医薬品)と似ているにもかかわらず保険給付の対象となっているOTC類似薬の一部について、2027年3月から患者への追加負担を求めること。もう1つは、高額療養費制度の自己負担限度額を2026年8月から段階的に引き上げること。これらに加えて、高齢者の自己負担割合を原則現役世代と同じ3割に引き上げる案も議論されているが、実現にはなお高いハードルがあると分析した。

医療費そのものの抑制策となるリフィル処方箋の推進やフォーミュラリ活用

 最後に、医療費そのものの抑制について分析。患者自己負担の増加は医療需要の減少を通じて、医療費総額の抑制にもつながると考えられるがこれに加え、供給側へ働きかける医療費抑制策も骨太の方針に明記されていると紹介。具体的には、病床削減、一枚の処方箋を繰り返し使えるリフィル処方箋の推進、経済性を考慮した医薬品の使用指針であるフォーミュラリ活用などを挙げた。もっとも、供給側の理解を得るのは容易ではなく、具体策はいまだ検討中の段階であると指摘した。

医療の必要性に応じた給付メリハリや供給側における効率的な医療サービス提供を促す改革を

 すでに決定したOTC類似薬への患者追加負担と高額療養費制度の自己負担限度額引き上げだけでは、医療保険料率を顕著に引き下げるほど大きな財政効果は見込みにくいと指摘。医療保険料抑制のための追加的な施策が不可欠であるが、患者自己負担増加に過度に依存すれば、必要な医療へのアクセスまでも損ないかねないともした。
 従って、単なる保険料から患者への負担の付け替えにとどまらず、医療の必要性に応じて給付にメリハリをつけるとともに、供給側にも効率的な医療サービス提供を促す改革が求められると提言。幅広い医療に一律に給付し、医師の裁量を広く認めてきたのがわが国の医療制度の大きな特徴であるが、これらを聖域とすることなく改革に踏み込めるかが、現役世代の負担軽減と必要な医療へのアクセス確保の両立の鍵を握るとした。

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