【薬局薬剤師もパルスオキシメータの正しい知識を持とう】ウィズコロナ時代に潜在力も正しく使われることが大前提

【薬局薬剤師もパルスオキシメータの正しい知識を持とう】ウィズコロナ時代に潜在力も正しく使われることが大前提

在宅療養中の新型コロナウイルス感染症患者の体調管理に有用として、一気に認知度の高まったパルスオキシメータ。コロナでは自覚症状なく急変する“サイレント肺炎”の危険性も指摘される中、体調変化を察知するために高い潜在力を持っている。しかし、その効用は正しく使われてこそだ。パルスオキシメータのパイオニアであるコニカミノルタでは、需要の高まりを受け、家庭使用の増産体制に着手するほか、正しい情報提供場所として薬局薬剤師の存在にも期待している。本項では、同社の協賛を受け、呼吸器内科医の桑平一郎氏とスギ薬局常務取締役の杉浦伸哉氏の対談を企画した。パルスオキシメータの正しい使い方のほか、薬局薬剤師が貢献できる領域について浮かび上がらせる。


【対談】東海大学医学部付属東京病院 呼吸器内科 桑平一郎氏✖️スギ薬局 常務取締役 杉浦伸哉氏

新型コロナで問題になる“サイレント肺炎”の察知にも有用

 杉浦 本日は、パルスオキシメータに関して、桑平先生に直接お聞きできるということで楽しみにまいりました。

 桑平 薬局・ドラッグストアさんにおいて、生活者の方々からのパルスオキシメータに関するお問い合わせというのは、どのような状況なのでしょうか。

 杉浦 今年の1月末ごろから2月中旬にかけて、急激にお問い合わせが増えました。テレビなどでコロナの在宅療養中に自治体からもパルスオキシメータの利用を推奨するということが報道されたのがきっかけですね。
 
 うがい薬が注目された時も大変でしたが、コロナの感染拡大以降、メディアの報道などによって、店頭の需要が急激に変化するということがあり、私たち薬局・ドラッグストアは常にさまざまな情報を精査してお客様に正確にお伝えしなくてはいけないという局面が多くなりました。
 
 当社では、医薬品情報を収集するDI室が、こうしたコロナに関連する情報の収集や整理も行っています。
 
 急増する需要に応じて衛生用品などにも粗悪品が市場に交じってしまう事例もあり、私たちも感染症拡大という初めての経験の中で、取り扱いに注意すべき点も多いと思っています。
 
 パルスオキシメータも今、まさにそのような状況にあると思っていまして、情報を精査し、お客様に正しい情報をお届けしなければいけないと感じています。
 
 桑平 そうなのですね。
 
 パルスオキシメータに関しては、コロナ拡大以前から慢性呼吸不全の患者さんなど呼吸器疾患を持つ患者さんで使われてきました。新型コロナにおいては、肺炎症状の重篤化の指標となる動脈血酸素飽和度の低下があり、これを非侵襲性で迅速に測定できるパルスオキシメータは有効なツールになります。パルスオキシメータで測定した酸素飽和度をSpO2と表現します。
 
 特にコロナでは息切れなどの自覚症状がないのに、CTなどを撮ると肺炎が進行している“サイレント肺炎”も問題になっていますので、客観的に指標を測ることができるパルスオキシメータの価値は大きいと思います。
 
 杉浦 コロナ収束の先行きが依然不透明な中ですが、例えばコロナだと診断されても症状が軽い場合は自宅療養などになる場合が多いわけですよね。
 
 桑平 そうですね。
 
 杉浦 そういった時にパルスオキシメータで血中酸素飽和度を測っておけば、サイレント肺炎などの状況になっても、いち早く変化が察知できるわけですね。
 
 桑平 そうです。朝・晩の2回を測っておいて、普段の数値よりも低い数値が出た場合には、もっとこまめに測ってみる。そして、どうも数値が低いままとなれば、呼吸器内科を受診していただければCTなどによって入院の必要性などを判断できると思います。
 
 こうした役割を考えても、パルスオキシメータが正しく理解され、正しく測られることは極めて重要です。例えば、日本呼吸器学会では「よくわかるパルスオキシメータ」という冊子をつくり啓発に努めていますので、こういった冊子を薬局の店頭などでもお渡しいただくことは、薬局の方々にもできることかと思います。
 
 また、最近、危惧されているのが粗悪品の流通です。パルスオキシメータは薬機法上、管理医療機器に分類されているのですが、ネットで流通している商品の中には薬機未取得の商品もあるようです。またパルスオキシメータは特定保守管理医療機器に分類され、販売に関しては都道府県の許可が必要になります。こうしたことが守られずに販売されているものを個人が利用することは重大な事態につながりかねません。
 
 最も重要な点として医師の管理の下で使われるものだということです。
 
 杉浦 当社は訪問診療の先生方と連携して在宅医療にも携わらせていただいています。先生方と薬局が患者さんの情報に関してしっかり連携していくことが重要ですね。
 
 桑平 呼吸器疾患の患者さんにおいても、お薬の吸入の指導などを薬局薬剤師さんに役割分担していただいていることなどもありますから、そういった連携は大切ですね。

機器によって「測りづらい時の正確性」や「耐久性」に違い

 杉浦 われわれとしても粗悪品が流通しないように対応していく必要がありますし、コニカミノルタさんが増産体制に着手されているとおうかがいしましたので、安全で信頼性の高い機器を取り扱えるようになることに期待したいと思っています。
 
 粗悪品は論外ですが、パルスオキシメータは価格にも差があるようですが、先生は価格と性能の相関についてはどのようにお考えですか。
 
 桑平 相関があると考えています。パルスオキシメータは光を使って測定しており、測定時に発生するノイズ信号をいかに効果的に処理できるかによって測定性能に違いが出ます。
 
 一定の価格以上の性能の良い機種の場合、困難な測定状況でも正確に測定ができるという工夫がなされています。安価すぎる機種ですと、寒い時に測れなくなる、酸素飽和度が低下しているときに本来の値とはかけ離れた値を表示するといったことが多くなります。価格は機器の耐久面にも違いが出ると思っています。測定性能がしっかり明示されている機器ですと安心できると思います。
 
 杉浦 パルスオキシメータはコロナだけでなく、睡眠時無呼吸症候群などの発見にも有用とお聞きしました。
 
 桑平 はい。睡眠中に記録できるタイプのパルスオキシメータは睡眠時無呼吸症候群の簡易検査としても有用です。
 
 杉浦 睡眠をとっているつもりなのに、日中強い眠気を引き起こしたり、だるさを感じる方などに、薬局から測定を促してみて、数値に疑問があるようでしたら呼吸器内科の先生の受診をおすすめするといった使い方もできるのではないかと感じました。
 
 当社はデジタルトランスフォーメーション(DX)を事業戦略の一つとして置いているのですが、店頭でのカウンセリングにプラスして、こうした機器による客観的なデータもお客さま、患者さまと共有させていただき、先生がたと連携していくことも考えたいと思いました。
 
 当社はDXのゴールをデジタル完結とは思っておらず、リアル、対面の時のコミュニケーションをよりよいものにするためにDXを推進しています。
 
 桑平 そうですよね。「手当て」というように、手で触れ合うことをもってして癒されたりするのが診療の基本だと私は思っています。
 
 コロナでいえば、さまざまな後遺症が出現することもだんだんわかってきていて、頭痛やだるさに悩まされる患者さんがいらっしゃる。そういった相談が薬局の店頭でされた時にも、パルスオキシメータで測ってみることをお勧めして、数値に問題がないようであれば、呼吸の問題という一つの心配がなくなる。そういった安心を提供するのも患者さんを心理面で支えることにとてもつながると思いますよ。
 
 杉浦 おっしゃる通りですね。薬局として正しい情報のご提供と同時に、コロナ禍で不安を抱えていらっしゃる地域の方々の支えに少しでもなれればと思っています。 
 
 今後ともご指導ください。今日はありがとうございました。
 
 桑平 ありがとうございました。

東海大学医学部付属東京病院 呼吸器内科 桑平一郎氏

くわひら・いちろう●東海大学医学部内科学系呼吸器内科学に所属、助手、講師、助教授を経て 2005 年より教授、2020 年より特任教授。この間、ドイツのマックスプランク実験医学研究所フェローおよび米国カンサス大学メディカルセンター訪問研究員として留学を経験。2002年度より2010 年度まで、東海大学医学部付属東京病院の副院長および病院長を歴任。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、肺炎、呼吸不全、睡眠時無呼吸、肺癌など広く呼吸器疾患の診療に携わる。主たる基礎研究領域は低酸素環境への順応と適応に関する機序の解明。東海大学総長賞、ニューモフォーラム賞など受賞。代表的訳著書として、ウエスト呼吸生理学入門がある。

スギ薬局 常務取締役 杉浦伸哉氏

すぎうら・しんや●2002年11月佐藤製薬入社。2004年4月スギ薬局入社。2010年3月スギ薬局取締役在宅医療営業部長。2010年5月スギ薬局取締役医療事業本部長。2011年3月スギメディカル取締役(現任)。 2016年3月スギ薬局取締役ウェルネス事業部長。2017年3月スギ薬局常務取締役営業本部本部長。2017年5月スギホールディングス取締役(現任)。2019年3月スギ薬局常務取締役事業本部 本部長(現任)。公益財団法人杉浦記念財団副理事長

■コニカミノルタのパルスオキシメータ「PULSOX-Lite(パルソックスライト)」

 コニカミノルタは2021年3月30日に、セキアオイテクノ株式会社との協業合意により、パルスオキシメータを新たに20倍の生産能力を確保することをリリースしている。
 新型コロナウイルス感染症の重症化判定にも活用されるなど、多くの人がその有用性を認識することになったと同時に、今後は使用が拡大することも想定される。
 こうした中、同社では一般の人にも安心して使用してもらえるよう、生産体制だけでなく、流通経路の確保・販売体制に関しても多角的な検討を進める考えだ。販売実務を支援するガイドライン策定も視野に入れている。

■「パルスオキシメータ 実務オンラインセミナー」開催のお知らせ

 6月11日(金)19:30~20:30まで、ドラビズon-lineとコニカミノルタ共催で「パルスオキシメータ 実務オンラインセミナー」を開催いたします。店頭で知っておきたい情報を実務まで、詳しく解説。コニカミノルタ学術部の方に直接質問することができます。
<主な内容>
・パルスオキシメータの構造
・パルスオキシメータの分類(取り扱い時に必要なこと)
・測定時に気を付けること
・コロナとパルスオキシメータ
・粗悪品の現状
・コニカミノルタ社監修の販売ガイダンスについて
ーーなど。
<対象>
主に薬局・ドラッグストア薬剤師、関係者
<参加費>無料
お申し込みは下記URLまで。
URL: https://pulse1.peatix.com/