加藤勝信厚労相は3月10日に会見を開き、「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について」を説明した。政府の新型コロナ対策本部を同日、持ち回りで開催し決定したもの。医療提供体制、診療報酬、公費支援など広範な内容を説明した。以下、会見内容の引用。
先ほど政府の新型コロナ対策本部を持ち回りで開催し、「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について」決定いたしました。新型コロナについては1月27日の政府対策本部決定において、5類感染症に移行する5月8日以降の医療提供体制及び公費支援の具体的な内容について、3月上旬を目途にお示しすることといたしました。これまで地方自治体や医療関係団体の皆様のご意見を丁寧に伺いながら検討・調整を進めてまいりました。本日決定した主な内容についてご説明します。お手元にある「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について」が決定内容でありますが、専らスライドを使って説明したいと思います。
感染症法上の位置づけの変更に伴いまして、医療提供体制は入院措置などの行政の強い関与、限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の対応に移行するということになるわけであります。このため都道府県とも連携し、幅広い医療機関に参画を促す取組を冬の感染拡大に先立って重点的な取組を行ってまいります。また暫定的な診療報酬措置を経て、令和6年4月には診療報酬・介護報酬さらには障害者も含めてですが同時改定がございます。それを通じて新型コロナ対応を組み込んだ新たな診療報酬体系による医療提供体制に移行していくということになるわけであります。この間、感染拡大への対応や医療提供体制の状況などを検証した上で、その結果に基づき必要な見直しを行っていきたいと考えています。
スライド2でありますが、外来・入院を通じて幅広い医療機関による対応に移行していくため、感染対策については効率的な対応に見直をしていく、また設備整備や個人防護具の確保等への補助を継続してまいります。そして参画する医療機関を増加させていきたいと考えております。また医師等の応招義務については整理を行うこととし、新型コロナにり患又はその疑いのみを理由とした診療拒否は「正当な事由」に該当しない取扱いになることを明確化することとしています。さらに医療機関や地方自治体に対し、診療の手引き等を含め分かりやすい啓発資材を作成し周知を図ってまいります。またこうした取組を通じて、外来については現在全国で約4.2万の医療機関が対応していただいていますが、季節性インフルエンザについて対応しておられる最大6.4万の医療機関での対応を目指してまいりたいと思います。また国・都道府県で定期的に対応医療機関数を把握・進捗管理しながら、今申し上げた(医療機関数の)維持・増大を図ってまいります。なお少し小さい字で書いてありますが、新型コロナに対応する医療機関名等を公表する仕組みについては当面継続することとしています。
次にスライドの中段でありますが、入院については約8千2百の全病院での対応を目指すこととしております。都道府県において受入れ医療機関の拡大等を内容とする移行計画を策定し、新たな医療機関による受入れを促進することにしております。また移行計画の策定を待たずに、着手できる取組については速やかに取り組んでいただきたいと考えています。重症者・中等症Ⅱの患者については、これまでに確保病床を有していた約3千の重点医療機関等への重点化を目指すこととしております。
軽症・中等症Ⅰの患者の方については、重点医療機関等以外で受入れ経験がある医療機関、特に高齢者を中心に地域包括ケア病棟や地域一般病棟等での受入れを積極的に推進したいと考えています。併せて受入れ経験がない医療機関にも受入れを促したいと考えています。
またスライド下段でありますが、現在多くの都道府県等では行政が担っている入院調整について原則として医療機関間による調整ということになるわけであります。そのために病床の空き状況を各病院や診療所の間で共有するため、G-MISなどは活用していきたいと思っています。なお円滑な移行を図るため、当面行政による調整の枠組みは残す方向で調整しているところでございます。そして冬の感染拡大に先立ち、まずは軽症・中等症Ⅰの患者から医療機関間での調整を進め、秋以降に重症者・中等症Ⅱの患者についても医療機関間による調整に移行するということで、病床確保にかえてこうした方への対応を行った医療機関へ支援を行うこと等を検討しているところであります。
次にスライド3でありますが診療報酬の特例の見直しであります。医療機関の現場の実態を踏まえ、診療報酬上の特例措置を見直すことといたしました。まず外来については新型コロナ関連の特例措置は院内感染対策を引き続き評価することにしております。また事務負担軽減等に伴う所要の見直しを行う一方で、コロナ患者の入院調整を行った場合には新たな評価を行うこととしております。入院については重症・中等症患者等の特例措置は、人員配置の効率化が図られている実態等を踏まえ所要の措置の見直しを行うこととしております。一方で入院患者に対する介護業務の増大等を踏まえた新たな評価を行うことにしています。これらの見直しについては、先ほど持ち回りで開催された中央社会保険医療協議会において承認をいただいたところであります。
次のスライドでありますが病床確保料の見直しであります。病床確保料については会計検査院からの指摘や現場の実態を踏まえて、診療報酬の見直しに連動してこれまでも改定を行ってまいりました。今回も先ほど申し上げた診療報酬等の見直しを踏まえ当面9月までにおいて病床確保料の見直しを行うこととしております。また病床を効果的に活用する観点から、休止病床の範囲についても基本的にこれまでの2分の1にするという形での見直しを行います。この病床確保料の見直しは9月末までを目途としておりますが、その後の対応については受入れ医療機関の拡充の進捗状況等を踏まえ必要な見直しを行いたいと考えています。
次にスライド6でありますが、高齢者施設等における対応については重症化リスクが高い方が多く生活していることを踏まえ、入院が必要な高齢者が適切かつ確実に入院できる体制を確保しつつ、施設における感染対策の徹底、医療機関との連携強化、療養体制の確保等を行うこととしております。このため必要な体制を確保した上で施設内療養を行う高齢者施設への補助等の措置、これらは当面継続することにしております。
続いてスライド7でありますが、患者等の公費負担の支援であります。患者等に対する公費支援については位置づけの変更に伴い入院措置等は求められなくなるため、公費支援がなくなり一部自己負担が生じることとなりますが、この見直しにより急激な負担増を避けるため新型コロナ治療薬の費用は公的な負担を一定期間継続することにしています。また入院医療費については一定期間高額療養費の自己負担限度額から2万円を上限に減額するということにさせていただくことにしております。これらはまずは9月末まで公費支援を継続することにしております。これにより医療費の自己負担についてはインフルエンザ患者の自己負担と概ね同じかあるいはそれよりも低い水準、高額療養費の上限との絡みがあって若干前後しますが概ねインフルエンザ患者の自己負担となるものと同程度と考えております。
また戻っていただいて検査についてでありますが、検査については新型コロナの抗原定性検査キットの普及や他の疾病との公平性を踏まえ、公費支援は終了し一部自己負担が生じることになりますが、ただし重症化リスクが高い方が多い医療機関や高齢者施設等での従事者の集中的な検査等を実施する場合は引き続き行政検査として行うこととしております。これらのほか受診相談機能や高齢者や妊婦に対応するための宿泊療養施設は、期限を区切って継続することといたしました。以上が新型コロナの感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の主な見直し内容となります。
なお、スライド9は病原性が大きく異なる変異株が生じた場合の対応等について書かせていただいておりますが、基本的には対応が必要であると認められればこの新型コロナウイルス感染症の発生時と同様に新たな変異株を感染症法上の指定感染症に位置づけ、そして対策を強化していく、さらにその上で病状の程度が重篤で全国的かつ急速なまん延のおそれがあると認められる場合には厚労大臣から総理へ報告を行い、新型インフル特措法に基づく政府対策本部・都道府県対策本部を設置する等、これまでと同様の対応がとれる体制にすることにしております。それから水際措置等ですが、位置づけの変更に伴い水際措置は適用されなくなりますが、水際措置についても病原性が大きく異なる変異株が生じた場合には必要な措置を迅速に講じることといたします。また、本件に直接関連するものではありませんが、引き続き新型コロナり患後の症状いわゆる後遺症に悩む方が幅広い医療機関で診療を受けられるような取組を進めてまいります。
冒頭申し上げましたように、本日の政府対策本部決定に当たっては関係者の皆様からご意見を賜り、検討・調整を進めてきました。来週以降、都道府県等を対象とした説明会等を随時開催し、現場のご意見を伺いながらこれからさらに運用の詳細を詰めていかなくてはなりません。丁寧に対応していきたいと考えております。国と地方自治体等が一体となって、国民の皆様のご理解とご協力を得ながら円滑な移行に向けて取り組んでいきたいと考えています。なお、移行についての最終的な確認は4月の中旬以降において確認し、それで最終的な移行に入っていきたいと考えております。私の方からは以上であります。
調剤に関しては自宅・介護保険施設等への対応の評価として、訪問対面500点、電話等200点(自宅・宿泊療養患者に薬剤を届けた上での訪問対面/電話等による服薬指導の特例)は、同じ点数での評価を継続する。また、薬局におけるコロナ治療薬の交付は「服薬管理指導料」を2倍とする(+59点又は+45点)。
詳細は以下の厚労省HPより確認できる。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html